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今日は久しぶりにセナがエルザをお茶に誘った。
当然のようにマリアもついてきたらしいが残念だな俺とミラは不参加だ。
前回を思い出したミラがエルザを受け入れられるワケがないだろう?
あんな小屋に押し込め、母親の暴力を笑って見ていたというエルザ。
だが、エルザもまたミラに手を出していた。
それも体当たりをしたり、足を引っ掛けて転ばすのは日常茶飯事。階段から突き落としたのも一度や二度では無い。
エルザにしてみれば軽い嫌がらせのつもりだったのかも知れないが十分犯罪行為だ。
そのままでも殺人未遂だが本人にそれが人の命を奪う行為だという自覚はなかったのだろう。
さすがミラにストレス発散する為に暴力を振るう母親を持った娘だ。
ミラに与えられた簡素な食事すら取り上げるようなクズがエルザ母娘だ。
今は前回と違うとミラも分かってはいるんだ。
だが、10年以上も虐げられたミラにしたらエルザに対する恨みを消せる事は簡単ではないだろう。
・・・その分、俺たちが復讐したがその事はミラには話していない。
俺たちの残虐さを知られたくない。
ミラは俺たちに大切に愛され、慈しまれ守られて幸せになればいいんだ。
ミラが寝たのを確認してから父上の執務室にいつものメンバーが集まった。
自然とここが俺たちの情報交換と作戦の場になっていた。
「それで今日のマリアはどうだった?」
「あ~デューク君が来ないと知るなり不機嫌さを隠しもしなかったよ~」
だからどうした?
「エルザにオズワルド殿下を誘わせたようなんだけどね~断られたらしいよ~」
だろうな。
オズワルドには俺から連絡を入れるまでは学院では動かないようにと伝えている。
それでもマリアが能力を使ってきた時には、その都度内容を教えてくれる事になっている。
それまではオズワルドには別でカイルの動きを監視してもらっているからな。
「オズワルド殿下を使って何かをさせたいのでしょうね~」
「そんなの考えなくても分かるわよ。オズワルドに命令させてデュークと2人きりになり、デュークに囁くのよ『わたくしだけを愛しなさい』と・・・。それかデュークを手に入れる為に『ミラを排除しなさい』とかね」
「はあ?アイツは馬鹿なのか?・・・ああ馬鹿だったわ」
「デュークはリリアンに似て美男子だからな。モテて当たり前だが・・・浮気はするなよ?」
「当然だ!」
父上は何を言っているんだ!
俺がミラを裏切るわけないじゃないか!
「まあまあ、デューク様落ち着いて下さい。そんな事よりもこの間処罰された令嬢ですが、やはり直前にマリアと接触があったことが分かりました。ただ、本人にはマリアに唆された自覚はないそうです」
「ねえ、それって操られていても本人の意思だと錯覚しちゃうってこと~?」
「そうだ。だから証拠にするには弱すぎる」
「それはちょっと厄介ね」
「だから、オズワルドに能力を使用するのを待っているんだ。使われたら俺たち魔力の多い者は気付く。能力の悪用は犯罪になるからそこで捕らえるんだ」
「それじゃあ罪としては弱くない~?二度とあの子の顔を拝まなくていいような罪で裁けないの~?」
「ああ、そこは心配するな。もし、王族に能力で命令したら?・・・王族を意のままに操ろうとするんだぞ?・・・それはもう不敬罪どころでは済まないだろ?」
そう、国家転覆とか王家乗っ取りを疑われる。
その罪は重い。
前回は俺たちの手でマリアを処分したが、今回は法で裁くつもりだ。
アイツも記憶があれば、あれだけの恐怖を与えた俺に好意を寄せることはなかったのにな。
それに、ミラに敵意や悪意を向けなかっただろうに・・・
あの性格じゃあ結局は同じ道を選んだかもしれないがな。
このままだとアイツはまた命を奪われることになる。
その日は意外と早く訪れた。




