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~セナ視点~
「あら?デューク様は遅れて来られるのですか?」
「ん~デューク君はミラちゃんと先に帰ったわよ~」
マリアの魂胆が見え見え過ぎてムカつくけど面白いわね。
デューク君を狙っているのは随分前から分かっていたけれど、婚約者のいる相手に懸想してもね~
ま、今は伯爵令嬢を名乗っていても元は平民だもんね。
貴族の常識は知らないか。
何でかミラちゃんを敵認定しているようだけれど、前回は罪の無いミラちゃんを悪役令嬢に仕立て死に追いやったらしいじゃない?
その後きっちり復讐されたらしいけど、私はたとえ前回の出来事だろうと許してないからね?
ミラちゃんの事は、彼女がよちよち歩きの頃から知っている。
私は物心ついた時には組織で暗殺者として育てられていた。
そして9歳の時に旦那様の暗殺を失敗し捕まった。
そのまま処分されるかと思いきや、公爵家の騎士団に強引に入隊させられた。
組織にいた時には食事も睡眠もろくに与えてもらえない環境から、ここは天国のような場所だった。
私が小さいのは組織での環境のせいだと今も恨んでいる。
公爵家から逃げ出さなかったのは行く場所がなかったから。
戻ったところで任務に失敗した私が生かしてもらえるとは思えなかったのが大きい。
命を救ってくれたにも関わらず、すぐには旦那様のことも当時の団長のことも信じられず、環境はともかく居心地がいいとは言えない場所で・・・無愛想でちょっとした事でキレて暴れる私を、まだ少年だったローガンが面倒を見てくれた。
たまたま公爵家が番犬に飼っている獰猛な犬が何故か私に懐いた。
体も大きくて顔も・・・恐ろしい。
その番犬たちに匂いを覚えさせる為にライラ様に抱かれたミラちゃんと会ったのが初対面だった。
ライラ様の腕の中でミラちゃんは暴れ出し、降ろしてもらうとヨタヨタと覚束ない足取りで突然番犬に抱きついたのには驚いた。
不審者には容赦はしないが、紹介された人物に牙を剥くことは無い賢い犬だが危険には変わりなく・・・
そんな番犬が大人しくミラちゃんにされるがままというより、しっぽを振って喜んでいた。
一度、デューク君とミラちゃんが行方不明騒ぎとなった時は、遊び疲れて眠る2人を我が子を守るかのように5匹が囲んでいた事もあったな。
それ以来、現在に至るまで代替わりしようが公爵家の番犬はどの子もミラちゃんが大好きだ。
それに、その頃から私を姉のように慕ってくれるミラちゃんは私にとっても特別で大切な存在だ。
・・・それは置いといて、ティタニア公爵家の皆さんは本当に優しいよね~。
マリアを泳がさなくてもさっさと命を刈り取っちゃえばいいのにさ~。
なんなら私が殺るよ?
多分、あの子の思考は普通じゃない。
デューク君を手に入れる為ならなんだってする執着を感じる。
前回はオズワルド殿下の友人と親しくなっていたようだけれど、デューク君が同じ学院に通っていたら、狙う相手はデューク君だったと思う。
ま、デューク君がいたらミラちゃんが孤独になることも、嘲笑われることも、蔑まれることもなかったはずだけど、ミラちゃんの側にデューク君がいたら結局、マリアはミラちゃんを陥れる行動をしていたとも思う。
だいたい女神レベルのミラちゃんはともかく、その辺の令嬢と比べても地味で目立たない普通レベルなのに、すごく自分に自信があるんだよね~
何でだろ?鏡見たことないのかな~?不思議だよね~
最近はオズワルド殿下に能力を使っているらしいけれど、魔力が多い王族にマリアの少ない魔力で思い通りに動かそうとしたって無理だから!
オズワルド殿下とデューク君が繋がっているとも知らずどんどん墓穴を掘っているのに気付きもしない。
ほんと、マリアも馬鹿だよね~
あと3ヶ月程で、前回のミラちゃんが命を落とした日が来る。
敵はマリアだけじゃない。
たとえ相手が王族だとしても、ミラちゃんは#私たちが守ってみせる。
ミラちゃんの幸せはデューク君・・・だけでなくティタニア公爵家にあるのだから。




