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「そう・・・」
「そんな顔するなミラ。アイツらは自業自得なんだ」
「そうよ。あの子達は人として最低の事をしたの」
「この結果は相手がミラじゃなくても同じ処罰になっていたはずだ。これは議会で決まった事なんだよ。だから気にするな」
優しいミラはあんな事をされたのに心を痛めていたが、俺たちの言葉に納得したかと思えば控え目で大人しいミラから出た言葉は・・・
「前回の私は孤独で、全てのことを諦め、感情を殺し、息をしているだけで、暴力からも悪意からも逃げて生きていたの。
毎日を俯いてされるがままに生きていたから、義母以外に誰に嫌がらせや暴力を受けたのかも気にしなかった。私の味方は一人もいなかったから・・・
でも今は違う。私には大切な人が周りに沢山いるわ。私を見てくれる、私と話してくれる、私を心配してくれる、そして私を愛してくれる。それがとても幸せなの」
ミラはそこまで言って俺たちの顔を一人ずつ愛しい者を見るような眼差しをくれた。
「だからね、守られるだけなのは嫌なの。私も大切な人たちを守りたい。もう悪意なんかに負けない。泣き寝入りもしない。やられたらやり返すわ。ずっとこのティタニア公爵家で愛する人たちと生きていきたい。・・・それが私の幸せ」
ミラは照れくさそうに微笑んで、隣にいる俺にギュッと抱きついてきた。
え?え?や、柔らかい。
いっきに俺の心臓がバクバクとうるさくなった。
ヤバい、ヤバい、ヤバい!
体も熱くなってきた。
だ、抱きしめ返していいよな?
そうだよ!
ミラが抱きついてきたんだ。遠慮はいらないよな?
そっと腕を伸ばすと・・・
だから!お前ら俺に殺気を向けるなよ!
「お義母様もミラを抱きしめたいわ」
邪魔をするなよ!
「はい!」
あっさりとミラの腕は俺から離れて母上のところに行った。
ミラ・・・・・・もう終わりなのか?
「ミラ、次はお義父様だよ」
「はい!」
「次は私だよ~」
「その次は俺だな」
おい!セナとローガンまで!厚かましいな!
ほのぼのとした雰囲気はそのままで俺たちは休日を過ごした。
・・・それにしても、本当に柔らかかった。
ミラが柔らかいのか、それとも世の女性すべてが柔らかいのか俺には分からないが・・・
アレはミラの胸だよな?
幼い頃には感じなかった感触だった。
俺・・・あの感触を思い浮かべるだけで色々我慢できる気がする。
ありがとうミラ!
そして週明け、俺たち3人は普通に登校した。
校舎に入る手前の掲示板の前には人集りができている。
俺たちが来たことに気付いた生徒たちが目を逸らしてそそくさと去って行く。
ふんっ!後ろめたい奴ほどビクビクしてやがる。
「また見てるわね」
ん?セナの視線の先にはマリア・・・
見た目だけなら普通の地味な女なんだが・・・
昨日、ミラにもマリアの能力を教えた。
万能でない中途半端な能力のことを。
前回を思い出したミラは、マリアのことは"エルザの後ろでニヤニヤ笑っているだけ"の人としか認識していなかった。
俺にしてみたら、不気味で気持ち悪い女だ。
あの目・・・俺を見るあの目が気に入らない。
まるで能力さえ使えれば俺を手に入れれると思っているかのようだ。
馬鹿が!
「デューク行きましょう。彼女が何をしてこようとデュークは渡さない。・・・デュークは私のものよ。ね?」
そうだとも!
俺はミラ以外の女に1ミリも興味がない。
「ああ、俺の全てはミラのものだ」
「2人とも朝からイチャイチャしないの~さっさと行くわよ~」
はいはい行きますよって。
!!
ははっ、ミラがマリアに当て付けるような顔を向けながら俺の手に指を絡めてきた。
途端に醜く顔を歪めると、今度はミラを睨んできた。
記憶を思い出してからミラは俺に対する独占欲を現し始めた。
この変化は孤独だった前回が関係しているのだろうが、俺は素直に嬉しかったりする。
人見知りの激しいミラは家族以外にはなかなか心を開けない。
挨拶程度は交わすが、同世代の同性の友人はいない。
それも仕方のないことだろう。
前回、この学院にいる令嬢でミラを気遣う者は一人もいなかった。
俺は『おはよう』『さようなら』その挨拶すらしなかった令嬢たちと親しくする必要もないと思っている。
俺たちが教室に入ると微妙な雰囲気なのは掲示板を見たからだろう。
すぐに目を逸らす者、顔色を悪くする者・・・今回の件に関係なくとも、陰でミラを嘲笑っていた者たちだろう。
お前たちの横にいる友達は本当に信用出来るのか?
周りは足の引っ張り合いが大好きな貴族だ。
これからの言動には気をつけろよ?
じゃないとお前たちも・・・




