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暴力的な描写が苦手な方は読み飛ばして下さい。
待ち合わせのカフェの手前にある噴水広場に人集りができている。
『キャー』と女たちの悲鳴も聞こえる。
『もっとやれ!』と煽る男たちの声も聞こえる。
嫌な予感がする。
心臓がドクドクと早鐘を打つ。
「ミラちゃん!アンタたち手を、手を離しなさい!やめなさい!ミラちゃん!」
セナの悲鳴のような叫び声が聞こえた。
只事ではない!ミラ!
人混みを掻き分けて現れたのは、血を流して男子生徒たちに地面に押さえ付けられているセナと、セナの周りに倒れた何人もの男子生徒。
「セナ!」
俺の登場にセナを押さえつけていた、男子生徒たちは慌てて手を離したが、すぐに起き上がったセナに容赦なく意識を刈り取られた・・・
「私はいいからミラちゃんを!」
叫ぶセナの視線の先には2人の男子生徒に頭を押さえられて水に顔を沈められた・・・ミラ。
今思い返してみれば、頭に血が上るってことはああ言う事だったと分かる。
たぶん生きてきた中で一番のスピードだったと思う。2人同時に蹴り飛ばし、ミラを抱えあげると咳をしながらも「だ、大丈夫だよ、そ、それよりセ、セナさんが」と・・・ミラは自分の事よりもセナを優先しようとしている。
俺の上着を頭から被らせる。
「セナは大丈夫だ、怪我は?痛いところはないか?」
「デューク様申し訳ございません」
セナが頭を下げていた。
倒れている人数を見ればセナだけでよく耐えたと褒めるべきだろう。
それにミラの状態を見る限り大きな怪我はなさそうだ。
「セナ、ミラを任せた。あとは俺がやる。ここに居る者の名前は分かるな?」
「はい、野次馬を含めすべて」
これだけの人数がいて、誰も助けようとしなかったんだな。
ああ、お前たちはまた同じことを繰り返したんだな・・・
結局、二度目でも・・・ミラの立場が変わっても、お前たちの性根は変わらないんだな。
「なあ、教えてくれ・・・ミラとセナが何をした?」
俺が来るまであれ程騒いでいたクセに、誰も答えようとしない。
「ミラとセナに手を出さなかった奴も同罪だ。お前ら誰に手を出したのか分かっているのか?こんなところで権力は使いたくないが・・・お前ら全員いつまでも貴族でいられると思うなよ?」
俺の言葉にすぐに反応した奴らは顔を真っ青にした者、膝から崩れ落ちた者、泣き崩れる者がいた。
が、何を言っているのか意味を理解出来ていない奴らは・・・
ま、終わったな。
「おい!何があった!」
ローガンか・・・遅いわ!
「あとは任せる。俺はミラとセナを連れて帰って手当てする」
「私はいい。残ってローガンに説明するよ。原因と・・・この場にいる全員の名前と報告をしないとね」
「ダメよ!セナさん!先に手当てを受けて!」
「ちゃんと手当てはするから安心して、もう帰りなさい」
「そうそう。私、背は小さいけど丈夫に出来ているから気にしないで先に帰って待っててよね~」
普段と同じ調子に戻ったセナに安心したのか必ず治療は受けることを約束したら納得してくれた。
!!!
馬車に乗り込んだところでミラに抱きつかれた。
突然のことに声も出ない。
どうしたらいいんだ?
俺も抱きしめ返していいのか?
いいよな?
「怖かった・・・デューク、助けに来てくれてありがとう」
そうだよな。
自分よりも大きくて力のある男二人に頭を押さえつけられて怖かったよな?苦しかったよな?
「遅くなってごめんな。アイツらとは二度と会わないだろうが、もうミラの側から離れないから安心しろ」
大丈夫、大丈夫、震えているミラを安心させるように抱きしめて背中をぽんぽんと軽く叩く。
詳しい経緯はセナとローガンが帰ってきてから聞けばいいだろう。
邸に着く頃にはミラから寝息が聞こえてきた。
迎えた執事も使用人たちも、俺がミラを抱き上げて歩いているのを見るなり凄い目で睨んできた。
お前ら酷いな・・・俺、次期公爵家当主だぞ?
それでもミラの状態を見て、バタバタと慌ただしくなった。
まあ、ミラが寝ているのを見て執事のバンドサインで動くうちの使用人たちって凄い!
と、こんな時なのに感心してしまった。
すぐに父上と母上にも報告が行くだろう。




