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結局、カイルの用件はミラの安全確認のためだったようで、その後は俺たちが覚えていない幼い頃のことを懐かしむように話してくれた。
俺よりも6歳年上のカイルは当時を思い出せば、年齢よりも随分大人びていたように思う。
背も高く、優しく、賢く、強く、逞しくとても頼りがいがあった。
物心ついた時には、カイルはミラを特別可愛がっていたと記憶している。
そういえば前回もミラが王宮に来ていたのはライラ叔母上が亡くなる前までだったな。
学院に入るまではボイル侯爵家で厳しい教育を受けていたが、入学してから王子妃教育のために王宮に通っていたらしい・・・
その時もオズワルドと会話するどころか、会うこともなかったと聞いた。
だがカイルは?
あれほどミラを可愛がっていたんだ、声を掛けないはずはなかっただろう。
だとしたら・・・ミラの置かれている状況に気付いていたのではないのか?
気付いていたとしたら何故手を差し伸べてやらなかった?
・・・疑いだしたらキリがない。
だが、俺は知っている。
上品な笑顔の下に卑怯で残酷な本性を隠している人間を何人も処分したのだから・・・
考え過ぎならいい。
ただ、少しの違和感を確かにカイルに感じた。
やはりオズワルドと話してみた方がいい様な気がする。
前回、俺たちは復讐をやり遂げたと思っていたが、何か見落としがあったかもしれない・・・
俺がそんな事を思っていた時、オズワルドに夢ではなく前回の記憶が甦りつつある事を、この時の俺は知らなかった。
~前回のオズワルド殿下視点~
嘘だ!嘘だ!嘘だ!
いつからだ?
いつから計画していたんだ?
尊敬していたのに・・・
ミラを兄上の手の届かない所に逃がさなきゃダメだ。
時間がなかった・・・
だからキツく当たった。
私の有責で婚約破棄出来るように、エルザを隣に置いていたんだ。
国外追放までは上手くいったんだ。
馬車には私が頼んだ騎士を付けていたのに、隣国の知り合いにミラの世話も頼んでいたのに、まさかその騎士がマリアに唆されて金で雇った破落戸と代わっていたなんて・・・
隣国でミラが幸せになる事を願っていたのに。
ごめん、ごめん、ミラ・・・本当にごめん。
私はミラを傷つけるやり方しか思いつかなかったんだ。
辛い思いをさせてごめん。
あの家から助け出せなくてごめん。
もっと違うやり方もあったはずなのに・・・
結局ミラを死なせることになるなんて・・・
私のやってきた事は無駄だったんだ。
言い訳はしない。
父上は私のミラへの仕打ちを怒っていた。
兄上はあと一年で手に入れるはずだったミラを永遠に失って憤怒の形相で私を罵倒した。
兄上は私の婚約者ミラが、卒業するのを待っていたんだ。
その後は攫って閉じ込める部屋まで用意していた。
まるで王妃の部屋のように豪奢で煌びやかな部屋を、兄上の自室の隠し部屋に防音された檻付で・・・
ミラは私の一番大切な女の子だった。
舌っ足らずなところも、ぷくぷくした頬も手も、いつも大きな口を開けて笑っているところも大好きだったんだ。
ただ、ミラが好きなのは私ではないデュークだった。
私のことは兄としか見られていなかった。
王宮にライラ様に連れられて遊びに来ても、デュークとばかり遊んでいた。
兄上にも懐いていたな。
兄上はすぐにミラを抱き上げて『可愛い可愛い』と連呼していた。
頬擦りしたり、ぷくぷくの頬にキスしたり、7歳年下のミラを本当に可愛がっていた。
それが、まさか異性として見ていたなんて・・・
大人になるのを待っていたなんて・・・
もう私は何も言わない、何もしない。
ミラを失った今、守りきれなかった私は生きる価値もない。
だからデューク、早く私を殺してくれ・・・
ああ・・そうだった・・・思い出したよ。
デューク、一番危険なのは兄上だ・・・
兄上はミラが家で虐待されている事も、学院で嘲笑われ、虐げられ、侮辱されている事も、孤独だという事も知っていたんだ・・・
前回の私も誰にも相談出来なかったから、間違った方法を取ってしまったんだ。
今度は間違えない。
誰になら相談出来る?
父上か?母上は・・・無理だろうな?
デュークなら?
私の話を信じてくれるだろうか・・・




