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あれから一週間が経つ。
セナの教育から学んだのか、エルザはオズワルドから距離を置くようになった。それが面白くないのか、エルザの耳元でマリアが何か囁くのを見かけた。
間違いなく能力を使っているのだろう。
だがマリアの弱い能力では、セナへの恐怖の方が勝っているのかエルザには効いてないようだ。
それと、今までは陰からこちらの様子を伺っていたのが、最近は目の前をウロウロする様になってきて、はっきり言って目障りだ。
「エルザちゃん!今日時間ある?放課後あのカフェでお茶しない~?」
「ええ!是非!」
なぜお前が返事をする?
お前には聞いてないんだよ!
「・・・はい」
俺たちの顔を伺いながら返事をするエルザ。
こうなるとエルザの方が賢く見えるな。
「じゃあ、俺たちは先に帰るな」
「え?」
「セナとお茶がしたかったんですよね?念願が叶ってよかったですね」
ミラは微笑んでそう言ったが、マリアはそうではなかったようだ。
「違います!わたくしがお茶を「じゃあな」」
最後まで言わすか!
ほら、その目だ・・・恨みがましくミラを睨むその目が気に食わない。
「もうあの子とお茶するの嫌だ~」
セナとエルザのお茶にマリアが加わって二度目でセナから白旗が上がった。
理由を聞けば気分が悪くなった・・・
『ねえセナさんお願いがあるの』
『ん~?何かな~?』
『デューク様にはミラさんよりも、わたくしの方がお似合いだと思いませんか?』
『え~なんで~?2人はラブラブの婚約者同士だよ~。誰も割り込めない絆が2人にはあるんだよ~』
『ふふふっそんなの関係ないわ、わたくしと彼を2人きりにさせて?それだけで彼は必ずわたくしの虜になるのよ。楽しみだわ』
あとは馬鹿らしくて聞き流して適当な返事だけをしていたそうだ。
それをマリアは能力が効いたと思ったらしい。
『じゃあ明日の放課後よ。忘れないでね』
「だってさ~」
鳥肌が立ったわ!
その自信はなんなんだよ!
「私にあの子の能力を使ってきたんだよ!」
その場で地団駄を踏むセナは本当に子供にしか見えない。
「ふ~ん。やっぱりアイツは俺に能力を使うつもりなんだ」
「あんな弱っちい力なんて効くかって~の!」
セナは一回り以上年下の女に命令されてご立腹だ。
「こんにちは。うわ~嬉しいです!やっとデューク様とご一緒出来るなんて!」
おいおいミラは無視かよ。
「ミラちゃんには挨拶もしないの~?」
「・・・ミラさん、こんにちは」
「こんにちは、フィガロ嬢」
丸いテーブルでミラとセナに挟まれてガードはされているが、なんせマリアの俺を見る目が気持ち悪い。
コイツめちゃくちゃガン見してくる・・・
それに俺に質問ばかりしてくる。
が、俺は聞こえていない振りでお菓子を食べさせ合いミラとイチャイチャ。
セナはエルザを揶揄って遊んでいる。
今のマリアは独り言を言っているようなものだ。
一度目は会話をすることなく終わった。
あとで聞いた話ではミラに憎悪の目を向けていたそうだ。
そうだろうな。
俺と2人っきりになれると思っていただろうからな。
セナが思っていた動きをしなかったからか、お茶の終わりに『あの子、今日も私に『早く彼と2人っきりにさせなさい』とまた命令したのよ!ムカつくわ~』と再度セナを怒らせていた。
そして二度目のお茶はそれから時間を開けてひと月後に行った。
この時も同じ定位置でお茶をした。
また今回もマリアだけが独り言をいって終わった。
最後には怒りからか真っ赤な顔でセナを睨んでいた。
まあ、セナはガン無視だったがな。
もう、我慢が出来なかったのだろう。
手紙の件からミラをよく思っていなかった令嬢達を使いだした。
それはどんどんと広がり、女子生徒だけでなく男子生徒にまで広がっていった・・・
今やセナも俺も同じ視線を向けられている。
今回はオズワルドとエルザは加わっていないが、前回はミラ一人がこの悪意に晒されていたのか・・・
また、お前たちは同じことを繰り返すのか?
そんな時だ、俺とミラは第一王子のカイルから王宮に呼び出されたのは・・・




