表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

命の灯火

作者: 閒中
掲載日:2025/10/18

誕生日に現れた昨日までの自分。

ケーキに灯るローソクの火を吹き消す。

私はこれが苦手だ。


昔、何処かのお寺で見た沢山の蝋燭。

蝋燭の灯りは人間の寿命を表していて、蝋燭が短くなるとその人ももうすぐ寿命が尽きるという。


その光景が目に焼き付いて離れない私にとって、目の前で自分の為に灯されたローソクの火を自分で吹き消す、というのは自殺行為に近い。


用意されたバースデーケーキのローソクの灯りをじっと見ていると、目の前に私が手を振りながら現れた。


「どうも、昨日迄の私です。」


突然の事に呆気に取られる私に、昨日迄の私は続ける。

「このローソクは昨日迄の私にさようならをする為に消すんだよ。

貴女の命はまだ消えない。だから悲しまないで。」


にこやかに話す昨日迄の私に私は聞いた。

「良い一年、だった?」

昨日迄の私は少し考えた後に言った。

「そんなに良くなかったかな。」

わお。まじか。

「──でも最悪でもなかったよ。」


それならまぁ、良かったかなと思い、私は昨日迄の私に「一年間ご苦労様。」と労いの言葉をかけた。

そして二人で一緒に「せーの」と声を合わせて、柔らかな命の色のローソクの火をそっと吹き消した。


目の前にはもう誰もいなかった。


さて、刻まれる年齢が一つ増えた私は今日から何をしよう。どう生きよう。

何があったとしても、また来年の私に向かって「悪くなかったよ。」と言えますように。



〈終〉

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ