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98.上級会議の招集を

 かつてのアディソン王国を領地として吸収したため、国境線が変更された。アディソン領にある小さな山城を、国境の砦として使用する。フォルト兄様からの報告書に、エック兄様が承認を出した。過去の国境であった砦は、ガブリエラ様とお父様が管轄する。


 宣戦布告があったことは、即日、公告した。突然のきな臭い話に怯えるより、憤る民のほうが多かったのは意外だわ。軍神と呼ばれるフォルト兄様の影響が大きいかもしれない。負けるはずがない。その信頼に加え、お父様の代から自国本位な戦いをしていないから。


 我が国が一方的に攻め込む姿を、国民は見たことがない。相手国からの通知だったことも手伝い、喧嘩を売られたと判断した人が多かった。加えて、他国との小競り合いで、圧倒的な強さを示してきたフォルト兄様がいる。負けるはずがないと確信しているようだった。


「ある意味、とても重い信頼だわ」


 絶対に裏切れないし、負けられない。もちろん負ける要素はないけれど、自国民をあまり巻き込みたくなかった。どうしたって犠牲が出れば、怒りや不満が生まれるもの。


「まずは封鎖からです」


 国境の封鎖を指示したエック兄様は、赤で国境線の変更を記した地図を広げた。クラウスが小さな村や集落の情報を追記していく。全体を見通す私達と違う視点は助かる。ルヴィ兄様が臣下に集めさせた物資の情報も足された。


 戦が始まれば、真っ先に心配するのは食糧と武器よ。補給が滞れば、どんなに強い部隊でも壊滅する。攻め込んだ先で奪う手もあるけれど、いずれ自国となる土地で略奪をすれば遺恨が残るでしょう。ピクニックのように、自分で持っていき回収して帰って来るのが理想だった。


「情報は出揃いました。上級会議を招集しましょう」


 宰相であるエック兄様の権限で、高位貴族や階級の高い軍人を集めた会議を開く。大商会も呼ばれるが、彼らは物流のプロだった。安全に大量の補給物資を運ぶために、協力要請する。もちろん無償で搾り取るような真似はしない。


 神殿からも協力が得られる。人の戦いに神々は関与しないけれど、傷ついた民の救済は神殿の役目の一つだ。他国が侵略してくるとなれば、中立であっても神殿自体を守らなくてはならない。侵略者が必ず神々を敬うとは限らないのだから。そのための神殿騎士だった。


 緊急事態であるため、会議は代理人が認められる。ある商会の代表は他国におり、帝国内の支店長を代理人に指名した。他の商会は今のところ商会主の参加が見込めるでしょう。神殿は叔父様と神官長が一人ね。もう一人の大神官は、各神殿の備蓄の確認で忙しいみたい。


 上級会議が開かれることを予測した貴族も動き始め、続々と首都へ集まっていた。動かないのは、他国と領地を接する辺境伯家や公爵家ぐらいね。


 地位が高く兵力を持つ公爵家は、国境沿いに領地を与えてきた。続く侯爵家、辺境伯家も同じよ。地位と財産を持つ者は、相応の義務を負うのが帝国の流儀だった。中央の首都は皇帝の直轄地であり、周辺に子爵家や男爵家が並ぶ。地方と中央の橋渡しとなる街道を管理するのが、伯爵家の役割だ。


 ラウエンシュタイン大公である宰相のエック兄様は、領地を持たない。大きな権力を削ぐ意味合いがあった。エーデルシュタイン元帥のフォルト兄様も、大公の肩書はあるけれど領地はない。ただ、今後手に入るであろうデーンズ王国をアディソン領とまとめて、フォルト兄様に任せたいわ。


「獲物の分配の心配はもう少しあとね」


「おや? もう考えておいてもいいと思うよ。何しろ、あのフォルトだ。絶対に負けてやらないだろうからな」


 負けないのではなく、負けてやらない。その表現が似合いすぎて、私は笑ってしまった。

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― 新着の感想 ―
帝國は挙國一致体制に移行しましたね~ 作中の説明だと、公爵家、侯爵家、辺境伯家は独立軍団に近く、伯爵家が子爵家男爵家をまとめて中央直属軍団という感じですかね!?
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