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【書籍化決定】妻ではなく他人ですわ  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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74.王国崩壊の兆し ***SIDEフォルクハルト

 義母上が父上を連れて、国境の砦に来た。馬車に酔った父上を、豪快に蹴り飛ばす義母上の姿に、ぎこちなく笑う。


「義母上、その……」


「よい。そなたの挨拶など期待しておらぬ。マインラートを休ませてやれ」


 ぐたっと力無い父上を、部下に任せた。俺としては逆のほうがいいが、さすがに部下には荷が重い。義母上と砦の階段を登った。到着したばかりなのに、義母上は元気だ。


「ほう、かなり長くなったな」


 俺より先に、同行したハイノが口を開いた。軽く睨まれて、思い出す。ややこしくなるから、説明は任せていいんだったな。


「時々、列から抜けていく馬車が出ます。追跡させて調べるよう、宰相閣下の命令を受けて対応しています」


「そうなのか? フォルト」


「はい、義母上」


 余計なことを言わずに頷けば、満足げに微笑み返された。機嫌が良すぎて怖い。嫌な予感がする。


「ウルリヒが動くぞ」


「っ、はい」


 ハイノからも説明を受けた。公開質問状で、トリアへの扱いの酷さを問うた。国同士の政略結婚なのに、籍を入れなかったこと。他にも聞いたが、重要なのはトリアの件だけだ。回答は偶然が重なっただけで、蔑ろにしたわけではない、というもの。


 当然、俺達家族が納得できるわけはない。叔父上が動いて、神殿全体でなんかするらしいが。


「神殿は質問状を、王家の回答とともに公開する。今ごろ大騒ぎになっておろう。難民が流れ込むぞ。封鎖を徹底しろ」


 義母上の命令にハイノが敬礼で答える。俺も大きく頷いた。難民ってことは、国を捨てて逃げてくる連中か。受け入れてはダメな理由がわからん。


「その顔は理解しておらぬな? 逃げてくるのが農民なら問題ないが、貴族や王家に連なる者が交じっていたら、いかがする? そなたに見分けがつくのか?」


「それでか」


 納得ができた。見窄らしい格好で国王が逃げてきて、うっかり見過ごして国内に入れてしまったら。騎士や兵士などの、暴力を使える者が入り込んだら? リヒター帝国の土台を揺るがす事態になる。


「フォルトよ、そなたは脳みそまで筋肉だが……バカではないのだ。説明されれば納得できるのだからな。トリアが頼りにしておるゆえ、失望される事態だけは避けろ。そのための副官だ」


 使い倒せ。物騒な言葉を声に出さなかった義母上に、読み取ったハイノが顔を引き攣らせる。そうか、俺は俺のままで役に立つ方法を探せばいい。考えるのはトリアや義母上に任せ、細かな采配はハイノが取り仕切る。


 全体の流れを掴んだら、直感が命じるまま進んで構わないんだ。


「わかった、義母上」


「ふむ、良い返事ぞ……ところで、マインラートはそろそろ復活したか?」


 砦の下を覗く仕草をして、眉根を寄せる。何か見えたのかと身を乗り出すも、配置された兵以外は誰もいなかった。


「まだ潰れておるとは軟弱な! そもそも、マインラートが馬に乗れぬせいで遅れたというに」


 義母上はぼやくが、置いてこなかったんだから……心配しているのだと思う。行列から数台の馬車が抜けた。同じ紋章を付けている。遠眼鏡で確認したハイノが、慌てた様子で再確認した。


「何かあったのか」


「……紋章に間違いなければ、公爵家が離脱しました。その前に馬が駆け寄っていたので……」


 紋章が描かれた手元の冊子を、真剣に確認したハイノが報告する。義母上の口元に笑みが浮かんだ。


「こちらにも報告が届くぞ」


 義母上の予言は、すぐに現実となった。アディソン王国、王都中心部において、神殿主導の抗議が始まる。王城へ詰めかけた民へ向け、城門で切りつけた騎士あり。トリアとエック兄が準備したなら、この後も予定通りだな。

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― 新着の感想 ―
国家間の国際的な意味を持つヴィクトーリアの婚姻について、偶然が重なっただけ、悪意はなかったが通用するはずもないでしょうにw 逃げ出した?公爵家の面々はどうするつもりなんでしょうね♪
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