表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化決定】妻ではなく他人ですわ  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/191

69.難しいことは任せた ***SIDEフォルクハルト

 義母上と父上が後から来る。伝令を出すより、自分で向かうほうが早い。そう考えて飛び出した。義母上は、いつも俺の愚かさを補ってくれる。


 話し方は短く切る。行動は迅速に、副官や仲間を信じて動く。危険があれば逃げる。義母上はもちろん、トリアも同じ言葉を繰り返した。お陰できちんと覚えたが。


 走らせた愛馬を放してやり、部下の出迎えを受けながら砦の門をくぐる。国境の壁に繋がる砦の門を閉じるよう命じた。


「門を閉じよ」


 ぎりぎりで入った商人がほっと胸を撫で下ろす。後ろで騒ぐのは、貴族の馬車か。無理に通ろうと護衛が騒ぎ出した。にやりと笑い、間に割って入る。


「通せっ!」


「この馬車はアディソン王国の侯爵家だぞ。外交問題に……」


「何を騒いでいる。エーデルシュタイン元帥の名において、国境を封鎖すると命じたはずだ。従わぬなら、我が剣の錆となるか?」


 叫ぶ護衛や御者の声を遮り、すらりと剣を抜く。手入れを欠かさない相棒は、ぎらりと光を弾いた。


 外交問題だと? すでになっている。最愛の妹を騙し、傷つけられた痛みは、まだ返していない。睨みつける俺の後ろから、ハイノが現れた。


「封鎖が決定したと聞きました。ここは私が預かります」


「……ちっ」


「舌打ちしない」


 母親のような叱り方をするハイノに任せ、その場を離れた。抜いた剣を収め、悠々と背を向けた俺に罵声を飛ばすバカはいなかった。俺よりバカがいれば、叩きのめしてやろうと思ったが、非常に残念だ。


 貴族の馬車を先頭に、長い列ができた街道を、砦の上から眺める。まだ最後尾が見えるが、もうすぐ街を抜けて伸びる事態になるはずだ。ほとんどが王国から帝国へ入る者で、帝国からアディソン王国へ向かう者はほぼいない。


 トリアが戻り、エック兄が手を打った。国内貴族や商人達にアディソン王国の危険性が広まっている。あちらに行くと帝国に戻れなくなる、と事前に話したらしい。


「封鎖完了しました。他に連絡事項はありますか」


 戻ったハイノに尋ねられ、うーんと唸る。確か、義母上に何か聞いたような……。


「ああ、義母上と父上が来るぞ」


「は? ああ、はい。準備させます」


 もう一つあった。トリアが耳元で……。思い出せないので、持たされた手紙を渡した。


「指示書だ」


 短く発するが、威厳はない。忘れたと見透かしたハイノは、呆れ顔で封を切った。さっと目を通し、手紙を畳んで差し出す。トリアの書いた手紙は、すべて俺が保管している。公式書類なら諦めるが、そうでなければ俺の宝物だった。


 手紙を入れる箱は大きめの宝石箱だ。中の仕切りを取っ払い、手紙用に加工させた。お気に入りの箱にしまうため、ひとまず胸元に戻す。


「公開質問状の回答が公表されたタイミングで、アディソン王国内へ侵攻します。ただし戦闘行為は禁止、皇女殿下の名において支援を行いますが……理解できましたか?」


「任せる」


 戦ってはダメなのと、王国へ向かうのは理解した。細かいことはすべて任せる。義母上達も応援に来るから、俺が難しいことを考える必要はあるまい。うんうんと頷いていたら、ハイノは溜め息を吐いた。


「なんだ?」


「いえ……これで戦闘になれば圧倒的な強さを誇るとか、詐欺だなと思っただけです」


「そっか」


 褒められたと思っておく。俺がすごく強くて狡いって話だな。


 視線の先には、長い列が続く。諦めて抜けていくが、それまでは現状維持だろう。まあ、俺には関係ない話だ。


「あっ、帝国の関係者が列に紛れていたら……」


「優先して通す、ですね。わかっています」


 有能な右腕に任せておけば間違いない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ハイノさんがドッグトレーナーに見えてきた…(笑) がんばれハイノおかん。応援してるよ!
とっても強くて、考えるのは苦手で、ちゃんとそれを自覚してて、シスコンw家族思いなのは良いことです!部下を信頼してるし!ハイノさんとのやりとり好きですw
>あっ、帝国の関係者が列に紛れていたら……  この天啓のようなフォルト兄様の思い付き… 参謀(≒お世話係)ハイノさん、お疲れ様です!  筋肉脳フォルト兄様の貴重な知性も、愛国心(≒トリア様愛)に全振り…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ