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【書籍化決定】妻ではなく他人ですわ  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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59.そういえば護衛はどこに?

 神殿に住む神官の中には、当然女性も含まれる。そのため、男女別の入浴施設が備わっていた。お陰で安心して体を洗えたわ。返り血で叔父様を驚かせるのも悪くないけれど、やはり清潔感は大事よね。


 神様の神殿に赤い血を垂らして歩くのも、不敬な気がするから。エリーゼが銀髪を丁寧に乾かす間に、肌に香油を(まぶ)した。褐色の肌は艶を与えると、色気が増すのよね。神様へのご挨拶に、血の匂いを纏うのは失礼でしょう。


 これなら叔父様へのご挨拶だけでなく、神々への礼拝も叶う。信心深いほうではなかったけれど、イングリットが生まれてから気持ちが変化した。胎内で子を育み、生まれ落ちた奇跡は、どんな経典より神の存在を教えてくれた。


「髪は解いておきます」


「わかったわ」


 未婚なので問題はない。どうしても皇宮での手入れと違い、足りないのよね。手櫛で髪を触り、いつもと違う感触に溜め息が漏れた。汚さないように片付ければよかったわ。こうして余裕が生まれれば、そんな考えも過った。


 神官服はだぶっとした形で、体形が出ない。互いに異性を惑わさないよう、体の線が出ない服が好まれた。締め付けなくて楽だし、部屋着の参考にしようかしら。


 廊下に出たところで、エック兄様と話す叔父様に気づいた。さすがに入浴するほどの時間があれば、神殿内での騒動も耳に届いたわね。


「大神官ウルリヒ殿にご挨拶を」


「っ! トリア! いや、ご無事で安心いたしました、姫君」


 地が出ておりましてよ、叔父様。微笑んで受け流す。叔父様が神殿内で賊が出たことへの詫びを並べ、私とエック兄様は鷹揚に受けて許した。これが人目のある廊下で行われることに、意味があるの。


 大神官が先頭を歩き、後ろに皇族が続く。叔父様の部屋に入って扉を閉めた途端、きつく抱き締められた。騎士のように鍛えていなくとも、男性の力は強い。叔父様はしばらく抱き締めて動かず、何も言わずに私も付き合った。


「本当に……君が強いと知っているが、心臓が止まりそうだったぞ」


 改めてここからね。叔父様とエック兄様、私……策略や謀略を得意とする三人が集まり、作戦会議が始まる。


 今回の襲撃の首謀者は、すでに判明していた。アディソン王国出身の神殿騎士と神官よ。国王の頼みで、私を捕らえて連れ帰るつもりだった。神官の一行は、馬車や荷物の検査を免除されている。これは神々への敬意と神殿の善良性を信じての特例よ。その信頼を裏切ったんだもの。


「神殿の神官はすべて入れ替える。アディソン王の息がかかった者は、相応の処置をしよう」


 処分はしない。どんな形であれ、神殿の人間だもの。神々が見逃してくださるといいわね。ただ、処置は必要よ。今後同じような騒動を起こさないよう、きちんと管理するのは叔父様の仕事だった。


「お任せしますわ。ところで……私の馬車の護衛はどこへ行きましたの?」


「トリアが身だしなみを整えている間に調査させました。買収されて離れたそうです」


 エック兄様は宰相で、私は皇妹であり皇女の母なのに? 騎士が、護衛対象の二人を置いて……あとでなんと言い訳するつもりだったのよ。


「アディソン王からの手紙を渡すだけ、と聞いたそうです」


「あらそう……エック兄様はそれを信じるの?」


「嘘は言っていないでしょう。だからこそ、罰を与えなければなりません」


 この件はエック兄様にお任せしましょう。私は別件で忙しくなるわ。


「両方ともアディソン絡みか」


 あら、叔父様の笑みが黒い。これは……アディソン王国の神殿粛清が決定ね。

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― 新着の感想 ―
外側の掃除ついでに国内の反乱分子をさくさく片付けてく姫さま最強。優先順位わからない頭悪い護衛は要らないですねー。前線肉壁で有効利用するといいですね♪ 有効利用できそうな幼子は集めて洗脳教育→個人別英才…
皇女の護衛っていうからにはそれ相応の身分だったはずなんだけど買収される程度なら家ごと処罰だなあ
護衛は処刑か、両腕切断の放逐かな?(´-ω-`)アディソンキナ臭過ぎなのだ。黒幕だから仕方無しだね。小人は猫作者さんの毛並みに埋もれガタガタなのです。猫作者さんに振動パック小人が装着されました←血飛沫…
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