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【書籍化決定】妻ではなく他人ですわ  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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53.卵が先か、鶏が先か……

 デーンズ王国の大神官はディーター殿ね。真面目で融通の利かない人だから、排除された可能性があるわ。死と再生を司る海の神を守護神としていた。


 隣のアディソン王国の大神官ホラーツ殿は、争いや戦いの神が守護している。火を操る神なので、鍛冶師を庇護しているのも特徴ね。


 どちらも大神官の安否が不明の国よ。二枚目の資料には、両神殿の権力構造が記されていた。大神官を頂点として、高位から末端まで。厳しい階級が定められている。その神殿で大神官が不在ならば……当然、別の神官が仕切るでしょう。


 叔父様がわざと毒のお茶を飲み、騒ぎを大きくした理由はここにあったのね。神殿の神々には序列があるわ。叔父様を守護する正義と断罪の神は、二位だった。けれど、神々の不正を裁く権限を持っている。


 神々の序列は、そのまま神殿の力を示すわ。上位であるリヒター帝国の大神官を暗殺しようとすれば、他国の神殿へ介入する理由になる。実際に飲まなくても、飲んだフリをなさればいいのに。でも、断罪の神はその嘘を許さないのかもしれない。


 実際に神々の加護なのか、リヒター帝国の皇族は恵まれていた。強大な力を持ち、豊穣を約束された広い領地を管理する。他国のように厳しい環境に身を置くこともなく、旱魃や冷害に悩むこともなかった。


 他国がリヒター帝国を狙うのは、当然でしょう。もちろん、同情して国を明け渡すことはない。


「なあ、トリア。ここのところ……なんで記載してるんだ?」


 今回の騒動は、デーンズ王国とアディソン王国の二つ。けれど、アルホフ王国の記述があった。フォルト兄様の嗅覚って、優れているのね。


「アルホフ王国の大神官は、両国の神殿への影響力が大きいの。叔父様もそれは承知している……」


 だから記載された。知恵や商売といった人間に関係する加護を持つ神は、小さなアルホフ王国を繁栄させてきた。流通の要所として、人々の調整役を担ってきたの。その国が軍事同盟に加担した理由が気になるわ。


「中立の立場で甘い汁を吸うのが、アルホフのやり方なのに」


「狂ったのは王族じゃなくて、神殿じゃねえのか?」


「……どうして、そう思うの?」


 フォルト兄様はうーんと唸りながら、感じた違和をそのまま口に出した。


「神殿と王族ってのは、どうしたって親しいだろ。うちもそうだし」


 頷いて先を促す。


「だったらさ、神殿同士が最初に手を組んだんじゃねえか? それで王族を動かし、軍事同盟を結んだ。もし順番が逆なら、ここが連絡を寄越さなかったの、変だろ」


 叔父様が大神官として呼びかけた際、すぐに動いたのは六人。全部で九人いるのだから、アルホフ王国も動きが鈍かったのは事実よ。そのあと遅れて、こちら陣営についた。ほぼ同時期に、王族が嘆願書を送ってきたわ。


「確かにおかしいわね」


 国同士の動きを見れば、デーンズ王国が画策して他の王国が乗っかった形になる。でも神殿側から見たら、別の景色が広がっているのかも。


「ありがとう、フォルト兄様。ついでにお使いを頼めるかしら?」


「ああ、いいぜ」


 叔父様に、アルホフの大神官を調べてもらいましょう。商売や知恵など、人間に関わりの深い神の権能には、謀略や策略が含まれるはずよ。直接神々が力を貸したとは思わないけれど、影響は受けるでしょうね。


 さらさらと書いた手紙を持たせ、フォルト兄様を見送る。所在不明の大神官二人、知っているとしたら……王族よりアルホフの大神官の可能性が出てきた。


「ややこしい状況を作ってくれたお礼は、しなくては……ね」


 考え事が多すぎて、頭が痛くなってきた。額を押さえ、隣で眠るイングリットの部屋へ向かう。まだ眠っている時間のほうが多い娘を、椅子に腰掛けて眺めた。


 あなたの受け継ぐ未来は、きちんと整えておくわね。

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― 新着の感想 ―
神官の暗躍か!?(@ ̄□ ̄@;)!!小人はニンニクマシマシにして、練り込むと餃子の皮に具を詰め込んでいきます。 フライパンに胡麻油少し入れて火を弱火にします。
アルホフ王国の大神官が序列に不満を募らせて王室を唆した可能性がでてきたのか! 天然脳筋なフォルト兄の『考えるよりも感じろ』がうまいこと働くと、こういったコロンブスの卵的な発想に至るのですよね~
>「狂ったのは王族じゃなくて、神殿じゃねえのか?」  野生の勘発動!? しかも理路整然とした話が続き… っ! 智慧の神のような一柱が憑依でもしたのでしょうか?!  とにかくフォルト兄くん、グッジョブb…
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