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【書籍化決定】妻ではなく他人ですわ  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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51.あなたを皇妃にしたいの

 ミルクティのように淡いブラウン、新緑を思わせる透き通った瞳。日に焼けたように、ややオレンジがかった肌の色。きつい顔立ちは、凛とした印象を与えた。可愛いより綺麗と表現するほうが似合いそう。


 丁寧に挨拶するザックス侯爵令嬢オリーヴィアを品定めしながら、笑顔で着席を勧める。庭でのお茶会に使うテーブルセットを使用したのだけれど、椅子の位置をわざと片寄って並べさせた。ルヴィ兄様と私は近く、オリーヴィアは正面へ。


 二対一で向き合う形が近いわ。緊張させてしまうけれど、ルヴィ兄様も私もあなたを正面から確かめたいの。


「いきなり呼び出してしまって、悪かったわ。支度など、忙しかったでしょう?」


「いいえ、皇帝陛下、皇妹殿下のお呼びとあれば、いつでも応じるのが臣下でございます」


 あら、賢さも気に入ったわ。ただ否定して大丈夫と濁すなら、普通のご令嬢。大変だったと素直に話す馬鹿なら、役立たず。でも遠回しに「これが貴族の役目ですから」と返すなんて。失礼にならないギリギリのラインで、迷惑だと伝えてくる技術に感心する。


 呼ばれたら応じるのが役目なれど、気を遣ってもう少し余裕を持って呼んでほしい。そう捉えることができるもの。私は口元の笑みを隠すため、扇を広げた。野薔薇が散りばめられた扇の柄に、彼女は目を伏せる。


 絶対に欲しいわ。ルヴィ兄様を見れば、穏やかに微笑んでいる。彼女に好印象を抱いたみたいね。


「噂は知っているか? プロイス王国のベランジェール姫との婚約が、白紙になった件だ」


「噂は耳にしております」


 本当に頭の回転が早い人だわ。皇妃としての本来の役目は求めないつもりだったけれど、任せて問題なさそう。お人形として外交や行事、儀式に立ち会ってくれたらと思った。ガブリエラ様のように、毅然と立って役目を果たす女性はいないだろう、と。


 オリーヴィアなら任せられるわ。能力と美しさ、何よりルヴィ兄様との相性も良さそう。ほぼ決まりね。


「皇帝ルートヴィッヒ陛下の妃になる令嬢として、あなたの名前が上がったの」


「……はい」


「ザックス侯爵令嬢オリーヴィア、皇妃になってくださらない?」


「お願いであれば……辞退させていただきたく」


 語尾を最後まで言い切らない。これも満点の受け答えだった。どうしても欲しい!


「ならば、命じます」


「皇妹殿下が、でございますか?」


 あなた様にその権限が? と問うオリーヴィアの切り返しに、ふふっと笑みが溢れる。扇を広げておいて良かった。顔の下半分を隠していなければ、読まれてしまうところ。こんな才女が国内にいて、見落としていたなんて。


 私がルヴィ兄様の秘書官を務めようと思ったけれど、皇妃がオリーヴィアなら楽ができそう。実務をすべて預けられるし、サポートも最小限で済む。私の肩書きを、相談役くらいにしておこうかしら。


「権限ならあるのよ。こちらをご覧になって」


 事前に用意した書類を広げる。お茶のカップをさりげなく避ける彼女の仕草が、とても優雅だった。気遣いもできるし、ルヴィ兄様にはもったいないかも。


「……畏れ多いことです」


 前皇帝夫妻、ライフアイゼン公爵、複数の大神官、宰相、皇帝陛下。彼らの署名の上に、私に権限を与える旨の文章が記されている。才女と聞いて、すぐに用意させたの。正解だったわね。


「足りなければ、他の国内貴族の名前も足すわ」


 逃げ場なんてないのよ。そう伝えて待てば、彼女は思わぬ条件を出した。


「一つだけ、お願いがございます。わたくしが子を産めなかった場合の離縁は、ご容赦ください」


 驚いて目を見開く。彼女の周辺で、そんな事例があったのかしら。この件については、全く問題ない。


「安心して頂戴、陛下には、すでに皇女殿下がおりますもの」


 養女だと言わなくても、理解したはず。オリーヴィアはほっとした顔で、緊張した肩の力を抜いた。


「謹んでお引き受けいたします」


 少しの間をおいて、望む答えが返った。

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― 新着の感想 ―
オリーヴィアの魅力がいまいちわからないのは、思い入れも情もないまま我が強いところだけをいきなり見せられたからかなと現時点ではちょっと置いてけぼりくらいました。 背負っている華子も後出しで出てくるのでし…
こっわ、姫さまこっっわ! オリーヴィア嬢、大丈夫、この恐い人はこの後降嫁するから!縁は切れないけど同居小姑じゃないから安心して!と励ましたくなります。 それに皇帝陛下はそんなに怖くないから、阿呆な野心…
狩られたオリー様(´;ω;`)ハンターもするとは、中々の強者ですね。小人は猫作者さんの毛並みに黒唐辛子のエキスをしっかりと練り込みました。激辛エキスでヒリヒリしますよ。
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