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【書籍化決定】妻ではなく他人ですわ  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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49.皇帝陛下のお見合いを打診

 他国から血を入れるため、ルヴィお兄様はプロイス王国ベランジェール王女との婚約を受け入れた。妻となる女性に多少の難があっても、支える家族がいる。エック兄様が政の面を、フォルト兄様は武力で。裏切らぬ家族の支えが、ルヴィ兄様の根底にあった。


 子を産む妻を、さほど重要視しなかったのは弊害の一つね。他のすべてが満たされていたから、ここは欠けていても構わないと妥協させてしまった。けれど、私が他国の血を取り入れる。薄まった血を持つ直系皇女が誕生したことで、状況は一変した。


 ルヴィ兄様が政略結婚をする意味、そのものが消えたの。国力を強化する必要はないし、他国との争いも表面上はない。水面下の話は、いつだって存在するけれど。どこの国もそれは同じ。表立って理由がなければ、国内貴族から選ぶのが順当だった。


 エック兄様と貴族名鑑を開き、真剣に検討する。皇妃になれる教育水準と考えるなら、侯爵家以上だわ。その上で、公爵家は今回除いた。理由は二つあり、一つは血が近いこと。もう一つが、公爵家が二つ消えること。


 騒動を起こしたノイベルト家とギーレン家は候補から除外、ルーベンス公爵家は現状維持だけれど年頃のご令嬢がいなかった。ライフアイゼン公爵家は、当主であるじぃの孫になるけれど、すでにエック兄様と婚約中で仲が良い。引き離すのは気の毒だった。


 消去法で浮かんできたのが、七つある侯爵家なの。ルヴィ兄様が二十五歳、年上はすべて結婚済みだった。年下も結婚していたり、婚約済みよ。当然ね、高位貴族のご令嬢で残っていたら、問題ありと公言するようなものだから。


 ところが、今回……思わぬ傑物があぶれたの。ノイベルト公爵家の嫡男に嫁ぐ予定だった、ザックス侯爵令嬢よ。名をオリーヴィア、年齢は二十一歳だった。年齢差も申し分ない上、数世代遡っても公爵家との婚姻歴がない。


「最高の人材だわ」


「都合が良すぎて嘘のようですが……。問題は、彼女が婚約者へ愛情を抱いていた可能性ですね」


 領地が近い二つの家は、政略結婚で互いの利益を図った。ごく当たり前の婚約だが、もし互いの間に感情があったら? 愛している人と結婚寸前に引き裂かれ、仇に嫁がされる。そんな考えに陥る危険があった。


「調査させるわ」


 口にした直後、待っていた人物が顔を見せた。まだ陞爵の儀を行っていない、ローヴァイン侯爵クラウスよ。


「我が麗しの姫に、ご挨拶させてください。ヴィクトーリア姫」


 礼儀に従い、手の甲を捧げ持ち唇を寄せる。だが触れる手前で離した。婚約者なら触れても構わないのだけれど、正式な発表前なので触れなかったみたいね。賢い人だわ。


「呼び立ててごめんなさいね、クラウス。このご令嬢についての情報が欲しいのよ」


「おや、艶のあるお誘いではなかったとは。非常に残念です。ザックス侯爵家は非常に真面目な一族で、外交に長けています。オリーヴィア嬢も、数カ国語を操る才女ですよ。婚約は完全な政略で、婚約者の()()に悩んでいるとか」


「つまり、婚約段階で浮気をされていたのね? 最低だわ」


「さすがはローヴァイン侯爵ですね。僕より情報が詳細です」


 感心しているのか、噂好きと嫌悪しているのか。エック兄様の声は硬い。クラウスは「恐縮です」と微笑んで受け流した。


「直接見極めましょう。エック兄様の指示で、ルヴィ兄様の婚約を打診して頂戴」


 王侯貴族の結婚は、国や家のため。政略結婚は当たり前だけれど……家族としては幸せになってほしいもの。歩み寄れる人かどうか、直接会って判断したいわ。

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― 新着の感想 ―
>政略結婚は当たり前だけれど……家族としては幸せになってほしいもの。 トリアは5年程度で国に帰るつもりでしたが、これ、相手がちゃんと誠意と敬意を尽くしていたらどうなったのかな、とも思いました。 ア…
婚約者選び。小人は名探偵小人として、暗躍します。猫作者さんが筋肉見てるうちに仕事にε=(ノ・∀・)ツ
現皇帝ルートヴィッヒの元婚約者は、諸々の条件が全部揃っていた為に一番肝心な『器』を見極める事を蔑ろにしてしまった感じでしたね〜 皇帝の新たな婚約者は、褫爵された公爵家の婚約者をスライド?させるのかなぁ…
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