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【書籍化決定】妻ではなく他人ですわ  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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46.例え話は難しかったみたいね

 リヒター帝国の東側に位置するシュナイト王国、南側のイェンチェ王国は事実上の属国よ。後ろから襲われる心配がないから、北と西の敵に対峙していられる。シュナイト王国にはお父様の妹姫が嫁いで王妃となった。


 イェンチェ王国の姫が、皇妃となったガブリエラ様なの。正確には、公爵家のご令嬢を引き取って養女とし、政略結婚に利用した形ね。幼い頃から王宮で育ったガブリエラ様は、お淑やかとは正反対に育ったけれど。イェンチェ王国自体が、特殊な環境なので当然かもしれない。


 少数部族の集まりであるため、国は常に強者が頂点に立つ。老若男女関係なく、強ければ正しいの。王家で育ったガブリエラ様が強いのも、その影響ね。


「お兄様方、ここを落としましょう。でも、表からではなく……裏からこっそりと」


 ルヴィ兄様の執務室で顔を突き合わせ、四人で会議を行う。兄弟集まっての悪巧み、とも言うわね。大きめの執務机に広げた地図の上部、北の一角を扇の先で示した。


 すでに落ちたブリュート王国より西寄り、縋り付いてきたアルホフ王国だ。ブリュートは叛逆でがたがたに崩れ、内政が機能していない。そこへ帝国から支援の名目で、穀物と人材を送り込んだ。


 帝国の兵士が治安を維持し、不要な暴動を抑える。これにより、略奪や暴行事件が激減した。飢えた国民へ穀物を与え、懐柔していく。卑怯な手に見えるけれど、使い古された手法は有効なのよ。効果が高いから、何度も採用されてきたんだもの。


 ブリュートは間もなく、民自らの決断で落ちてくる。ならば、次は軍事同盟などに加担したアルホフ王国だろう。アディソン王国はまだ先ね。震えながら断罪の日を待つといいわ。


「アルホフか……ブリュートと同じ手は、芸がないな」


 ルヴィ兄様が眉根を寄せる。私はコンラートの調査結果を地図の上に置いた。


「すでに嘆願が届いているのなら、話は早いわ。裏切らせましょう。()()()()()()を食べる必要はないもの」


 首を傾げるフォルト兄様へ、エック兄様が丁寧に説明する。


「敵を、腐りかけの林檎に喩えたのでしょう。ブリュートは地に落ちた林檎、急いで拾う必要はありません。ですが、完全に腐った二つの国は、叩き落とすだけです。タイミングを狙って枝ごと切れば問題ありません」


「それで?」


 フォルト兄様、わかっているのかしら。


「問題はギリギリの林檎です。アルホフ王国がこれに当たりますが、裏切りという加工を施してデーンズ王国に食わせるのが、トリアの作戦です」


「……全部叩き落として捨てたらダメなのか?」


 面倒になったのね。フォルト兄様には、苦手な話ね。


「ブリュートと同じ方法で苦しめて、アルホフを完全に手中に収めるの。デーンズ王国への盾として利用しながら、情報をこちらへ引き抜く。わかったかしら?」


 心を折って粉々に砕き、逆らう気など消し去る。その上で、デーンズの動向を探る諜報役として利用し、最後は工作員として使い捨てる予定だった。


「ああ。さすがトリアだ。エック兄の何倍もわかりやすい」


「脳筋め」


 思わず吐き捨てたエック兄様は、咳払いして口調を直す。


「失礼しました。頭の出来を考慮して話すべきでしたね」


 盛大な嫌味に、フォルト兄様は反応しない。きょとんとした顔で「次からはわかりやすく頼む」と言い放った。がくりと肩を落としたエック兄様には悪いけれど、笑いを堪えきれない。後ろを向いたルヴィ兄様も肩が震えていた。


 エック兄様がお気の毒だけれど、フォルト兄様の鈍さには勝てないわ。

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― 新着の感想 ―
この兄妹の中で偽りなく脳筋すぎるフォルト兄さま………。 産まれる前に頭でも打ったんです?お母様はまともっぽいし。
腐った林檎を猫作者さん用のアップルパイにしました。さあ、食べてお腹を壊すのです!!小人の策略です。
脳筋様... 妹様の分かりやすい説明褒めてたけど、初手分かりにくいたとえ持ち出してきたのその妹様ですよ。 気が付いてないっぽいですね(汗
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