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【書籍化決定】妻ではなく他人ですわ  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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42.権力でゴリ押しするおつもりね

 可愛い弟である叔父様の願いと、私とクラウスの婚約を大々的に広めたい思惑と。両方が重なった結果、お父様は荒っぽい方法を選んだ。


「守護する神々のご加護だろう。さすがはウルリヒ大神官殿だな。我が皇家に伝わる秘薬がここまで効くとは」


 とかなんとか。無茶苦茶な言い分で、回復したことにしてしまった。大陸最大勢力であるリヒター帝国の、前皇帝の言葉を否定できる人は少ない。その一人であるガブリエラ様も、艶やかな微笑みで追従した。これでほぼ決定ね。


「荒っぽい方法ですこと」


「こういう話はな、堂々と言い切った方が真実味があるものだ」


 お父様はからりと明るく笑い、盛大な嘘を正当化した。叔父様も、タイミングをずらして騒動を起こせばよかったのに。私やイングリットのことを優先し、己の命を天秤にかけるなんて、やめていただきたいわ。


 家族の集まる奥の宮で、額に手を当てて溜め息を吐く。私の政略結婚の不備が、こんな騒動に発展していくなんて。想像もしなかったわ。せいぜいが、あの忌々しいモーリスの爵位を剥奪し、平民として放逐する程度の計画だったのよ。


 後から後から、策略やら謀略やら……果ては国取りの話まで出てきた。お陰でどんどん騒動が大きくなるわ。ソファーに背を預け、行儀悪く体を預けた。


「前倒しになった婚約式ですが、衣装が間に合いませんね」


 エック兄様は淡々と事実を突きつける。その言葉の裏には、他国の王族や帝国貴族の都合は含まれなかった。呼んだら来い、間に合わなければ切り捨てる。そんな残酷な響きが含まれていた。


「宝飾品は間に合うのかしら?」


「それなら、私のとっておきを使うがよい」


 ガブリエラ様は微笑み、優雅に扇をひらりと動かす。頷いた侍女が動き、後ろの棚から宝石箱を持ち出した。どうやら事前に準備していたみたい。テーブルの上に置かれたのは、周囲に彫金が施された豪華な宝石箱だった。蓋に埋め込まれているの、真珠とサファイアよね。


「これなら不足あるまい」


 躊躇う私をよそに、ガブリエラ様はさっと箱を開けた。中から現れたのは、美しいティアラだ。中央に親指の爪ほどもあるサファイア、周囲にこれまた大粒のピンクの宝石……まさかこれもサファイアなの? それからアクセントのように、小粒のルビーが輝く。


「ガブリエラ様……これは、その」


「皇妃として、公式の場で使用するティアラだ。もう皇妃の座は退いたゆえ、義娘に渡してもおかしくなかろう」


「……そういうものは、私の妻が引き継ぐのではありませんか?」


 苦笑いしながら指摘するルヴィ兄様に、ガブリエラ様は首を横に振った。


「とんでもない! これは私の誇りであり魂も同然だ。よその王女などに渡せるか」


 今の言葉には、王国は帝国の付属品という意味が込められている。それと同時に、べランジェール王女は皇妃に相応しくないと言い切ったも同然だわ。まあ、私も同じ意見だけれど。


 ルヴィ兄様の妻としてなら、私達が口出しする必要はないの。でも、リヒター帝国の皇妃は別よ。ガブリエラ様にしたら、力量不足が目立つ上、ルヴィ兄様に逆らう姿勢も気に入らないでしょう。私が耳にした噂だけでも、皇妃として認める気になれないもの。


「母上がそう仰るなら、構いませんよ。トリアのほうが似合うのも事実ですし」


 ルヴィ兄様はあっさり引いた。これは……皇帝陛下の婚約者の座が、空きそうね。また争奪戦が始まるのかしら?


「兄上、面倒を起こさないでください。僕の仕事が増えてしまいます」


 ぼやくエック兄様の肩を、フォルト兄様が叩いた。力が強かったようで、エック兄様が嫌そうに顔を顰める。


「ルヴィ兄の妻じゃなくて、新しい皇妃探しだろ? 他の仕事は誰かに押し付けちまえばいいさ」


 脳筋なのに、意外といいところに気づいたわね。フォルト兄様の野生の勘は、実母だった側妃様譲りかもしれないわ。

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― 新着の感想 ―
>ルヴィ兄の妻じゃなくて、新しい皇妃探しだろ? ここの違いを自然にさらっと口に出せる辺りが、フォルト兄がただの脳筋ではない部分なんだろうなと感心しました。 お父様の昼行灯に見せて力の振るい方が凄まじく…
皇妃の選定なんてそりゃ国のトップ層が専念しても文句の言えない国の一大事業ですもんね 今の人が相応しくないと判定くらったんならそりゃ再選定もやむなし、てなるでしょう 政略ありきの王侯貴族の世界で嫁ぎ先に…
小人はこんがりと、焼けて日焼け小人になりました。猫作者さんを虫取網を持って追い掛けます。夏仕様にするのだ。ドリーミングなのだ!!頭と手足残して毛皮無くすのだ!!
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