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【書籍化決定】妻ではなく他人ですわ  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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38.最悪の連鎖 ***SIDEデーンズ国王

 リヒター帝国は邪魔だ。あの国がある限り、王国はすべて格下になる。世界を制したリヒンテンシュタット帝国から別れ、最初に国を興したのがデーンズ王国だ。我らにこそ、大陸制覇の権利がある。


 リヒター帝国の領土は、かつての大帝国の二割ほどしかなかった。正面から戦うには、デーンズ王国の位置が悪い。大きく裂けた大地のため、北側へ回り込む必要があった。凍てつく北の大地を抜けるには、短い夏を利用するしかない。その先には山脈もあった。


 攻め込んでしまえば、翌年まで戻れぬ。だが、海と北の寒さがあるから、デーンズ王国は潰されずに大きくなれた。小さな領地をいくつも潰し、統合された国だ。一つに纏めた先祖の苦労が偲ばれる。


 いまだに大陸の中央に構えるリヒター帝国と、正面から戦う道は諦めた。代わりに搦め手を思いつく。海を挟んで交流のあるアディソン王国、彼の国を利用しよう。リヒター帝国と我が国の間に位置し、ちょうど代替わりしたばかり。


 自尊心は高いが経験と能力に欠けるアディソン王を煽てて、その気にさせた。リヒター帝国の領地が手に入ると……囁きに舞い上がった愚王は、帝国の姫を奪う。婚姻という形をとり、人質にするためだ。


 可愛がられ、才気に溢れた皇妹が嫁げば、アディソン王国と戦えまい。その間に戦力を移動させ、アディソン王国を踏み台にして攻め込む予定だった。


 なのに、あの阿呆が! 何をとち狂ったのか。婚姻届を出さなかった。手違いではなく、故意に! まだ兵を動かし始めたばかりで、帝国と戦う準備はできていない。にも関わらず、帝国の姫に逃げられる始末。泣きついてきたアディソン王の書状を、腹立ち紛れに破り捨てた。


「っ! あの愚物がっ、この程度の足止めもできぬのか」


 我が国の将軍であったなら、首を刎ねているところだ。そこへ、情報が舞い込む。神殿に入った貴族家の子弟らによれば、姫は元帥に守られ帰国した。その娘は皇帝の養女になった、と。


 ブリュート王国陥落の知らせが遅れて届き、頭を掻き毟る。なぜ、このような事態になった! どうして言われた通りにできないのか。我の作戦通りに動けば、まだ姫を留めておけた。人質として盾にして、帝国の抵抗を削ぐこともできたというのに!!


 大丈夫だ、まだアディソン王国が使える。あの国にすべての責任を押し付け、撤退しよう。一度引いて、改めて攻め込む算段をすればいい。山脈と氷の大地が我が国を守る。さらにアルホフ王国が、その間を塞いでいた。海はこれから荒れる季節に入り、船も使えない。


 半年は安泰か。帝国を潰す計画は、また練り直すとしよう。


「ご報告申し上げます」


 駆け込んだ伝令は、耳を疑う情報を持ち込んだ。神殿が動く? 調査という名目で、各国の神官が選別されるだと!? くそっ、貴重な情報源が絶たれるではないか!


 アディソン王国が指示通りに動いておれば、ブリュート王国が持ちこたえていたら。こんな事態にはならなかった。腹立たしさに、テーブルに用意されたグラスを床に叩きつけた。鋭く割れた破片が、我を責めているように思えて、怒りに任せて踏みつけた。

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― 新着の感想 ―
そうすると、未提出の婚姻届がよくわからないですね。 アホ国王、深謀遠慮ありげに「意味があるのだ」とか言ってたと思いますが、何故?? 傀儡にするならちゃんと躾けないと。ホウレンソウのできない無能は部下に…
他人や物事が自分の思い通りに動く何てことが 有るわけ無いからね。 まして部下でも何でも無い“同盟者”でリーダー格を気取れる位の 実力や発言力はあっても“明確にリーダーと認められている訳でもない”のだか…
そもそもが自分の人選ミス。 やる気だけある無能の働き者(一番ダメなパターン)と組んだらそりゃ相手が何とかしてくれるからって勝手に動くに決まってるがなー!だってバカなんだもん(笑) 何か婚姻届出さないの…
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