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【書籍化決定】妻ではなく他人ですわ  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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36.容赦はしなくてよ?

 叔父様にも報告しないといけないわ。仲間外れにしたと拗ねそうだもの。私を可愛がる叔父様に会うため、先触れを出して神殿へ向かった。食事をご一緒するチャンスが二度も潰れたので、今日は神殿で同席する予定よ。それも伝えておいた。


 クラウスはまだ早い。公表するまで、二人だけで行動するのは避けたほうがいいわ。イングリットはよく寝ていたので、置いてきた。身軽な私は、馬車の窓から見える人物に声をかけた。


「フォルト兄様、昼食はご一緒なさる?」


「残念だが、あちこちに顔を見せる必要があるんだ。またにしよう、と叔父上に伝えてくれ」


「わかったわ。気をつけてね」


 私を送った足で、様々な部署に顔出しするらしい。元帥は軍部のトップであり、武力の頂点でもあった。一時的であれ倒れた話が広まれば、足を引っ張ろうとする愚者が現れるものよ。それを一蹴するため、軍や騎士団を回る。


 ハイノが予定を組んで準備したなら、しっかりと回ってきてほしいわ。帰り道の護衛は、神殿で手配が必要ね。神殿にも武力は存在した。戦いと力の神がいるんですもの。当然、武力は肯定されてきた。神殿騎士団もある。彼らに護衛をお願いするとしましょう。


 揺れる馬車が止まり、フォルト兄様の手を借りて下りる。別れの挨拶をしたら、叔父様の手を取った。


「フォルト兄様、無理はなさらないでね」


「もう平気だ。神々のご加護に感謝する」


 大神官である叔父様に一礼し、馬に乗って颯爽と去っていく。この姿だけなら、立派な皇子殿下で大公閣下なのに。


「エーデルシュタイン大公閣下は、相変わらずですね。お元気そうで安心いたしました」


「大神官様の祈祷のおかげですわ」


 茶番のような会話を楽しみながら、人目を意識して歩いた。皇族と神殿の仲の良さをアピールするのも、政治的に有効な手段よ。神官の中には、他国から派遣された者も多い。貴族家出身者は、どうしても実家の影響を受けるから。間者のような振る舞いは当たり前だった。


「婚約が決まるとお伺いしました」


「あら、耳が早いのですね。ローヴァイン侯爵クラウス殿と、婚約が整いました。神々へのご報告とお礼に参りましたのよ」


「それはそれは。おめでとうございます。神々もお喜びになるでしょう」


 扉を閉めて、顔を見合わせる。ここまで情報を流せば、敵も慌てて動くはず。くすくすと笑い合い、腕を組んで仲良くソファーに腰掛けた。レースのカーテン越しの日差しが、明るく室内を照らす。


「どう出るかしら」


「あの連中のやることだ、トリアとエックには敵うまい。義姉上から聞いたが、本当にいいのか?」


「クラウスのこと? 私が選んだのよ。外見、年齢、人格、家庭事情、家格……全てにおいて満足しているわ」


「トリアが望むなら、どんな男でも手に入るだろう。あと二十歳若ければ、立候補したが」


「あら、叔父様が? 素敵ね」


 お茶の道具が揃っているので、久しぶりに淹れてみた。少し渋いかしら。


「渋いわね」


「ああ、こっちの缶を開けたのか。差し入れだが、何か入っている。もう飲むのはやめなさい」


 さっとカップを片付けられてしまう。綺麗な装飾の施された缶を開けたのは、失敗だったみたい。隣の艶なしの黒い缶を手に取り、叔父様はお湯でしっかり時間をかけて抽出した。美しい色の花茶に口をつける。


「美味しい」


「トリアが来るなら、最高のお茶を用意しないと失礼だからな」


「先ほどのお茶、どなたからの差し入れですの?」


 話題を逸らそうとする叔父様に、私は微笑んで疑問を提示する。話を戻されたことで、叔父様は渋い顔をした。眉根を寄せてしばらく黙った後、根負けして答えてくれる。


「兄上の名を騙った……ある神官だ。出身はデーンズ王国だった」


 にこりと笑い、話はそこで終わり。そう、やはりデーンズ王国が絡んでいるのね。叔父様にまで手を伸ばすなんて、愚かなこと。リヒテンシュタイン皇族と敵対する意思表示なら、受けて立ちましょう。地図だけでなく歴史からも消し去ってあげるわ。

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― 新着の感想 ―
実際にリヒテンシュタイン公国ってあるのですが、それを踏まえての国名ですか?
 芋蔓もまだまだズルズルと引けるようで… ぷっぷぷ〜♪    フォルト兄様も完全復活致しましたし、落ち葉も沢山集めて焚き火の準備もしなくては…
デーンズ王国って、現実世界に存在するとある半島国家をモデルにしてるんじゃないかと思うくらいそっくりです♪ ふざけた事をやってくれたデーンズ王国は、この世界から存在そのものをなかった事にしてあげるのが相…
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