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【書籍化決定】妻ではなく他人ですわ  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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35.陞爵の裏の思惑が透ける

「私が公爵、ですか」


 呼び出されたローヴァイン侯爵は、驚いた顔をする。突然の呼び出しに快く応じた彼は、きっちり締めた襟に触れた。だが緩めることはなく、襟元の指を離した。


「ええ。皇帝陛下も宰相閣下も承認なさったわ。それに、私とエック兄様の推薦なの」


 呼び方を使い分ける。公的に承認され、私的に応援すると伝えた。こういった言い回しは、彼の得意分野のはずよ。皇族が後ろに付くという意味を、ローヴァイン侯爵は上手に使えるはず。


「クラウスと、お呼びください。いつものように……」


 意味ありげな口調と笑顔に、お父様の意図を理解した。そういう思惑があったのね。


「これからも()()()?」


「そうなれば、光栄です」


 リヒター帝国の公爵家はすべて、皇族の血が入っている。皇弟が婿入りしたり、家を興したり。皇女が嫁いだ家もある。何らかの形で、数世代の間に血が混じっていた。


 新しい公爵家を興す方法はいくつかあるが、陞爵を指示した思惑は簡単よ。私が嫁げばいいの。陞爵できる侯爵家は少ない。飛ばして伯爵家から探してもいいが、独身の当主は限られた。


 お父様の頭の中に、エック兄様の学友であったクラウスがいたのだわ。だから陞爵を口にした。子を産んでも、公式記録での私は未婚になっている。侯爵家に嫁げば、公爵家に格上げされるの。慣例通りよ。


 戻った私がいつまでも皇宮に残れば、嫌がる人も出るわ。ルヴィ兄様の婚約者、プロイス王国のべランジェール姫がそうね。小姑が残れば、女主人として皇妃の采配は振るえない。まあ、そうなったら爵位の一つももらって独立するつもりだったけれど。


 国内貴族に嫁ぐなら、すべてが丸く収まるわ。皇族の体面、イングリットの未来、私の居場所……エック兄様の補佐にクラウスを置いて、彼の貢献に報いることも可能だった。


「あら、出戻りらしいわよ?」


 ふふっと笑って意地悪を口にする。


「おや、そのような発言をした愚者がおりましたね。もうお見かけしませんが?」


 あなたが片付けたではありませんか。笑顔でそう返すクラウスに、彼ならいいかしらと思う。嫁ぎ先として彼の名を挙げたのではないけれど、考えるほどに最適の選択だと思えた。


「帝国に忠誠を誓えるかしら」


「陞爵より、あなた様を得たいと……望みます」


 熱い視線を向けられ、頬が赤くなるのを感じる。お父様にしたら、今度は私を国内に残したい。ガブリエラ様も賛同したから、国内貴族から選べと言ったのでしょう。


 エック兄様もクラウスの為人(ひととなり)を知っているから、彼を選択した。人を見る目に自信があるルヴィ兄様も、あっさり支持する。フォルト兄様は……私が選んだならと認めてくれるわね。


「私に、あなた様を幸せにする権利をくださいませんか? どうか、この手をお選びください。ヴィクトーリア姫様」


 さっと立ち、優雅に膝を突いて愛を乞う。素敵ね、心が揺れてしまうわ。政略ではなく、けれど多少の打算と思惑が入った手に、そっと私の手のひらを重ねた。


「いいわ。私の夫になる栄誉を与えます。ただし、裏切ってはダメよ? ()()()()


 臣下として新しい夫として、認める。そのために彼の名を呼んだ。嬉しそうに微笑み、私の手の甲へ唇を寄せる。けれど触れるフリだけで離れた。礼儀作法も問題ない。増長して身勝手に振る舞うこともしない。態度で示された忠誠に、私は頷いて応えた。


「トリアと呼ぶことを許します」


「ありがとうございます。いつか、トリア様にお伝えしたいことがあるのです」


「聞ける日を楽しみにしているわ」


 今は伝えない。彼の判断を尊重し、穏やかに返した。触れ合う手を離す。その一瞬にクラウスは目を閉じた。まるで痛みを耐えるように。


 その感情が演技でないことを祈るわ、クラウス。私のためにも、あなたのためにも、ね。






*********************

【新作】

『年下夫は妻の訛りが愛おしい ~ただしヤンデレ風味~』


隣国との政略結婚、よくある話なのだが……結婚した王弟殿下は、まさかの十歳で年の差十二歳。

これって犯罪じゃねっか?! 嫁ぐために隣国の言葉を必死で学んだ王女アンネマリーは、自分が訛っていることを知らない。

そして訛った妻が好きすぎる若い夫が執着して、溺愛してくることも……ヤンデレ風味だけど。

ハッピーエンド確定

https://ncode.syosetu.com/n1635kj/


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― 新着の感想 ―
 なぜか途中からクラウスは老獪なお年寄りでイメージされていたから姫を娶る話になって孫にかなと思ったところに本人がで「えっ?!」ってなったわ。
そして全て丸く収まる。小人は鉄板の上で焼かれてます。シェフは猫作者さん。
素敵ですね!良い夫婦になれそうな人でこちら(読者)も安心!早くも溺愛? どっかで腐ってる(死んではない…多分!)元!夫モドキザマア!
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