表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化決定】妻ではなく他人ですわ  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/191

27.裏切り者を作ればいい

 毒見役に関しても、離宮での静養を命じた。彼が危篤であると振る舞う必要があり、申し訳ないけれど家族には泣いていただく。皇宮で殉職する可能性が高いため、家族は連絡を受け取っても会わせろと言わなかった。


「さて、ルヴィ兄様の影が集めた情報をくださる?」


 エック兄様の執務室で、こてりと首を傾げた。貴族の名がずらりと記されたリストに目を通す。応接用のソファーに腰掛けた私の正面で、お父様とガブリエラ様がイングリットに構っていた。たくさん寝たからか、ご機嫌のイングリットははしゃいだ声を出す。その度に二人の顔が笑みで崩れた。


「可愛いのぉ」


「マインラート、次は私の番だ!」


 抱っこする順番を奪い合う二人に、イングリットは丸い目を瞬く。


「この色が濁っていたら……想像だけでゾッとする」


 ガブリエラ様の発言に、お父様も頷いた。リヒター帝国の皇族にとって、瞳の青は大きな意味を持つ。父方母方関係なく、必ず同じ青を持って生まれてくる。この目の色が違えば、皇族と認めなかったでしょう。


「産まれたとき、真っ先に確認しましたわ」


「そうだろう。見事な帝国の青(リヒテン・ブルー)だ」


 リヒテンシュタットの頃から、リヒテンシュタインになっても、この青は受け継がれてきた。一族の優性遺伝だが、他家に出ると三世代目には現れない。まるで魔法のようだと称したのは、数代前の皇妃陛下だ。逆に呪いではないかと呟いたのは、不敬で首を落とされた当時の公爵だった。


 私が外へ嫁いでも、イングリットには引き継がれる。ただし、私の孫には現れないはずよ。本家に残った場合、何世代経ても問題なく青い瞳は遺伝した。出戻ったら、どうなるのかしらね。貴族がこぞって欲しがる青瞳で瞬き、渡された報告書も読んで頭に入れていく。


「ほとんどが帝国貴族でしたが、アルホフ王国とデーンズ王国にも報告が入りましたね。それから、プロイス王国もです」


 説明しながら、エック兄様は別の報告書も広げた。デーンズ王国はアディソン王国を支援していたから理解できる。軍事同盟に参加したアルホフ王国も納得できた。四つの王国が参加した同盟だが、ブリュート王国はすでに属国としたので、間諜を出すどころではない。


 プロイス王国は帝国の傘下だけれど……嫌な感じがするわね。同じく傘下に入り、支配される二カ国は大人しい。頭の中に地図を浮かべた。左側からデーンズ王国、接するアディソン王国、中央が我がリヒター帝国だ。地図の上、北に位置するブリュートとアルホフ。アディソンの下、領地を接する国がプロイスだった。


 動かなかった二つの王国は、リヒター帝国の右、東側に広がっている。とんとんと報告書を指先で叩き、私は考えを巡らした。どの国が敵で味方か。いえ、支配下に組み込めるのか……。


「アルホフ王国は……使えそうね」


「王は野心家だが、孫が生まれてから大人しくなった。使い道はあるぞ」


 ルヴィ兄様が賛同し、エック兄様も追従する。


「でしたら、搦手でいきましょうか。デーンズやアディソンと繋がりがあるのはわかっています。先日落としたブリュートの王が、ご丁寧に軍事同盟の資料を保管していましたからね」


 にっこり笑って差し出す資料を手に取った。


「楽しそうだ、私も一口噛ませてもらおうか」


 ガブリエラ様の参加表明に続き、イングリットを構うお父様も口を挟んだ。


「戦争をせぬなら、裏切りは切り札になるぞ」


 裏切り者を作り出し、内部から崩壊させろ。残酷な策をさらりと口にしたお父様から、ガブリエラ様がイングリットを奪う。


「お二人とも、イングリットは乳幼児ですわ。もっと優しく扱ってくださいませ」


 首が据わったばかりですのよ。叱る口調に、二人はなぜか緊張した面持ちで「わかった」と素直に返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>本家に残った場合、何世代経ても問題なく青い瞳は遺伝した。出戻ったら、どうなるのかしらね なにか口してるのが関係してるのかね? 例えば水は宮?内の湧き水を常飲してるとか・・・または生活空間内の物の影響…
ま、ましゃか……毒殺未遂は、国内含めた大掃除の為の自作自ぇ…=(´ཀ` )⇒グサッ いやでも三男二回も踏まれたしな。
 『第◯回 リヒター帝国裏切り者コンテスト』開催決定!   映えある第1位は! どぅるるるる… 
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ