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【書籍化決定】妻ではなく他人ですわ  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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26.解毒薬は口に苦し

 フォルト兄様はすぐに診察を受け、解毒薬を口に入れられる。ぐぉおお! すごい声で転がり、ソファーから落ちた姿を見て顔を引き攣らせた。あれ、すごく(にが)いと思うわ。


 飲まずに済んだことにほっとする兄達と顔を見合わせ、大きく息を吸い込んだ。


「きゃぁああ! お兄様ぁ!」


 通る声で叫ぶ。それからテーブルの上のカトラリーを落とし、わざと外へ音を聞かせた。これで勘違いして動いてくれるかしら。この部屋にいる給仕の侍従達は、しばらく拘束させてもらう予定よ。それで、さらに噂を煽るの。


「エック兄様、お願いね」


 小声で頼み、部屋にいた侍従達は離宮へ向かう。奥の宮にある離宮は、名前と違い同じ建物内にあった。かつて後宮だった頃、他国から略奪した姫君を閉じ込めたとか。なんとも酷い秘話がある曰くつきだった。姫君を監禁する宮だからか、繊細な彫刻が施された造りのいい場所だ。


 ご先祖様のやらかしが事実だと知らしめるように、出入り口が一つしかなかった。誰かを監禁するには最適ね。豪華な食事と綺麗な部屋を与え、臨時報酬も支払うから、ゆっくりしていて。その間に引っかかる獲物を釣らなくては。


「私も手伝おう……フォルト! しっかりしろぉ!」


 ぼそっと呟いたガブリエラ様が、予備動作なく叫んだ。その声は私より響いたのではないかしら。ばたばたと廊下の足音が聞こえ、顔を見合わせる。扉や壁が厚いから、あのくらい叫ばないとダメなのね。


「ルヴィ兄様、影は動かした?」


「もちろんだ。すでに半数が追跡に入っている」


「あら、そんなに……」


 思ったより間諜が多いようだ。皇族のプライベートな晩餐会の詳細を知りたい方が、こんなにいるなんて。次は招待してあげましょう。


「では……孫を見にいくか」


「お父様、さすがにまずいですわ。後でこっそりと連れて行きます」


 フォルト兄様に毒が盛られ、ガブリエラ様や私が悲鳴をあげる事態なのよ。のんびりとお父様が孫を見に行ったら、嘘がバレてしまう。がっかりした様子で肩を落としたお父様だが、すぐに拳を握って復活した。


「毒を使った馬鹿を、八つ裂きにしてくれる!」


「私の邪魔をなさるなら、イングリットには会わせませんよ」


「……なんでもない」


 お父様は本当に頭に血が昇りやすいんですから。顔立ちは似ていても、エック兄様に引き継がれなくてよかったわ。大人しくなったお父様に、肩を叩いて大笑いするガブリエラ様。この夫婦がうまくいく秘訣は、性格の違いにあるのだと思う。


「しかし……皇帝たる私がいる場所で、父上や母上もおられるというのに毒、だと? 愚かなことだ」


「まったくです。随分と舐められていますよ、兄上」


 ルヴィ兄様の低い怒りの声に、笑みのないエック兄様が同意する。このタイミングで動けるなんて、どう考えても国内貴族の仕業だもの。


「なあ、俺はもう起きてもいいか?」


「もう少し、毒にやられたフリをしてらして。フォルト兄様」


 すっかり毒を中和して元気なフォルト兄様は、不満そうな顔で「わかった」といい子の返事を寄越した。先ほどはまずい解毒薬を飲んでいましたし……屈んで頭を撫でれば嬉しそう。兄というより、弟みたいね。

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― 新着の感想 ―
毒味役が先に飲んだりしてるはずなのに盛られたってことは給仕のメイドか使用人かねえ
 良薬だしね。鼻つまんで飲むと多少はマシってホントかな笑〜
毒味した人に、小人ポーション飲ませて、小人は追跡中。 む!?まさか背後から捕まるとは!?小人、攻撃力無いので逆に捕まりました!!猫作者さんにSOS!!相棒よ、助けてくだされ(´;ω;`)上に持ち上げら…
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