13.一人足りない ***フリッツ&ハインツ
僕らは双子で生まれた。一般的には不吉らしい。ただ、リヒター帝国では双子の禁忌は存在せず、他国の問題だったようだ。さらに、その他国をリヒター帝国が吸収した。父上の説明を聞きながら、なるほどと呑み込んでいく。新しい知識を得るのは、どんな内容でも楽しい。
元皇族で宰相をする父と、筆頭公爵家出身の母。恵まれた環境に生まれたと思う。互いの感情を共有しない双子もいるらしいが、僕らは完全に繋がっていた。考えや気持ちはもちろん、愛情を向ける方角さえも一緒だ。
「将来、同じ人を好きになったらどうしようか」
「その時考えてもいいけど……二人で愛したらいいと思う」
互いにそうだなと納得した。外から見ると歪だろうが、僕らには当たり前だ。一つのものを得たら、二人で共有する。それが愛情でも人でも同じだった。奪い合うのは無駄だし、ここまで頭の中や心が繋がっていたら、同一人物と呼んでも差し支えない。
この言い分を理解してくれたのは、いとこ達だった。ジルヴィア姉様は「相手の気持ちを確認してからなら、いいと思うわよ」と返された。そうだよな、僕らが良くても相手が嫌がれば我慢するのが普通だ。
「私がお姉様を追うのと同じじゃない」
ゲアリンデは何でもないことのように受け止めた。絵に夢中のレオンハルトは、僕らをモデルに描きながら「たいていの願いはかなう立場だけど、無理やり捕らえたら邪魔するよ」と笑う。寛容というか……もしかしたら僕らと同じように届かないものに手を伸ばしているのかも。
一緒に本を読んでいるとき、フリッツの得た知識を僕も得ているのだと気づいた。ハインツが学んだ分野を、まだ教わっていない僕が覚えている。答え合わせをして、すぐに手分けして学ぶ方法を父に提案した。驚いた顔をした後「効率的で素晴らしい方法です」と褒められる。
将来は父上のような宰相もいいが、外交官も悪くないと二人で展望を膨らませた。外交をしながら、内政にも干渉できる。僕らの最高の使い方は、ジルヴィア姉様が決めてくれるだろう。皇帝の座は一つしかないから、欲しいと思わない。二人で座れるなら別だけど。
不遜に当たる発言らしいけど、ジルヴィア姉様は笑った。二人で座るのは無理ね、と告げながら。聞いたとき、二人同時に「敵わないな」と思ったんだ。生まれたときから決まっている運命はない、神殿ではそう教わるけれど……決まっている人もいるはず。
皇帝の養女だからではなく、稀代の女傑の実子だからでもない。ジルヴィア姉様は、女帝になるために生まれた。僕らの頂点に立って導き、道を示してくれる人だ。補佐して雑務を片付けるために、僕らの便利な能力があるのなら……使うのが当然だろう?
「ジルヴィア姉様と結婚できないんだよねぇ」
「残念だけど……近すぎるってさ」
ぼやきながら、いずれもっと愛せる人が見つかることを祈る。
「明日は神殿だっけ?」
「うん。大叔父様が呼んでるってさ」
誰かの目があれば、父のように丁寧な口調を心掛ける。だが二人きりになると、フォルト叔父上の口調を真似した。なんだか、どきどきするんだ。二年前から、剣術の指導をお願いしていた。さすがにこれは体が覚える技術だから、頭で理解しても体がついていかない。二人で厳しい指導に食らいついた。
大叔父のウルリヒ大神官の望みは知っている。僕らのどちらかが、神殿に入っていずれ後継となること。でも外交と内政も興味があるし……いっそ三つ子だったら、できたかも。そう思っていたら、父上と母上はもう一人産むつもりと聞いた。
男の子だったら、神殿預かりにしてもらおう。にやりと笑って、僕らは今日も策略ごっこを楽しんだ。




