200.力づくのお人形仕立て
ふんわり広がるスカートでお姫様に仕立てる! ガブリエラ様に事前情報を聞いていたけれど、本当にふわっふわに仕上げられていた。背が高いから、ビスチェの腰部分が高い位置にある。ふわりと広がるスカートの中に骨で作ったクリノリンを入れたのかしら?
歩く姿を見て、違うと気づいた。あれ……大量のパニエじゃない? 本体の足にたどり着くまで十数枚のパニエを捲らないと……驚きに目を見開いた私の隣で「凄いわ、重いでしょうに」とコルネリアが呟いた。そうよね、相当重いわ。パニエ自体は軽い布で作られるけれど、膨らますためにあんなに入れたら……。
ふらつくことなく歩けるのは、アデリナだからよ。マルグリット、コルネリア、私、全員が傾くわ。人一人抱えて歩くくらいの重量があるはず。
「見事だろう? あの子は綺麗な人形になるためなら、あのくらいは何でもないと言い切ったぞ」
ガブリエラ様が得意げに胸を張り、お父様は「ほぉ」と感心した声を上げる。エック兄様はきょとんとしていたが、コルネリアがすぐに説明を始めた。小声だけれど、あちこちで気づいた淑女から称賛の言葉が聞こえる。
パニエの上に白いスカート、これは刺繍ではなく織模様が美しい絹を使っている。その上に重ねる形で、柔らかな絹三色が彩りを添えた。見事だわ。ビスチェ部分も刺繍を減らし、代わりに織模様が……違うみたい?
じっくり見たが、遠目では判断できない。ガブリエラ様に伝えると、当然だと微笑んで頷いた。
「よく気付いたな、織模様に見えるすべてが刺繍だ」
布に刺繍をしたのではなく、刺繍で出来たベルト帯のような素材でビスチェを作った。これまた重さが恐ろしい。背中をリボンで編みこんでいるのは、サイズ調整のためね。華やかなアデリナは、うっすらと口元に笑みを浮かべていた。
この後、絶対に追いかけて褒めなくちゃ! 凄く素敵だもの! フォルト兄様はぎこちなさもなく、慣れた様子でエスコートしている。ダンスも武術の足捌きと重ねて覚えたから、副官のハイノにでも指導されたかも。
大神官を従える叔父様の問いへ誓いを立て、神々の像を回る。見事な結婚式を終えて、アデリナはこちらに真っすぐ向かってきた。
「どうだ? お人形みたいだったか? トリアほどじゃないが、綺麗に仕上がったと思う。ガブリエラ様もありがとう」
捲し立てた彼女に、マルグリットやコルネリアが順番に祝福と褒め言葉を贈る。嬉しそうに頬を赤くして頷く姿は、義姉というより末妹っぽい。可愛い彼女の頬に手を当てて、とても素敵よと告げた。
「やはり、トリアの褒め言葉は格別だな。今日も綺麗だ」
流れるように私も褒めるアデリナは、ある意味フォルト兄様にそっくり。遠回しな表現は使わず、胸に刺さる真っすぐな言葉を使う。
「私の褒め言葉より喜んでいませんか?」
「仕方ないわ。だって、今のクラウスは私なんだもの」
一人称が俺じゃないなら、仮面を被っているようなものでしょう? 突き放すように告げたら、すっと腰に腕を回して抱き寄せられた。距離を詰めて耳元で囁く。
「今夜は我慢するつもりだったんだが? 俺を煽ると、後悔しますよ?」
「後悔させると言い切ってご覧なさい」
ぺちんと鼻先を指で弾く。まだまだよ、と突き放したつもりなのに彼は嬉しそう。ふと気づけば首まで真っ赤になったコルネリアが「煽る、後悔」と呟いているし、マルグリットはそっぽを向いていた。さりげなくルヴィ兄様と組んだ腕を外そうとしているから、照れているのは間違いない。
人前でやらかしてしまったわ。そう思ったけれど、今くらい許されると開き直ることにした。だって新婚なのよ? 浮かれてイチャつくのは権利でしょ?




