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【書籍化決定】妻ではなく他人ですわ  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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18.ゆっくり削いであげる

 国境へ向かったフォルト兄様から手紙が届いたと聞き、ルヴィ兄様の執務室へ向かった。皇帝陛下の執務室は、当然ながら護衛の騎士に守られている。王命が出ていたのか、お伺いを立てる前に扉は開かれた。彫刻の施された重厚な扉をくぐれば、宰相であるエック兄様もいる。


「ああ、来たね。トリア」


 微笑んだルヴィ兄様が手紙を差し出す。まだ封が切られていなかった。封蝋くらい持っていけばいいのに、フォルト兄様は使わない。糊で張り合わせた部分に署名を重ねる横着さは、逆にフォルト兄様らしいわ。皇族や大公には相応しくないけれど。


「こちらですのね……解読は、私が?」


「ええ、お願いできれば助かります。トリアが一番早く確実に読み解けますから」


 エック兄様は柔らかな口調で、私に丸投げした。口がお上手ですこと。知ってますのよ、エック兄様の方が早く解読なさるのでしょう? でもフォルト兄様の手紙を一番受け取るのは私だから、だいぶ慣れてきた。


 ナイフで封を切り、中の手紙を取り出した。


 フォルト兄様の手紙は、いつもながら文字が汚い。崩れているとか、そんなレベルではなかった。ほぼ暗号に近い。解読することに慣れた家族でも、すらすらと読むのは無理だった。数箇所、首を傾げながらも目を通す。


 前後の繋がりを考えて言葉を当て嵌めた。手前の紙に書き直した内容は、夫を騙った不遜な詐欺師に関する報告ね。フォルト兄様はきちんと約束を守ってくれた。無駄なプライドをへし折り、殺さずに罪人の塔へ閉じ込めている。


「フォルト兄様は先に戻られるそうよ」


「では、次は僕の番ですね。フォルトには負けられません」


 エック兄様はにやりと笑う。悪いお顔なのに、魅力的だわ。母親が違う為か、私達四人は全然似ていなかった。王侯貴族である以上、顔が整っているのは最低条件だ。


 凛々しくきりりとした目元が印象的なルートヴィッヒ兄様は、先代皇妃様の雰囲気にそっくり。エッケハルト兄様のお顔は、お父様に似ていた。優しげで柔らかな雰囲気なのに、口を開けば辛辣だ。末のフォルクハルト兄様は、女騎士だった側妃様譲りの豪快さと、頼り甲斐のある体躯が特徴だった。


 華やかな私と並んでも、三人が兄には見えない。肌はもちろん髪色さえバラバラで、瞳の青だけが共通点なの。皇妃様が優れたお方で、誰の子でも関係なく豊かな生活を送らせてもらった。学びたいと口にすれば、優秀な教師が得られる。恵まれた環境で、それぞれに才能を特化させた。


 フォルト兄様は筋肉バカだけれど、戦の機を読むことに長けている。その点で失敗する心配はなかった。ただ……直情的なので、モーリスを殺す心配は尽きなかったけれど。


「アディソン王国の手足を、ゆっくり削いでいくの。指先からじわじわと……気づいた時には取り返しがつかないほどに」


 フォルト兄様は敵の……そうね、親指くらいは削いだ。モーリスの価値はその程度だわ。次はエック兄様が爪先を奪う。作戦の絵図は、すべてこの手にあるわ。あとはパーツが揃うのを待つばかり。


「ご歓談中失礼致します。緊急のご連絡です」


 母の専属執事だったコンラートだ。いまは私の執事を務める彼の手に、一通の手紙が握られていた。パーツが、揃い始めたかしら?

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滅びの音が聞こえてくるよ。小人と猫作者さんも情報収集します(`・ω・´)ゞ王国の滅亡までのカウントダウン!!猫作者さんの尻尾ふりふりで映像と共に御届けします。途中、筋肉で破壊力抜群の閣下のマッスルポー…
手足削いで~♡金やすりで四肢削り取って♡って団扇を振っておこ!わくわく! 夫じゃない人、異母兄どころか誰にも言わず一人で来たから暫く行方不明が発覚しないんですね(笑) 神殿からのお知らせかなぁ。 そ…
皇族の姫が他国とはいえ神殿で盛大に式をあげたにも関わらず婚姻もせず、子供だけ作りましたとか、神殿はおろか神をも恐れぬ所業だよなぁ。 しかもそれを主導したのが「アディソンの国王陛下だ」とかもう終わってる…
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