165.不遜の塔が打たれた ***SIDEウルリヒ
昨日は体調不良ですみません。今日、まとめて2話更新しますペコリ(o_ _)o))
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デーンズ王国の塔を、クレーベ公爵が壊させた。その話は、神殿にも報告が上がっている。ただ、壊したのは民であり、完全に倒壊した状態ではなかった。完成間近だった塔は神殿より高く、その上部を壊して低くしただけ。中の螺旋階段は残っており、建設途中のような姿を晒していた。
神殿としては、高さを低くしたことで一度矛を収めている。あれはクレーベ公爵の母君である前王妹殿下の根回しだろう。そう書かれた過去の報告書を引っ張り出したのは、今朝の報告があったからだ。
――デーンズ王城内に立つ『不遜の塔』に落雷があった、と。
ケガ人はおらず、空は晴天だった。白い雲が一つ二つ浮かんでいたものの、通常は落雷の心配をする天気ではない。その報告に添えられていたのは、デーンズの大神官の言葉だった。
――これは神々の怒りである。我らは伏して詫びねばならない。守護神に祈りを捧げ、許しを乞うのだ。デーンズ王国の愚かな行いが許されるために、まだ祈りが足りない。
デーンズ王国内のあちこちで、民による祈りが捧げられた。神殿への寄進が増加し、祈りに訪れた人は神殿に入れず庭や門前で跪いているらしい。新しく王位に就いたクレーベ公爵、今はデーンズ王ナータンと名乗っているが、彼による祭事が計画された。
王位を確定させるために、この災害を利用するつもりのようだ。利用させないと締め括られた大神官の親書を眺め、しばらく考え込む。あの塔は邪魔だった。近いうちに理由をつけて壊すつもりだったが、落雷とはまさしく天の采配だ。
最高の形で邪魔な塔は消え去った。神々の権威を守るには、神殿より高い建物は許されない。このリヒター帝国の宮殿でさえ、基本的に平屋造りが主体だった。城門の両側にある砦も、神殿よりわずかに低い。
皇帝であっても、神ではない。驕って神を見下ろすなかれ。これはリヒテンシュタット帝国時代から続く慣習であり、信念だった。一つの帝国が七つの王国と分かれた後も、このルールだけは守られてきたのだ。先代デーンズ王が愚行を為したが、滅ぼされて塔が瓦解した。
神の存在を知るに、これ以上ない好材料だ。
「いかがなさいますか? ウルリヒ大神官様」
「そうですね。帝国の婚約式まで時間もありますので、一度デーンズ王国に集って祈りを捧げる儀式が必要かと考えておりました」
顔色を窺うように尋ねるもう一人の大神官へ、穏やかな笑みと口調で答える。顔色を明るくした彼は「素晴らしいお考えです」と賛同した。他の大神官も入れ替えが終わった。今の神殿組織に、俺の考えを遮る阿呆はいない。
「では皆様に通達を出しましょう。きっと賛同してくださるはずです。すべては神々の御心のままに」
膝をついて簡単な祈りを捧げ、神殿の祈りの間へ向かう。デーンズ王国の思い上がった者らに裁きを、と祈ったお礼をしなくては。長い裾を捌いて歩く俺の後ろに、数人の神官が従う。民に開放される祈りの間で、歓迎の声に微笑んで手を振った。
神々の像に一柱ずつ祈りと感謝を捧げる。青空の中、雷を落としたのは断罪の神か、鳥や空を庇護する神か。はたまた死と再生を司る神かもしれない。神々の御威光が遍く世界を覆い尽くすように。
リヒター帝国の前皇弟であり、大神官でもあるウルリヒ・グナイゼナウの名において。再び唯一の帝国と七柱の神々による支配を、この大陸に蘇らせる。その決意を、祈りとともに捧げた。




