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【書籍化決定】妻ではなく他人ですわ  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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121.思わぬ拾い物だ ***ガブリエラ

 思わぬ拾い物だ! 見合うイエンチュの男達を(ことごと)く倒したというのも、大げさな表現ではない。全盛期の私に及ばぬまでも、立派な実力の持ち主だった。これでは夫が見つからず、苦労したであろう。イエンチュの女戦士は、誰しも己に勝てる男を求める。


 回転する動きで右手の刀で攻撃を受け、左の刀を突き出した。長い槍の中程を握ったアデリナに十分届く。癖であろうが、槍の利点を殺す握り方だった。彼女の師匠ベンハミンがこの持ち方をするのは、横に薙ぎ払う動きを得意とするためだ。三叉槍でなければ、問題なかったが……。


 弱点を見極めて、彼女の鼻先に刃を突き付ける。あと指二本分押せば、刺さる位置で止めた。


「く、参りましたっ!」


 三叉槍は厄介だが、ある意味、ただの槍で攻撃されたほうがやりにくい。というのも、突き刺すことに特化した武器だからだ。今回は得意な武器を使うよう伝えたため、鋭い刃はそのままだった。槍の突き刺す動きは直線的になる。いっそ大きな刀の付いた槍のほうが、動きのパターンは多いほどだ。


 単調な動きでも勝てるほど、彼女の実力は抜きん出ていた。これならば、フォルトと戦わせてもいい勝負になるはずだ。戦闘に特化したフォルトは、よく言えば強いが……脳まで筋肉に覆われている。あれをフォローする賢い女を求めたが、なかなか相性までは読み切れなかった。


 アデリナならば、隣に立って戦うことができる。トリアが戻ってきた今なら、フォルトに賢い妻は不要なのだ。副官ハイノに将軍職をくれて、補佐させれば十分だった。平和な世が続くなら、フォルトの憂さ晴らしを手伝える女性のほうが好ましいだろう。


()()()()、夫候補に会わせてやろう。しばらく滞在するがよい」


 驚いた顔で固まったアデリナに首を傾げ、ああ……と思い至る。私が名を呼んだからか。イエンチュ王国での懐かしい習慣を、踏襲(とうしゅう)していたようだ。特に意識してのことではないが、彼女は認められたと感激している様子だった。


「っ、あなた様の御名を口にする栄誉を……」


「ああ、構わぬ。なかなか楽しい打ち合いであった」


 殺し合いでも決闘でもない。だから遺恨も残さぬ。明言したことで、アデリナは口角を持ち上げてにやりと笑った。皇妃にでもなるなら問題だが、フォルトの嫁なら構わぬか。トリアが良く面倒を見るだろう。あの子はフォルトのような者を惹きつける。


「フォルトに戻るよう伝令を出せ。あて先はハイノだ」


「承知いたしました」


 騎士達が動き出し、盛大な拍手に見送られて歩き出す。アデリナは武器を当然のように担いでついてきた。他国の武人が帝国の砦で武器を持つことは、保安面から禁止してきた。問う眼差しに、首を横に振った。アデリナならば構わない。そう示して、砦の内側にある居住区へ向かった。


「この部屋を使うがよい。私の部屋はその先だ」


 信用していると示すため、自室の位置も伝えた。ぐるりと部屋を見回し、不思議そうにクローゼットの中を覗く。三叉槍をベッド脇に立てかけ、手を離した。アデリナも私への信用を示そうとしている。イエンチュ人なら当たり前の習慣が、どこか擽ったく感じた。


 それだけ長い間、実家に顔を出していない。イエンチュ人と接する機会も少なかった。落ち着いたら、夫マインラートを連れて実家に顔を出すのも悪くない。軟弱だが、私がついていれば殺されることもあるまい。


「ガブリエラ様、これは……どうやって使う、のだ?」


 ひらひらと透ける室内着を見つけ、心底不思議そうなアデリナが首を傾げた。何も知らぬ幼子のようだ。身を守ることもできない透けた服など、彼女には理解不能だろう。やはり実を求めるフォルトと相性がよさそうだ。


「夫と肌を合わせる際に着るものじゃ」


「……このように、無防備な……」


 ふふっ、堪えようとしたが我慢できずに笑ってしまった。この国に来たばかりの私と、まったく同じ反応をする! 存外、よい妃になるやもしれんぞ?








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― 新着の感想 ―
少し前に語られたハイノの夢が... 所詮幻だったのですね。 部下に席をねだられるどころか、きっと引退するときに「引退しないで下さい」と引き留められる未来が見える。 ※フォルトとアデリナの夫婦に使えるな…
ハイノくん、お仕事増えるよ~w
元帥閣下夫妻にこれでもかと振り回され甘い物を嗜む余裕すらない副官ハイノ君の未来が見えたのは私だけじゃないはずだwwwww
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