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【書籍化決定】妻ではなく他人ですわ  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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12.自白した愚か者を一匹駆除する

「アルムガルト伯爵でしたのね、まだ……ふふっ、そのように騒ぐと、周囲の注目を浴びますわよ」


 私は構わない。どころか、もっと衆目を集めてほしかった。でも彼にとっては、最悪の結果を招くことになるわ。だから一度は忠告してあげるの。


「失礼ですぞ! たとえ()()()()としても、元皇族に過ぎません!!」


 ああ、確定させてしまった。愚かな男だわ、あの程度の挑発に乗るなんて。私は微笑んだまま、反論せずに待った。周囲の貴族が動かないはずないもの。


「……お話中に失礼致します。お久しぶりでございます、姫様。先ほどの()()()()とは、何のお話でしょうか」


「久しぶりね、ローヴァイン侯爵。情報通のあなたが()()()()なんて、珍しいこともあるわね」


 エック兄様の幼馴染みであり、学友だった青年は優雅に一礼する。皇族に対する最敬礼を行い、私を皇族として扱った。これが正しい反応なの。我がリヒター帝国の貴族に、こんな裏切り者が紛れていたなんてね。


「おや、姫様はこのクラウスが()()()()と?」


 すべて知った上で近づいてきたようね。にっこりと邪気のない笑みを浮かべ、私のお遊びに付き合うと示した。クラウスは皇族派の重鎮だから、安心して任せられるわ。


「ええ、そうみたい。私も知らない情報を、アルムガルト伯爵はご存知だそうよ」


 扇をぱたんと畳む。ほっとした表情の貴族が何人か、胸を撫で下ろした。私が持つカメリアの扇は、過去にも何回か活躍してきた。罪を犯した者を断罪する際、必ず私の口元を隠してきたの。


 代々の皇妃や皇女が受け継いできた伝統よ。公然と言いふらしはしないが、我が国の貴族はほぼ把握しているはず。ならば、知らずに私に突っ掛かり、情報通のローヴァイン侯爵も知らない話を口にした彼は……?


 ここまで証拠が揃えば、冤罪ではない。


「ほぅ、貴殿は確か……アディソン王国からの婿入りでしたか」


 やはりクラウスも知っていたわね。


「な、なにを!」


「だって、私が出戻りだと貶めたでしょう? そんな話、我が国でするバカはいないわ。だって、私は()()ですもの」


 政略結婚であり、帝国で結婚式もした。貴族なら私が隣国に嫁いだ話は知っている。でもね、私が戻ってきた話はまだ広まっていないの。故意に情報を止めた。私が帝国に戻って数日で、どうしてあなたが知っているの?


「……っ!」


 ようやく失言に気づいたようだけれど、かなり遅いわ。もっと早く、私が疑問を呈した時点で「勘違いでした」と引く潔さがなければ、諜報役は務まらないわ。察しの良さは必須だもの。


 畳んだカメリアの扇で、アルムガルト伯爵を指し示した。


「捕らえて。皇族に対する不敬と叛逆の嫌疑よ」


 広間の中にいた数人の騎士が動く。と同時に、腕に覚えのある貴族が数人、私を守るように間に入った。人の壁に守られ、私は隠すことなく笑みを浮かべる。


 これで残った鼠は身動きが取れなくなる。疑心暗鬼になった貴族は、互いを見張り合うわ。その間に、他国への根回しをしましょう。

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― 新着の感想 ―
 Googleのディスカバーから参りました。  宮廷政治を拝見しました。
>と同時に、腕に覚えのある貴族が数人、私を守るように間に入った。 ここが素敵ですね。王家と貴族の信頼関係、護衛騎士に任せず自分が動いて敬意を表す貴族たち。 この描写で王家の威光が実のあるものに感じら…
普通は里帰りついでの外交で一時的に帰国しているとしか思わないよね?なのに嬉々として蔑みに来るとかやはり目的はこの国の王族の評判を落とす事なのかな? 他にもネズミさんはいるのかな?
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