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童話シリーズ

ペンギンのペン太とライオンの王子レオ

むかしむかし、氷の国にペン太という小さなペンギンがいました。ペン太の口癖は「王様になるんだ!」でした。朝起きても、魚を食べるときも、雪の上を滑るときも、「王様になるんだ!」といつも言っていました。


「どうして王様になりたいの?」と、お母さんペンギンが聞くと、ペン太は胸を張って言いました。

「王様になれば、欲しいおもちゃが貰えるし、美味しいご飯が食べ放題だからさ!」


ある日、氷の国にライオンの使者がやってきました。


「ライオンの国の王様が、ペンギンたちの王様と会いたいとおっしゃっている。ペンギンの国から王様を連れていくようにと言われたのだが……」


ペンギンの国には王様はいませんでした。ペン太はすぐに飛び出しました。

「ボクを連れて行って! ボクは王様になるんだ!」


ライオンの使者は、ちょっと困った顔をしましたが、王様がいないならと、ペン太を連れて行くことにしました。


こうしてペン太はライオンの国へ旅立ちました。




ライオンの国に着くと、そこには立派な王宮がありました。中にはたくさんのライオンがいて、ライオンの王様の隣に、小さなライオンの王子レオがいました。


「お前がペンギンの国から来たペン太か?」


「そうだよ! ボクは王様になるんだ!」


ライオンの王様は、ペン太の元気な様子を見て笑いました。

「では、一度レオと入れ替わってみるか?」


「えっ、いいの?」


「レオも少し王子の役目に飽きていたようだ。たまには違う生活を経験するのもよかろう」


こうして、ペン太はライオンの王子の役目を、レオはペンギンの暮らしを体験することになりました。




最初は大喜びのペン太。立派な王子の部屋に案内され、豪華な机の前に座らされました。


「さて、今日は国の歴史について学びます」


「えっ、勉強?」


「王子として、国のことを知らなくてはなりません」


次々と本が運ばれてきました。厚い本にびっしり書かれた難しい文字。ペン太はすぐに眠くなってしまいました。


「もう勉強はいいや! おもちゃで遊んだり、他のことがしたい!」


「ふーむ、では今度は外交の練習です」


ペン太は広い会議室に通されました。そこでは、たくさんのライオンや他の動物たちが集まり、真剣な表情で話し合いをしていました。


「ペン太王子、隣国のゾウの王様が来られました。礼儀正しく対応してください」


「えっと……こんにちは!」


「それでは失礼にあたります。正しくは、『ゾウの王様、遠いところをお越しいただきありがとうございます』と申し上げます」


「えぇっ、そんなの覚えられないよ!」


ペン太は慌ててしまい、うまく話すことができませんでした。


さらに、夕方になると舞踏会が開かれました。ライオンの王子は、お客さんと楽しく話し、みんなの輪の中心にならなければなりません。


「よし、みんなボクの言うことを聞いてね!」


そう言っても、誰もペン太の言葉に従いません。むしろ、ペン太は一人ぽつんと取り残されてしまいました。


「なんでみんなボクの言うことを聞かないの……?」


「王子というのは、ただ偉そうにするのではなく、みんなとよく話し、相手を尊重することが大切なのです」


「そんなの大変すぎるよ……」




そのころ、氷の国で暮らしていたレオ王子も大変でした。


ペンギンたちは毎日仲間と助け合いながら暮らしています。でも、レオは氷の海で魚が上手くとれず、一人でいることが多くなりました。


「王子さま、みんなで一緒に魚をとりに行こう!」


「いや、ボクは一人でやる」


冷たい氷の海で魚をとるのは難しく、レオは何もとれませんでした。


「みんなでやればうまくいくのに……」


そう言われても、レオは氷の海に、はいるのが苦手でした。


「一人じゃ何にも出来ないんだな……」


そして二人は同じことを思いました。


「やっぱり元の場所に戻りたい!」


ペン太とレオは王様にお願いして、元の生活に戻ることになりました。


「ペン太、お前は王様になりたかったのではないか?」


「うん……でも、王様になるのってすごく大変なんだね」


ライオンの王様は笑って言いました。


「本当の王様は、賢くなるために学び、人と上手に付き合う者こそがふさわしいのだ」


ペン太はしばらく考えて、それから元気に言いました。


「じゃあ、ボクは王様になるのはやめる!」


こうしてペン太は氷の国に帰り、もう「王様になるんだ!」とは言わなくなりましたが、「宇宙飛行士になるんだ!」が口癖になりました。


めでたし、めでたし。



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