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ごめんなさい、許してくれないのは解っていたけど最後に謝ります。

作者: うずらの卵。

「余命3ヶ月です」

医師から告げられた突然の余命宣告。

結婚して五年、子供も四歳になった。

優しい夫と可愛い娘に囲まれてとても幸せだった。

でも、ずっと心に残された後悔の思い。

私は高校の時にクラスメイトを苛めていた。

そのクラスメイトの歩実は見た目は地味だけど、頭は良かったのだ。

私も勉強は出来たけど、どうしても歩実にだけは叶わなかった。家庭教師を親に頼んで付けて貰ったりしたけど、いつも二番目だった。

クラスでもリーダー的存在だった私はクラスメイトを味方に付けて歩実を苛めのターゲットにした。

そして、段々歩実を追い詰め登校拒否にまで追い込んだのだ。

その時の私にクラスメイトは逆らえない位怖い存在だったのだ。

そして、私は遂に勉強で一位の座を手にした。

しかし、あるクラスメイトから歩実の噂を聞いたのだ。

歩実の家は母子家庭で家庭を支える為にバイトをしながら勉強をしていたと。

それを聞いた私は、ショックを受けた。

私の家は裕福で家庭教師を付けて貰い、家にはお手伝いさんがいて恵まれた家庭だったのに対し、歩実の家は貧乏でバイトをしながら勉強をして一位を取っていたのだ。

でも、今更どうする事も出来ない。

もうすぐ卒業だったから。

そのまま、歩実は学校に来ないまま卒業式を迎えた。

そして、私は大学に進学して大学を卒業と共に親に紹介された男と結婚した。

幸せだったが、心の何処かで歩実の事が忘れられないでいたのだ。

そして、具合が悪くなり病院に行き検査をすると、もう手遅れの癌だったのだ。そして余命宣告。入院を余儀なくされたが入院をする前にしたい事が合った。

私は死ぬ前に歩実に謝りたいと思った。

自己満足と言われればその通りだけど、せめて一言謝りたかった。

そして、高校の時の友人に歩実の居場所を聞き出し、歩実の家に向かった。

電車で一時間程で駅を降り、徒歩で15分の所の平屋の一軒家に辿り着いた。

インターホンを押す指が震えたが勇気を出して押した。家の中から足音が聞こえ女性が出て来た。

私は恐る恐る「歩実?」と聞くとその女性は、

私を見て驚きの表情をした。そして「何しに来たの?」と素っ気なく聞くので私は「ごめんなさい、謝りたくて」と言った。

すると歩実は「今更何なの、あなたのせいで私の人生は滅茶苦茶にされたの、帰ってよ」と扉を閉めようとした。

私は「ずっと後悔していたの、ただ最後に謝りたくて、私もうすぐ死ぬから」

「死ぬって言ったの?私はあなたに苛められて何度死のうと思ったか、病気か何か知らないけど、死ぬ前だから謝りに来たとかもう遅いから、私は一生あなたの事を許さないから」と言い放ち扉をバタンと閉めた。

私は扉に向かってお辞儀をして歩実の家を後にした。

許して貰えなくて当然だと思った。

どれだけ酷い事をして来たのか、歩実の人生を自分の我が儘で台無しにしたのだから。

私は駅へ向かい歩き出した、すると空から雨がポツポツ降って来たのだ。傘なんか持って来ていなかった。

急いで駅に向かおうと思ったら、後ろから傘が差し出されたのだ。

振り向くとそこには歩実が立っていた。

「これ使って、傘は返さなくていいから」と言い走り去って行った。

私は歩実が見えなくなるまで見送った。

その後入院をして、3ヶ月後夫と娘に見守られ私の人生に幕を閉じた。

「ごめんなさい」




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