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恋愛短編集  作者: すりむ
2/2

ポニーテール

目の前を揺れるポニーテールに目が離せない。


今はテスト返しの時間で、呼ばれたクラスメイトが一喜一憂していたり、はたまた緊張しながら祈るように答案用紙を待っている場面。


だけれど、目の前のポニーテールは緊張なんか目に見えないほど横にゆらゆらしている。

とかいう俺も、ぼーとしながら緊張感なく催眠術にでもかけられているように目の前の5円玉・・・いや違う違う、ポニーテールを眺めていた


するといきなり目の前のポニーテールが姿を消した。


大きくパッチリとした目に小ぶりな鼻、きめの細かく美しい肌を携えた顔が急にこちらを見ていたのである。


驚いた俺は、催眠から解かれたように、体を背けて目を大きく開けた。


「ねぇ!君はテストどうだった?」


なんの前触れもなく質問を投げられた。


「あ・・・あぁ、多分平均くらいだと思うぞ」


「そうかぁ・・・私ね!今回自信あるんだ!答案全部埋めれたし!」


「適当に埋めたんじゃないだろうな?」


「そ、そんな事ないよぉ〜?」


嘘だろう。


わからないところをそれっぽく埋めて何となくできた気になっているのだと思う


「でも、答案を全部埋めるのは大事だと思うぞ?速攻で諦めて机に突っ伏すよりかね」


「えへへ〜、やっぱりそうだよね〜。成績表に意欲ありってことで加点してくれたら嬉しいなぁ〜」


「期待すんなよ・・・それで成績悪かったら落ち込むぞ」


周りの生徒は答案を見せ合ってキャッキャしている人もいれば、頭を抱えて落ち込み、それを慰めるように肩をポンポンと叩いているやつもいる。反応は十人十色だ。

あ、今慰めてたやつがドヤ顔で答案用紙を見せてぎゃあぎゃあ言い合ってる。


「そろそろ俺らの番だな。ちょっと緊張してきた・・・」


「あれれぇ〜?意外と自信ないのかにゃぁ〜?」


「自信はねぇよ?だけど、おまえよりはいい点数取れるんじゃないかなぁ?」


「あれれ?喧嘩?買うよ?いいの?そんな余裕ぶっこいてて?」


「しょうがないだろ?だって余裕なんだから」


「はい買いましたぁ!その喧嘩!そこまで言うなら勝負だね!負けた方が勝った方のいうことを聞く!」


「ふんっ、上等だ!」


周りも結構喋り声があるので、大きめの声で喋っていた我々の声は意外と目立っていない


そしてついに、俺らの順番が回ってきた。


名前順で席が割り振られているので、苗字の頭文字が一緒の俺らは前後に座っている。


「じゃあ、行ってくるっ!!」


めちゃめちゃ緊張しているなあいつ・・・


今回の勝負のルールとして、受け取った瞬間は点数を見ず、せーので答案を開くことにした。


先生からもらった答案をすぐに折り、見えないようにしてから席に戻ってくる。


「さぁ、次は俺の番だな」


先に戻ってきた彼女は、ピシッと閉じた答案を祈るように、はたまた威嚇するようにじっと見ていた。


「そんなに眺めても点数は変わんないぞ?」


「わ、わかってるけど・・・でも見ちゃう・・・」


そんなことを言う彼女を見るとふっと笑ってしまう。


「じゃ、行ってくるな」


「行ってらっしゃい・・・」


答案から目を逸らさずに返事をしてきた。

本当に自信あるのか?あいつ・・・

何だかポニーテールにも力がない気がする。


先生の元へ行き、答案を見ないようにさっと折りたたむ。

ふっと先生の顔を見ると笑顔でこちらを見ていた。


あ、これ勝ったな。


彼女は答案を見ないように必死だったようで先生の顔を見ずにすぐにこちらに戻ってきた。


だけど俺は見ていたのだ、彼女が答案を返却した瞬間の先生の顔を。


これでもかと言うほどの真顔を!


ここまで表情が違うのは、おそらく点数が表情に出ていたのだろう。

笑顔がそこそこ点数の高い生徒に送られるのであれば真顔は・・・


「おかえり!さぁ、勝負!」


気合が入っている。


多分勝ってしまうなと思っている俺はちょっと申し訳ない気持ちになった


もしかしたら、予想より俺の点数が高くて、先生は笑顔で答案を返し、彼女の点数は平均くらいで特に感情も持たずにテストを返したのかもしれない。

平均行ってたら上等じゃないか。そしたら煽らず素直に褒めてやろう。もしかしたら嫌味に聞こえちゃうかもしれないけれど。


「よし・・・いくぞ・・・」


「「せ〜のっ!!!」」


ババンという効果音でもしそうな感じで答案用紙を机に広げた。


「「・・・へ?」」


点数を見比べてお互い間抜けな声を出す。


俺の点数は92点。結構高かった。


だけど問題は・・・


「な、なんでよぉおおお!!!」


彼女の点数は“15“と書かれていた。


・・・


いやそりゃ先生も真顔になるわ!!!

ならねえほうがおかしいわ!


俺は我慢できないほどの笑いが込み上げてきた


「ふふ・・・ははは・・あはははははは!!!!どっからそんなに自信湧いてたんだよ!解答中に大体わかるだろ!どうしてそうなんだよ!」


「わ、笑うなぁ!!!というか!そっちは点数高すぎでしょ!?私を騙したなぁ!!!」


「あはは!騙すつもりじゃなかったんだよ!でも流石にその点数見たら謝りたくなってきたわ!ごめんな!!あはははははは!!!」


「きぃいい!!ムカつくぅ!!」


「はぁ・・・腹いてぇ・・・、さて、俺の勝ちだな?」


「ぐっ・・・私の・・・負け・・・です・・・」


よほど悔しかったのか目をきゅっと閉じている。


「さぁ・・・何をお願いしようかなぁ?」


「ま、まさか!えっちなことはだめだよ!?」


「そんなお願いしねぇよ!」


・・・しねぇよ?


とか色々言ったが、俺は最初から何をお願いしようか決めていた。

自分の素直な気持ちなのだろう、すっと頭に浮かんだ。

そんな素直な気持ちに流されてみよう。


「じゃあ、今日おれと一緒に帰ろうぜ?」


「・・・え?そんなことでいいの?」


「あぁ・・・俺にとっては一番嬉しいことなんだよ」


その瞬間、彼女の顔がボッと赤くなった。

耳まで赤くなり、彼女のポニーテールもどこかしおっとしているように見える。


「それで?どう?」


「・・・いいよ」


目を逸らしながら彼女は答えた。



帰り道、他愛もない会話をしながら隣に並んで歩るく。


テストの話や友人の話。最近親が車を買って父親が浮かれている話など本当に他愛もない会話。


「ところで・・・だけど、なんで私と帰りたかったの?」


「ん?さぁ何でだろうなぁ?」


含みのある笑顔でそう答えた。


「も、もしかして!私のこと好きなのかぁ!」


「さぁ、どうでしょう?」


「はぐらかすなぁ!」



本当に今の時間は愛おしい。ずっと続いて欲しいくらいに。



いつもは後ろから見ていたポニーテールが、当たり前のように隣で揺れている未来を願って、隣の少女と楽しい通学路を歩いている。


ポニーテール・・・いいですよね!!

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