63 恐ろしい思い出
( 大樹 )
《 祝!同性間でも子供ができる新たな発明品の誕生 》
それを見た瞬間────
「「「「「 えええええぇぇぇ────────!!!??? 」」」」」
大地が揺れるほどの大騒ぎとなり、全員が大混乱に陥った。
「 えっ!??男同士でも子供できるって事……? 」
「 女同士も??え……えええぇぇ────……嘘ぉ〜。 」
俺も勿論それには驚き、口をパカ────ンと開けて、ニコラが掲げるその紙を見つめていたが、ニコラも正妃も側妃たちも平然としていて、そのままニコラが騒ぐ国民達に向かって説明を始めた。
「 これは魔法の天才と名高いレオンハルト元殿下と魔法騎士団の、歴史に残る奇跡の発明品と言えるしょう。
この発明品により、” 生産性のない ” などという酷い前時代的な考えも消えました。
しかし元よりこの様な発明品が無くとも、私は私達の作る新たな時代にハッキリとした形などないと思っております。
我が愛する国民達には ” こうでなければならない ” という枠に自ら嵌ることなく、これからはこの広く自由な世界で、是非新たな形を創り出して欲しいのです。
此度の法律改正は、その第一歩と言えるでしょう。 」
ズギャンっ!!
単純な思考を持つ国民達の心にこのニコラの言葉は深く刺さった様で、何とグスングスンと泣き出してしまう者達までいる!
「 二……ニコラ王バンザイ!! 」
「 新たな時代にバンザ────イ!!! 」
ワ────ワ────!!!と先程より更に騒ぎ出す国民達はお祭り騒ぎだ。
そのままその騒ぎは続き、ニコラが解散を言い渡しても、街の方からはその騒ぎが夜通し止むことはなかった。
「 ────で?お前、よくも俺たちを出汁にしてくれたな〜? 」
大騒ぎになった新年挨拶から約数日後、俺はまたしてもニコラと共に向かい合って座り、二人で楽しいお話タイムとやらを満喫中・・いや、満喫しているのはニコラだけで、俺の口元は引き攣っているが……。
ニコラは対称的に非常に上機嫌で、ニコニコしながら紅茶を一口飲んだ。
「 そんな……出し汁なんてとんでもない。
私は愛すべきお兄様と、国の英雄である大樹様に幸せになって欲しくて……。 」
「 ほほ〜う?じゃあ、これ何だ? 」
ぴらっとポケットから出したのは、ある舞台の公演のチラシで、そこには────
《 真実の愛を見事貫いたレオンハルト元王子!禁断の恋により引き裂かれそうになるも二人は永遠の愛を誓う。
” トゥルー・ラブ・フォーエバー ”
大好評公演中!増演が既に決定!続編もご期待! 》
────と書かれてあった。
それを改めて見て、ゾワッ!と鳥肌が全身に立つ。
「 いや、何だよ、この ” トゥルー・ラブ・フォーエバー ” って……。
最初見た時は吹き出したぞ……。
何でこんな薄ら寒い舞台やってんだよ。 」
「 おや?失礼なことを言わないで下さいよ。
国が始まって以来の、空前絶後の大ヒット舞台なんですから。
ちなみにイリスのご実家が総元締めとして各地に宣伝、更に他の側妃達もそれに関連した活動を積極的にしておりまして……。
お陰様で、我が王家の評価はうなぎ登り。売上上々、予算は十分。
誠にありがとうございます。 」
「 …………。 」
ホクホクとしながら御礼を言うニコラに思わず押し黙ると、俺はハッ!として再び口を開いた。
「 そういえば、いつの間にあいつ、そんな凄いの発明したの?
子供できるってやつ。
あれには驚いたな……。
多分もっと先の未来で発明されるモノのはずだぞ。 」
俺のいた地獄の未来では、とにかく子供の数を増やし兵士の数を増やすことが優先とばかりに同性愛だろうがなんだろうが容認されていたし、同性間で子供も産める技術は当然の様にあった。
しかし、こんな大昔にそんな概念も技術もなかったはず。
ずいぶんと未来的な現代になってしまったなと本当に驚かされてしまった。
それに対し、ニコラはなんだか……可哀想なモノを見るかの様な目を俺に向け、ニコリと笑う。
「 聖女召喚の研究の傍ら、レオンハルトお兄様が研究されていたみたいですよ。
魔法騎士団は、その仕上げを手伝っただけです。
お兄様はまさに魔法の天才と言っても過言ではない確かな実力をお持ちだ。 」
「 はぁ??何でそんな突飛良しもない研究をしてたの?あいつ?? 」
一体何をやってんだか……。
そんな呆れた様に息をつけたのはココまでで、続くニコラの話に息が止まった。
「 ” 子供を作れば大樹様は逃げられないはずだ ”
” 今度こそ逃さない ”
……だそうですよ。
きっと戻ってきた時に大樹様のお気持ちが変わっていたら……と考えての事でしょうね。
” もしも ” の事を考え、その場で何とか無理やり子供を作ってしまおうとしてたのだと思います。 」
「 …………。 」
固まった俺の顔色は肌色から青へゆっくりと変わっていく。
感動の再会の裏でそんな事を考えていたらしいレオンハルトを思うと、もう感動は全て台無し。
ただの恐ろしい思い出へと変わり果てた。
シ────ン……としてしまったその場で、ニコラはマイペースにお茶を飲み、そういえば・・と前置きをして突然話題を切り替える。




