5 真っ黒黒ちゃん
◇◇◇◇
(レオンハルト一行の会話)
「────クソっ!!何なのだ!!あの山賊の様な無礼な男はっ!!
清らかな乙女とは正反対にいるような男ではないか!!」
怒りを顕にしながらレオンハルトは通路を歩きも、う一度「クソっ!!!」と大声で怒鳴る。
それに便乗する様に、同じく怒り心頭な様子のザイラスが続けて言った。
「全く!!あれでは上手く扱えないではないか!!これから国のために働いて貰わねばならぬというのに……!
……しかし、本当にアレは聖女としての力があるのでしょうか?
あんな粗暴でガサツな男、とてもではありませんが浄化の力など持っているように見えませんが……。」
「私もそれを考えていた所だ。浄化の力がなければただのゴミ。
だから明日適当なモンスターと戦わせてみて判断しよう。
もし使えぬようなら、そのままモンスターの餌にして新たに聖女召喚を行うぞ。
ザイラス、次の召喚はいつ頃できる?」
「────はっ!どうにか魔法騎士団を急がせて半年で間に合わせます。
足りなければ何人か街から攫って、エネルギー源にしますのでご心配なく。」
ニヤッと笑うザイラスに、レオンハルトはフッと口元を大きく歪めて笑う。
「聖女召喚にうるさく反対していた弟とその派閥達を黙らすためにも失敗は許されない。
今回の召喚に携わった者達には、厳重な緘口令を。
明日、モンスターにあの無礼な男が食われてしまったらその存在は闇に。
しかし、もしも浄化の力をもっている様なら……ユニークモンスター討伐後に期を見て騎士団総出で始末する。よいな?」
「勿論でございます!」
「……承知いたしました。」
即座に快諾したザイラスとは違い騎士のアルベルトの方は一瞬間を置いての返事であったが、レオンハルトは気にする事なくいつもの王子様の仮面を被るとそのまま廊下を歩き続けた。
◇◇◇◇
ほぼほぼ予想通りの会話内容に、俺は思わずパチパチと拍手をする。
<超聴覚>を使えば、この建物内の会話程度ならしっかりこの耳に入ってくるため、とりあえずあの王子様一行の会話を追ったのだが……交わされる真っ黒黒ちゃんな会話にがっくりと肩を落としてしまった。
まぁ、大方あのイケメン王子様が『どうか私と共に国を救って下さい〜美しい聖女様♡』だのなんだの、甘〜い言葉を囁いて純粋な少女を上手く操るつもりだったんだろうとは思っていたが……。
「本当にベタすぎるぞ〜?結構なクズ男だな、あの王子様は。
しかし、モンスターっていうのはもしかしてクリーチャーの事なのか……?
そもそも浄化の力っつー怪しげな力は何なんだろうなぁ?
う〜ん……ちょ〜っと調べてみるか!」
俺の意識はドアの外へ。
これも予想通りに二人ほどの男が見張りとして立っている様だ。
恐らくは警護と言う名の監視。なら────……。
窓の方へ向かい下を見ると、だいたい20m程の高さがあったが、俺はためらう事なくそのままぴょんっと飛び降りた。
そしてトンットンッと壁伝いに軽く足をつけながら難なく地上へ到着。
上を見上げ建物の外観を見渡すと、随分と大きなお城であった事に初めて気づく。
「さぁ〜て。まずは資料室か図書館みたいなもんがないか探してみるか!」
そして俺は視覚と聴覚を頼りに、見回りをする騎士たちから身を隠しながら情報が集められそうな場所を探し始めた。




