47 唯一の居場所【 本編完結 】
( 大樹 )
「 この国の酷い歴史の一つは、聖女の残した知識と共に消えてしまったのですね……。
多分そのせいで現在モンスターの支配領域が爆発的に増えています。
騎士団は現在アチラコチラとてんてこ舞い。それに魔法騎士団の仕事も倍以上に増えてしまいました。
そのため新たに魔法以外の技術を研究する機関の設立を希望する声が、国民からも王宮関係者達からも上がっているみたいです。 」
「 そりゃ〜……まぁ、騎士団と魔法騎士団の連中は災難だな。 」
聖女の知識が失われた今、恐らくそれだよりで行ってきた事を魔法で補わなければならなくなったはず。
そして今まで倒したはずのユニークモンスターももしかしたら……?
歴史を合わせようとする ” 力 ” が凄い勢いで現在に追いついて来ているのかもしれないな。
スケールがデカすぎる話に困ってしまい頭を掻いたが、その時フッと疑問が思い浮かぶ。
何故か未来では魔法の力が全く使えない状態……つまり空気中を漂う謎のエネルギーが一切ない状態であった。
それについて頭からハテナが飛び散ったが、これもクリーチャー達がいた時に起こっていた現象から考えるに、今度は人が増えすぎたんじゃないか?と予想した。
あんな天国の様な未来では、恐らく人の数も相当多かったに違いない。
つまり、いつかは魔法を捨てて科学に頼る未来が来る。そういう事なんだろう。
俺はハハッと笑った。
まぁ、別にどっちだろうと構わない。
人が人として生き方を選べる世界になれるなら。
嬉しそうに笑うと、突然レオンハルトに顎を掴まれ深くキスをされてしまう。
思考が全部持ってかれそうな激しいキスに、体から力は抜けてしまいレオンハルトに全ての体重を掛けた。
するとそんな情けない俺を、レオンハルトは嬉しそうに見下ろす。
「 はぁ……。貴方は本当に快感に弱くて可哀想な人ですね。
恥ずかしくてこれでは誰も一緒にいてはくれないでしょうね!
まぁ?俺は懐が大きいし、男とはいえそんな恥ずかしい身体にしてしまった責任はあります。
責任をとってあげてもいいですけど? 」
そっけない言い方の割に、” 一緒にいて! ” と言わんばかりにぎゅーぎゅーと力一杯抱きしめてくるレオンハルトに俺は吹き出した。
ムッとするレオンハルトのおでこに自身のおでこをつけて悪い笑みを見せる。
「 そうだな〜?もうこんなんじゃ女とはできねぇもんな。
それに俺、完璧に振られちゃったからさ。
一生責任取ってくれよ。レオンハルト。 」
そう言ってギュッと抱きしめ返すと、レオンハルトは泣きそうに顔を歪めた。
「 し、仕方ないですね!
一生側においてあげますよ!! 」
そう言いながらポロポロと泣いてしまったレオンハルトを、俺は心の底から愛おしいと思った。
しかし……同時に思い出すのは、俺の立ち位置について。
どうしようかと頭を抱えた。
「 なぁなぁ、悪いけどさ、ペットか置物的な身分って作れないか?
────で、俺をその身分にしてくれ。 」
「 は???貴方何言っているんですか?? 」
いい雰囲気が台無し。
レオンハルトの涙は凄い勢いで引いていった。
「 いや……その〜……ほら、俺って男だし?教養もマナーもないじゃん?
だから側妃になるのはちょ〜っと不味いと思うんだよ、うんうん。
だから、こう……ペットとか?置物とかで置いてもらおうかな〜って……。
あ!ほらほら、俺強いから、ヤバいモンスターが出現した時は颯爽と倒してくるからさ!
戦闘用のペット!……なんちゃって。 」
ジーーッと蔑む様な目を向けてくるレオンハルトにごにゃごにゃと希望を口にすると、心底呆れたようなため息をつかれた。
「 それはもう問題ありません。
俺はもう王子ではありませんから。 」
「 ────へっ??!!ど、どういう事?? 」
それから語られるレオンハルトのその後に、またしても俺は驚かされ、ええええっ────!!と悲鳴をあげてしまう。
まず、この事件を起こしたザイラスは危うく世界を滅ぼす所だった事から宰相の立場を追われ王宮を去る予定だったが、それに待ったをかけたのはニコラ王子様。
「 ゆっくり老後を過ごせるとお思いか?
死ぬまで国に尽くせ。 」
有無を言わせない勢いでそう命じ、今ザイラスはヒーヒー言いながら毎日沢山の仕事をやらされているんだとか。
散々ムカつく物言いをされていた俺としたらザマァミロだったので、ぷぷぷーっ!と吹き出してしまった。
そしてアルベルトは今回の大事件を未然に防いだとして騎士団長に任命され、各地にまだまだ広がるモンスター被害を食い止めるべく全国をとびまわっているらしい。
そして────
「 ────で、レオンハルト君は今までの功績を盾にニコラ王子様を脅してここで隠居生活ってか? 」
「 ……何か言い方が嫌ですね。
全部面倒な事はニコラに押し付けて王位継承権を返還しました。
そしてここでずっと聖女召喚の研究をしてたのです。 」
10年もか……。
レオンハルトという男の事をまた一つ知り、ゾワッと背筋が凍る。
10年も俺の事召喚しようとここで閉じこもっていたのか〜……。
何か……怖っわ……!
その異常な執着にブルッと震えてしまったが、寒いと勘違いしたのかレオンハルトはギュッと密着してきた。
まぁ、それが嬉しいと感じている俺はもっと怖いか……。
ぬくぬくとした腕の中で大人しく抱きしめられていると、ハッ!と大事な事を思い出す。
「 そういや、良いのか?お前王になりたかったんだろ?
復讐したいって言ってたのにそれをこんなあっさり手放しちゃってさ。 」
レオンハルトは俺の言葉を聞き一瞬キョトンとした顔を見せ、その後ニヤリッととてもじゃないが王子様には見えない悪い笑顔を見せた。
「 復讐してやりましたよ?
だって大樹様が言ってたじゃないですか。
好きな事を思いっきりやって幸せになる事が復讐だって。 」
そのままクックックっと悪のボスの様に笑うレオンハルトに俺は吹き出した。
「 確かにそれは最高の復讐だ! 」
俺はそのまま笑いながらレオンハルトの胸に抱きつき、その愛おしい存在を逃さない様強く抱きしめた。
地獄の未来はもうなくなって、時の流れに弾かれた俺の居場所はもう何処にもない。
ココ以外は。
俺は新たにできた自分だけの居場所、レオンハルトの腕の中でウットリとその幸せに身を任せた。
ここまで読んで下さった方本当にどうもありがとうございました⸜( ˃̣̣̥᷄ᯅ˂̣̣̥᷅ )⸝
この後は番外編と半年後のストーリーを書き書きしましたのでまたUPしていきます〜♪( ᷇࿀ ᷆ و(و "




