40 真実
( 大樹 )
俺は急いで頭の中にあるこの世界の地図を思い出した。
地図は巨大な大陸がど真ん中にあり、その中心がこの国。
そして周りには小さな島々が散らばっている。
そして続けて思い出すのは自分のいた世界の世界地図。
巨大な大陸はまるでドーナッツの様な形になっており、中央を除いたその周辺部に俺たち人が奪還した土地がポツンと存在している。
その巨大大陸のど真ん中に最もクリーチャーの数が多い支配エリアがあるが、そこは巨大なクレーターの様な形になっていて、未だに何かの残骸の様なモノが多数残っているのが偵察用小型機の映像からも分かっていた。
そのためそこは、恐らくそこは大昔に巨大な中心都市の跡地だったのだろうと言われていて、数々の物的証拠からも ” その場所で、大昔何かがあってクリーチャーが生まれたのでは? ” と考えられていたが、真相は謎のまま。
その事実と、この世界の地図と俺の世界の地図を慎重に頭の中で重ね合わせていくと────
その形は完全に重なった。
俺はその事実に気がついた瞬間、さぁぁぁ────……と青ざめていく。
ここは異世界などではない。
過去の世界だ。
それに気づけばカチッカチッと今までバラバラだった謎のピースが繋がっていく。
この国の人間の格好が俺の世界で聞いた過去のモノに似ていたのは、ここがまさにその過去の世界だから。
そして中央の巨大都市の残骸は、この国の……
「 ……滅んだ跡地だったのか……。 」
クソっ!と呟き、俺は額に手を当て目を瞑る。
多分この国はモンスターを滅ぼそうとあの発明品を使った。
そして瞬く間に黒い雲の様なモヤが世界を覆い、赤い雨が世界中に降り注いだのだろう。
そして未来は────────地獄。
俺は慌てて窓から顔を覗かせ、赤い雨を浴びたモンスターを睨みつけたが……モンスターの生体反応は完全に停止していた。
「 ?……どうなってんだ?? 」
中ではアルベルトが実際に近づき、その息の根が止まっている事を確認しているし息絶えているのは間違いない様だ。
「 ……もしかしてこれから改良されて……? 」
そんな最悪な可能性を考え ” とりあえずあの装置は破棄させよう ” と考えたが、ザイラズや魔法騎士団達のあの喜び様では容易にはいかなさそうだ……。
俺は一旦窓を覗かせていた顔を引っ込め、困った事になったと頭を抱える。
無理やりぶっ壊しちまうしかないか……。
最終的にはそんな物騒な考えの方に思考を勧めながら、ふよふよっと空気中に漂うエネルギー達を見つめる。
このエネルギーが俺の世界でなかったのは、増えすぎたクリーチャー達に根こそぎ吸われちまったからか……。
人よりはるかに多い量を吸い込んでいたモンスター達の性質を思い出し、多分それが変化したクリーチャーにもあったのだと思われる。
だから人は ” 魔法 ” の力を捨てて ” 科学 ” を発展させていくしかなかったのだろう。
今ある技術でなんとか地下にシェルターを作り ” 聖女 ” 達の残してくれた知識を使って必死に生き延びる道を歩み始めた。
そして今もその戦いは続いている。
恐らく今から何千年も……もしかしたら何万年も先も。
クリーチャーとの戦いで無惨にも殺されていった杏花や他の仲間達を思い、絶対にあの装置とそれに関する情報は消去して帰らねぇと……と決意する。
そして直ぐに動こうとしたが……その瞬間、馴染みのある凶暴な気配を感じてゾクッ!!として動きを止めた。
この気配は……まさかっ!!
慌てて窓から中を再び覗くと、死んだはずのモンスターの生体活動が突然開始し、あり得ない程その身体能力値が上がっていく。
これではまるで別物……クリーチャーそのものじゃないかっ!!
やがてピクッと動いたモンスター……いやクリーチャーに、真っ先に気づいたのはアルベルトで、直ぐにレオンハルトの前に立ち全員に後ろに下がるよう大声で指示を出した。
すると全員がクリーチャーに変化していくモンスターに気づき、サァァァ────……と青ざめ、巨大化していく体をただただ呆然と見つめる。
そして元の姿など微塵も感じられぬ程、巨大化し圧倒的なオーラと威圧する様なエネルギーを感じる化け物へと変化すると、そいつは直ぐにレオンハルト達の方へ視線を向けた。
「 な……何なんだ……?この化け物は……。
ザイラス、どうなっている? 」
レオンハルトがクリーチャー化したモンスターを睨みながらザイラスに尋ねたが、ザイラスは「 あ……あ……。 」と返す言葉もなく立ち尽くしているだけで、答えられない様子だ。
その瞬間、剣を抜いたアルベルトに続き、レオンハルトも魔法騎士団の団員たちも一斉に自身の武器である杖を抜き、構えたが────……
全員が瞬きを一度した瞬間、クリーチャーはアルベルトとその背後にいるレオンハルトの前に。
誰もその動きを追えない。
俺以外は。




