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聖女召喚!……って俺、男〜しかも兵士なんだけど……??  作者: バナナ男さん
本編

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39/65

39 この世界は……

(大樹)


「う〜ん……<聖浄化システム>ねぇ?」


何だかその胡散臭〜い装置に思わず疑いの目を向ける。


ザイラスと魔法騎士団の研究室は<研究塔>と呼ばれる塔の頂上にあったため、俺は塔の外からトントンっと壁を上り大きく開いた窓の一つから研究室の中の様子を観察していた。

そこにはやたらとデカい赤い玉と低ランクモンスターが一体鎖で繋がれていて、今からなにやらその装置で実験を行う様だ。


<始祖の女王>の能力を反転したシステム。

確かにその観点は凄いと思うが、それが本当に可能なのかは分からない。


「まぁ、何にせよ本当にそれが完成したら、とうとう俺はお払い箱って事か〜。」


世の中が平和になるのは良い事だし、そろそろ帰ろうと思っていたので安堵した気持ちが胸に広がったが……同時にチクリと鋭い痛みが走る。


レオンハルトとはこれで永久にお別れ。

俺はこれから死地に向かい、レオンハルトは光が差す輝かしい未来へと向かう。


……真逆の道を進むのか。


それに気づくと、何だか今まで一緒にいれた事が奇跡だったんだな〜としみじみ思い、レオンハルトとの思い出達がキラキラと輝いた気がした。


「きっとこれはこれまで真面目〜に頑張った俺への神様からのプレゼントだったのかもな。

童貞のまま寂しく死ぬのは可哀想だ〜的な??」


ボソッと呟いた言葉に、次の瞬間小さくプッと吹き出してしまった。


いやいや、俺、童貞のままじゃ〜ん!

それなら相手はプリンプリンの巨乳美女にしてくれよな〜。


そんな不満をたらふく神様に言ったが、その瞬間ムッとした顔のレオンハルトの顔が思い浮かび、慌ててウソウソ!と発言を取り消しておいた。

するとムッとした顔のレオンハルトの顔はみるみる嬉しそうな顔になり、正面から抱きついてきて『大樹様』『大樹様』と何度も俺の名を呼び、最後は────……。


『大好き』


「────うん。俺も……────って何言ってんだよ。俺は。 」


自分の妄想に声を出して答えてしまったことに気づき我に返ると、恥ずかしさから顔を覆った。


年頃の乙女の妄想か!はずかしっ!!

あんな10も下の小僧に翻弄されて……。


「俺、ちょっとイタい系おじさんになってるないか〜?」


頭の中では若い女性に迫ってセクハラをするハゲ親父が思い浮かび、ぐぅ!と喉を詰まらせながら必死に言い訳を考える。


でも、レオンハルトが悪いと思うんだよな〜。

だってあんなに……必死にくっついてくるから……。


『大樹様は幸せな男ですね、私に何でも与えられて。』


『ほら、幸せでしょ?娼婦の様に何かねだってみたらどうですか?

おねだりが上手にできたら何でも買ってあげますよ?』


言葉だけ聞くとかなり見下されている感が凄いのだが、その目は必死に縋ってくる様で……。

何だかまるで『何でもするから行かないで。』『側にいて。』と言われている気分になってしまう。


俺は窓の外の壁にコツンと頭を軽く打ちつけ、困った様に笑った。


多分、俺はそれが凄く嬉しかったんだ。

必死にこんな大したモンじゃない自分を必要として手を伸ばしてくれる事が。

そして必死に胸の内を隠し、素直に感情を伝えられないレオンハルトを愛おしいと思ってしまった。


じんわりと熱くなる胸を押さえ、俺は直ぐに笑いを引っ込め真剣な顔つきになる。


『覚悟もない人が軽々しくなっていい立場ではないのですよ。』


うん、そう。その通り。


だから俺は帰らないと駄目なんだ。

レオンハルトが王になるならそれに相応しい妃と側妃は絶対に必要だから。


自分の気持ちに蓋をしてニヤッと笑う。


輝く様な思い出だけ持って俺は帰る。

自分の帰るべき場所へ。


しっかりとそう決意し首から下げた指輪を服の上から触る。

そして自分の最後を気まぐれに思い浮かべ、その時頭に浮かぶのは……一体どっちなんだろうな?などと考えて苦笑いしてしまった。


下らない妄想にふけっている間にも実験とやらは続き、赤い玉から怪しげな光りが発する。


何だか不気味な光りだな……。


そんな事を思いながらその光りをボンヤリと見ていると、突然黒い雲の様なモヤが部屋の中に立ち込め始めた。

そのモヤからは非常に濃厚なエネルギーを感じ、その時点で俺は何だか嫌な予感がして……汗を一筋掻く。


「おいおい……何だか『始祖の女王』のレベルではないエネルギー量を感じるんだが……?」


元にした媒体を上回るエネルギー量は、多少増幅したら可能だろうが、それにしても……?と警戒していると、天井まで到達した黒いモヤは低ランクモンスターの上空へ固まり、そして────────赤い雨の様なモノがモンスターへと降り注いだ。


赤い……雨……??


嫌な予感は頂点に達し、心臓はドクンっ……ドクン……と早鳴りを始めた。


『クリーチャーの誕生の始まりは”赤い雨”だったと言われているよ。』


『何でも突如発生した黒い雲が空を覆い、世界中に赤い雨が降ったんだって!

そうしたらあらゆる生物が化け物に変わっちゃったらしいよ。』


まさか────この世界は…………。



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