34 最後のピース
(レオンハルト)
「────で、本当に完成したのだな?モンスター達を殲滅するためのクスリが……。」
「えぇ。私が管轄している魔法騎士団の者達が完成させました。これさえあればモンスター達を根こそぎ全滅させられるでしょう!」
研究塔へと到着した私と専属騎士であるアルベルトは、ザイラスに案内されながら研究室がある頂上を目指し階段を登っていた。
その道中、早速ザイラスの説明を聞いていたのだが……ウキウキとまるで子供の様に語るザイラスに汗を一筋垂らす。
ザイラスは魔法に特化している魔法騎士団と共に、ずっとモンスターを根本から消し去る研究を続けていた。
必ず周期的に現れるユニークモンスター。
そしてそれに合わせて行う《聖女召喚》
ザイラスは多少行き過ぎてはいるが、昔からこの国を誇りに想う気持ちが強く、異世界の者にこの国の問題を任せたくないという気持ちを持っていた。
そのため誰よりも熱心にこの研究に力を貸していたのだが────。
『モンスターという種のみ全滅させる。』
それを達成する事は非常に難しく、研究はずっと行き詰まってしまっていた。
そんな中、致し方なく今回の聖女召喚に踏み切ったというわけだ。
「まさか本当にその様な事が可能となるとは……。にわかには信じられんな。」
「歴代聖女の研究記録からずっと研究を続けて参りましたが、どうも異世界というモノは我々が歩んできた歴史とは全く異なる未知の技術力が非常に進化した世界だった様ですな。
そのため解読は非常に困難でした。
元の世界がどんな世界であったかと問いただしても、決して口を割らなかったそうですから、もしかして天国の様な場所だったのかもしれません。
教えるのに惜しいとでも考えていたのでしょう。異世界人は皆、性格が悪い!」
ブフゥ〜!と勢いよく鼻息を吹き、ブツブツと大樹様の悪口らしきモノを言い出したザイラスだったが、少なくとも大樹様のいた異世界は天国の様な場所ではなかったらしいので、アルベルトも私も何も言わなかった。
「女王の死骸からヒントを得たと言っていたが……。」
「はい!その通りでございます!その死骸から貴重なサンプルを発見しまして。
それがモンスター共を根本から消し去る為に必要な最後のピースでした。
それを歴代聖女が残した研究データと照合させながら、モンスターのみを滅ぼす装置を作り出すことができたと言うわけです。」
ペラペラ〜と得意げに話しだすザイラスに相槌を打ちながら、人を滅ぼさんとするユニークモンスターという化け物の厄介さと、それがモンスター絶滅に必要であったという少々皮肉めいた事実にフッと小さく笑う。
「毒を持って毒を制すか……。何とも皮肉めいた結末だな。」
愉快を感じている私とザイラスだったが、どうもアルベルトはそうではないらしく、珍しくザイラスに向かって口を開いた。
「『始祖の女王』の能力は『自分以外のモンスターの強化』でした。それが必要なピースになったのですか?」
アルベルトの質問を鼻で笑ったザイラスは、ピタリと足を止めヤレヤレと哀れみを込めた目で後ろにいるアルベルトを見返す。
「全く……脳みそまでも筋肉の貴様ら野蛮騎士団には、到底理解出来ぬだろうな。
いいか?よ〜く聞くがいい。
『始祖の女王』の能力は『自分以外のモンスターの強化』。
それを反転すれば、『自分以外のモンスターを弱体化』させると言う事だろう?
そこに着目し、まずはその弱体化させる装置を作り上げ、それから徐々に効果を高める改良を行っていったのです。」
「なるほど。弱体化が進めばいつかは命も失うからな。」
「その通りです!さすがは殿下!そんじょそこらにいる力押しの猿とは違いますなぁ!」
ご機嫌で笑うザイラスだったが、アルベルトはやはり何か引っかかるようで表情はあまり芳しくない。
しかし、その理由は自分でも分からなかった様で、直ぐにいつも通りの無表情に戻った。
それを見届けたザイラスは、フンッ!と面白くなさそうな顔をしたが、それより研究が成功したことの喜びが勝った様で、それ以上アルベルトに文句は言わずにまた前を向いて階段を登り続ける。
「これでもう二度と胡散臭い聖女などを異世界から呼ばなくてもよくなりますね。
私は最初からあんなモノに頼るのは反対でした。胡散臭い余所者に国の大事を任せるなど……。
我が国はこの世界の中心と言っても過言ではない大国ですから、他の小国に対して示しがつきませぬ!」
「……そうだな。」
ザイラスの言う事は最もな事で私は素直に同意を示した。




