33 決意
(大樹)
「わ……私は……!!間違った事は言ってな────。」
「不快な想いをさせて本当にごめん。もう大丈夫だから、これからどうか頑張ってくれ。」
ペコッと頭を下げると、肩透かしを食らわされたらしい侍女は、慌てて礼をして部屋を出ていってしまった。
それを見送った後、俺は指輪を握っていた手を開き、ネックレス部分を摘んでそのままスッ……と首に掛けた。
「そうそう、もう大丈夫だからさ。……夢は終わり。俺は現実の世界にそろそろ帰らないとな。」
パンパンッと両頬を叩き、ボンヤリしていた意識は完全に覚醒した。
そして唐突にクリアーになってきた頭で現実に目を向けると、元の世界では俺はどういう扱いになっているのか……それが心配になってきて今度は頭を抱える。
「死亡者扱いになってるかもな〜。また近々大きな土地奪還戦があるし、戻らないと作戦に支障をきたしそうだ。」
ここに来る直前、またしても土地奪還の大きな戦いが決まったと俺達の部隊にも通達が来ていた。
それが丁度今から1ヶ月後くらいだったはず……。
杏花が死んだ時と同じ規模の戦い。
恐らくまた半分くらいの兵は死ぬだろうと思われる。
歪んだ指輪を見下ろし、その時の事を思い出して心臓はキュッと痛んだ。
今回こそは俺の番。
土地の奪還戦では、最も危険な先発部隊は年齢順に前に出される事になっているため、俺も次の戦いでは最前列に配置されるはず。
最前列の死亡率は毎回9割を超える。
恐らく命を落とすだろうが、こればっかりは順番だから仕方がない
それに文句はないし、これでやっと役目は終わるんだという安心感すらあった。
だが……。
突然頭を過ったのはキラキラ光るプラチナブロンドの髪の────……。
そこまで考えてハッ!!すると俺はフルフルと首を横に振って、おでこを拳で小突いた。
いい年したおっさんが何を考えているんだか。
俺は兵士、あいつは異世界の王様。俺の居場所はココにはない。
むしろ────……自分という存在があいつが叶えようとしている夢に対し、いかに邪魔なモノか。
さっきの侍女がハッキリと再確認させてくれた。
「…………バカか、俺は。」
一瞬シン……と静まり返った部屋の中で笑い、首に掛けた指輪に対し「ずっと外していてごめんな。」と謝る。
これをつけていると、とにかくレオンハルトがとにかくうるさくてうるさくて……下手をしたら捨てられるのではないかと危惧し外していたのだが、外した時の歓喜するレオンハルトの顔!
嬉しい!を全面に出すその顔のせいで何となくまたつける事ができなくなってしまったのだ。
これをまたつけていると知った時のレオンハルトの反応を考えると……。
────ソロ……。
また無意識に外してしまいそうになり、ハッ!と慌てて手は下に。
そしてそのまま立ち上がると、最後に少しだけ気になっていたザイラスの研究とやらの様子を見てから帰ろうと心に決めて、グシャグシャになっていたベッドを整えた後、窓から飛び出した。
以前からザイラスと魔法騎士団が研究しているらしいモノ。
それは『モンスターを絶滅させるクスリ』であるらしいが、ここで引っかかったのは『聖女の遺産』についてだ。
『聖女の遺産』の効果は凄まじく、新型人類の俺ですら一時的とはいえ完全に罹ってしまったのだから、恐らく規格外のモノ。
それを元に研究しているらしいので少々警戒した方がいいだろうと思っていたのだが、更にそれにプラスしてユニークモンスター『始祖の女王』の死骸までザイラスが持っていったため心配はしていた。
まぁ完成したっていうし、モンスターがあの程度の実力なら何かあっても大丈夫だとは思うが……。
しかし念には念を、一応どの程度の出来か確かめに行くことにして、俺は見張りの騎士の遥か上空をポーンと軽く飛んでザイラスのいる研究塔を目指した。




