29 イケメン効果
(大樹)
◇◇◇◇
「────で、どういうつもりなのかな〜?レオンハルト君は。」
腕を組みお説教するかの様にレオンハルトを睨みつけてやったが、レオンハルトはツ──ン!と顔を背け非常に可愛くない態度をとってきた。
「……別に何も?ただ正直に大樹様の問題行動についてご助言しただけです。」
「……ほぉぉぉぉ〜?」
とてもそうとは思えなかったレオンハルトの発言を聞き、俺はそのお綺麗な顔をジロ〜と睨みつけたが、ツ──ン!としたままのレオンハルトに困り果て、手を上げてお手上げのポーズをとった。
「悪かったって……。だってあの『聖女の遺産』?ってやつの効果が、ここまでとは知らなかったんだ。
そのせいでうっかり突っ込んじゃったから、そんなに怒っているんだろ?
『俺の輝かしい人生に影を落としやがってぇ〜!!』ってところか……。」
レオンハルトは『聖女の遺産』と聞いて、ギクッ!とした様だが、慌てて表情を引き締めた。
「そ、そうです!!今日の事は、私の輝かしい人生の最大の汚点になりましたからね!!
だから責任を取ってもらわなければ困るんです!!」
「せ、責任って……。いや、そもそもお前がそんな変なクスリ使うから悪いんじゃ……。
────あ、もしかしてレオンハルトって童貞?」
「────なっ!!本当に貴方は失礼ですね!!私は童貞ではありません!!そんなもの小さい頃から星の数程経験してますよ!初めては貴方のほうでしょう!!」
怒りを顕にするレオンハルトを何とかなだめようとするが、言えば言うほど怒りは増幅していく様でホトホト困り果てていると、レオンハルトはまた俺の両手を掴み、そのまま自分の方へと引き寄せた。
「ねぇ、本当に俺が初めてですよね?キスも、それ以上も全部。
他の誰ともしたことがない、そうですよね?!」
「え?!……あ〜……その……うん……。まぁ……戦いばっかりだったから……。」
鬼気迫る様子に圧されしどろもどろに答えると、レオンハルトは満足そうに微笑む。
「そうですか!じゃあ初めてであんなに気持ちよくなってしまうなんて、これから一体どうするんですか?
自分でできます?他に相手してくれる人、いないと思いますけど。
大樹様はお若く見えますがそれなりのお年ですし、正直美しさは皆無です。
それにそもそも男ですしね。
お金でも払ってどっかの適当な男に相手してもらうしかないんじゃないですか?」
突然の暴言に継ぐ暴言に驚き言葉を失う俺に対し、レオンハルトは片手を俺の手から外し、腰辺りを愛おしそうに撫でてきた。
「幸い私はこういう事をするのに抵抗はないですし、体の相性だけなら悪くはなさそうでした。
だから気が向いた時に相手してあげてもいいですよ。
聖女として国を救って貰った恩もありますので、これから王宮で一生好きに過ごせばいい。
最高のご褒美でしょ?毎日美味しいものを食べれて気持ちいい事だけしてればいいなんて。」
ポカンとした顔でただその一方的な話を聞いていると、レオンハルトは顔を近づけてきて俺のおでこに自身のおでこをつけた。
だ……大丈夫か?こいつ……。
俺は本気で心配になり、とりあえず黙ってその行為を受け入れたが……レオンハルトは何だか全然大丈夫そうに見えない。
そして至近距離で自分を見つめる引き込まれそうな程美しい蒼い目を、チラッと見つめ返し、どうしようかと悩んだ。
まぁ、言っている言葉は結構どうかと思う様な内容だが……。
何か必死過ぎて……お、怒れない……。
表向きは余裕たっぷりの態度を保っているが、内心はオロオロと動揺しまくり。
今も必死に縋るようにひっついてくるのを見ると、どうしても無碍に出来ずにほとほと困ってしまった。
よっぽど体の相性が良かったとか……?
こっちは初めて比べる対象がいないからどうだか知らないが……。
う〜ん……と考え込みながら徐々に強くなっていくレオンハルトの握力を感じ、今度は何だか恥ずかしくなってきてキュッ……と目を一旦閉じる。
美味しいものをたらふく食べた後は、さっさと元の世界に帰ろうと思っていた。
ユニークモンスターを倒した後はレオンハルトやこの国の人達に任せて問題なさそうだったし、いつまでもこんな聖女の『せ』の字もない様なおっさんがいつまでもいては邪魔になると思ったから。
聖女召喚の魔法原理は頭に入っているためいつでも自力で帰れるし、万が一ザイラスあたりがちょこざいな動きを見せても問題はないと思っていたのだ。
しかし……。
もう一度パチッと目を開けるとひたすらジッ……と見つめてくる蒼い瞳が俺を離してくれない。
「わ……分かった……。」
戸惑いながらもそう返事を返せば、途端に嬉しそうにキラキラ目を輝かせるレオンハルトから目を逸らすことができなくなった。
イケメン効果ってヤツかね……?
恐ろしい程美しい顔貌をただボンヤリと見つめていると、それが徐々に近づいてきて……気がつくとレオンハルトからのキスを俺は静かに受け入れていた。




