27 提案
( レオンハルト )
◇◇◇◇
「 流石は優秀と名高い第一王子!これで次期王は完全に決まりましたな。 」
「 いくら正規の妃の子ではないとはいえ、これだけの功績を立てられては反対派もなすすべはないでしょうね。 」
至るところで囁かれる声を聞き、隣に立つザイラスはフフ〜ン!と自慢気に胸を張る。
「 これで殿下が王になる事は確実ですな!
これからは殿下の時代がくるのです。後見人の私も鼻が高い! 」
わーはっはっ!!と笑いながらワインをグピーッ!!と一気に飲み干したザイラスは、次に少し離れた場所にいる大樹様を睨みつけた。
「 フンッ!いくら見てくれだけ綺麗にした所で野蛮さが行動に出ておりますな。
いくら立食パーティーとはいえ、あのニセ聖女は礼儀を知らなすぎます。
直ぐに操り人形にしてマナーも叩き込んでやる! 」
カッカッするザイラスは無視して大樹様の方へ視線を向けると、先程の情事など微塵も匂わせる事のない涼しい顔をしている。
身支度は侍女にしてもらったはずなので、恐らくもう私の匂いも完全に消えているはず。
それを思うと何となく気に入らなくて、不思議な気分になった。
辛そうな顔一つしない。
何で?
もっと傷ついて悲しそうな顔すればいいのに……。
何でそんな酷い事を考えてしまうのか本当に分からなくて、目を逸らそうとしたが何故か逸らす事ができず、それも不思議に思う。
致し方なくそのまま見つめていると、大樹様は手に持っているお皿の上に沢山の食べ物を盛り付け、それを幸せそうな笑顔で頬張っていた。
可愛い……。
唐突に浮かび上がった言葉にドンッ!と衝撃を受け、慌てて首を振ってそれを消し去ると、今度は大樹様に話し掛けにいく沢山の人達の姿が続けて目に入る。
ベタベタと大樹様の肩や手に触れながらその健闘を称える者達に、今度はイラッ〜!!!!と非常に強い怒りの感情が湧き、更にやすやすと触らせている大樹様に対しても同様に怒りを感じた。
さっきあんなに私に触られて気持ちよさそうにしていたくせに!
他の男にも簡単に触らせるなどあまりにも貞操観念が低すぎる!!
イライラは収まりそうになく思わずジロッ〜と大樹様を睨みつけると、その視線に気づいた大樹様が手を振りながらこちらへテクテクとやってきた。
「 凄いご馳走だな。流石は王族!誠にありがとうございま〜す。 」
ペコ〜と下げられる頭を見ながら、こちらに直ぐに来てくれた事に怒りは一瞬フッと消えるが────
……普通過ぎないか?
全く先程の事を気にしていない様子の大樹様に、今度は怒りと悲しみが沸く。
あんなに夢の様な時間を共に過ごしたのに……?
誰も見たことのない姿を私にだけ見せてくれたのに……?
「 ……お褒め頂きありがとうございます。
どの料理も最高級のモノを取り寄せ、更に王都屈しの実力を持った我が王宮のシェフが作りましたので……ここでしかそんな美味しい料理は食べれませんよ。 」
” 動揺しているのが自分だけ ”
その事にイライラしながらも ” 私の側にいればこんなに美味しいものを毎日食べられるぞ。 ” と遠回しに伝えたのだが……
「 へぇ〜、そうかそうか。ラッキーラッキー。
最後にいい想いしちゃったな〜!ありがとう。 」
────とあっさり御礼を言われて流されてしまった……。
……ズドンッ!!
大包に撃ち抜かれた様なショックに襲われ言葉が出ない。
大樹様は呆然とする私からあっさり視線を外し、更にそのままフラフラ〜と次の料理に手をつけに行こうとしたので、私は大樹様の手をパシッ!と強く掴んだ。
すると不思議そうに見上げてくる大樹様に口を開きかけた、その時────
「 レオンハルト兄様、聖女様、この度は誠にありがとうございました。 」
そんな声が直ぐ側から聞こえたため二人揃ってそちらへ視線を向けると、そこには金色の髪に透き通った青い瞳、穏やかそうに微笑む一人の青年がいた。




