19 討伐
レオンハルトの手を長時間マッサージした後は、外に出て丁度いい木の幹で身体を休めていたのだが、朝方嫌な気配を感じ直ぐに飛び起きた。
モンスターの反応多数。
そしてその最後尾に、ひときわ大きな反応がある。
恐らくはこいつがユニークモンスター『始祖の女王』。
こんな自分のテリトリー内のど真ん中で防御結界を張られ、ご立腹した女王様が仲間を引き連れ総攻撃を仕掛けてきた────って所だろう。
ラッキ〜!と指を鳴らし、俺は大声で騎士達に号令を掛ける。
「『始祖の女王』の反応あり!────全員戦闘準備だ!!」
休んでいた騎士達は直ぐに飛び起き剣を取ると、俺の前に整列し陣形を取った。
前衛の真ん中にはアルベルト、俺の隣にはレオンハルトが立つ。
「大樹様、本当に『始祖の女王』が現れたのですか?」
「あぁ、自分のテリトリーを荒らされてそうとうご立腹なんだろうよ。
さぁ、とっとと倒して『平和』をもぎ取って……ついでに『復讐』も遂げちまおう。」
ニヤッと笑いながらレオンハルトに笑みを見せると、レオンハルトは何だか儚げというか……嫌味のない綺麗な笑みを見せた。
何だかそれにドキッとしてしまって、恥ずかしくなってポリポリと頭を掻く。
イケメンってズルい。
そんな不謹慎な事を思いながら、俺は戦いに集中し始めた。
◇◇◇◇
「こ……これは────っ!!!」
太っちょおじさんのザイラスとそのお付きの者達は、城に運ばれてきた巨大な樹木の形をしているモンスターを見て、あんぐりと口を開けて絶句する。
ほくそ笑みながら、バシバシっとその脂肪だらけの背中を叩いてやった。
「そうそう!倒しちゃったよね〜。この偉大なる聖女様が!頭が高いぞ〜?ザイラス君?」
「────グッ!!……ぐぐぐ……。ほ、本当なのですか!!?殿下!!」
悔しげに歪んだ顔でレオンハルトに詰め寄るザイラスだったが、レオンハルトからの「本当だ。」という言葉と、アルベルトからの「大樹様が倒しました。」という言葉を受けそのまま動かなくなってしまった。
そんな姿を見て更に気分が良くなった俺は、ザイラズの腹部に溜まった柔らかい脂肪をモニモニ〜と揉んで遊んでやる。
しかし全く反応がないので、更に俺は剥げかかったザイラスの頭をペチペチと叩いてやり、息の根が完全に止まっている『始祖の女王』を見下ろした。
『始祖の女王』の能力は、主に他のモンスターへの強化で、確かに白い霧の様なモノを吐き出し、周りのモンスターを強化し一気に襲ってきた。
それを迎え撃つのは騎士団員達で、昨日教えた通り交代で上手く立ち回りながらモンスター達の動きを抑えてくれる。
そして隣に立っていたレオンハルトも剣を抜き、そのまま女王様の周りを取り囲むモンスター達を騎士達と共に後方へ後方へと押し出していけば────『始祖の女王』への一本道がサァァァ────と開いた。
「大樹様────!!」
レオンハルトの声に背中を押され、俺はそのまま『始祖の女王』に向かってその一本道を走っていき、そして────……見事その女王様を倒したのだった。
────しかし……。
やっぱり大した事ない強さだったんだよな〜……。
しみじみとそう思いながら何となく謎の引っかかりを覚えていると、突然振り返ったザイラスが今まで見せたことのない胡散臭〜い笑みを浮かべながら、両手をモミモミと揉み込み始めた。
「流石は我が国に伝わりし伝説の偉大なる『聖女』様!!
貴方様は、この国の救世主様でございます〜!これで国は救われましたな!いや〜本当にめでたい!!
私は最初から大樹様は今までの聖女とは一味違うとずっと思っておりました〜。」
「……お前、ホントに清々しいほどクズだな……。」
そう言って大きなため息をつくと、ザイラスは一瞬動きを止めた後、直ぐにニコニコ〜!と満面の笑みを浮かべた。




