16 衝撃的な事実
そうして見張りをする為、休憩用のテントが張られた場所より少し離れた場所に行くと、そこにはゴロンと横たわるモンスターの死骸が1匹。
実はコレ、先程倒したモンスターの1匹だけを騎士の人達に頼み、運んでもらったモノなのだ。
「さ〜てと、やりますか。」
頬をパチンと叩いて気合いを入れると、その場にしゃがみ込み、倒れているモンスターにソッと手を触れた。
<超触覚>
手で触れる事で、その生体の構造を解析できる能力
更にこれに新たに魔法と呼ばれる力を上乗せすると、より精密なデーターを得る事ができ、その情報は次々と頭の中へ。
そしてその結果に、俺は驚き目を見開いた。
「どういうことだ……?」
モンスターから手を離し、俺はう〜ん……と考え込む。
似ている……いやそれどころか同じだ。
クリーチャーと。
カシャカシャと様々な生物データーを頭の中から引っ張り出しながら、その不自然さに首を傾けた。
なんで俺のいた世界のクリーチャーと、異世界のモンスターが同じ生体構造をしているんだ??
異世界の化け物なら当然全くの未知の存在だと思っていたのだが……内部構造から遺伝子パターンまで俺の世界で人々を蹂躙し続けてきたクリーチャーにあまりにも似過ぎている。
「まるで同じ生物じゃないか……。
────でも、クリーチャーよりも遥かに弱い……。一体何故……??」
正直強さで言えば象と蟻?位の差がある。
偶然かとも思ったが、何だか嫌な予感がして俺は顔を顰めた、その時────……。
「大樹様。」
後ろからアルベルトがやってきて、俺の名を呼ぶ。
「ん〜?どうした?何か問題でも発生したのか?」
思考半分くらいでそう尋ねると、アルベルトは首を振った。
「いえ、特に問題は発生しておりません。
見張り番は私達騎士が交代で担当しますので、大樹様にお休みして頂きたく参りました。」
「────へ?いや、全然大丈夫大丈夫。皆ゆっくり休んでくれよ。」
なんといっても<超回復>がある俺は、基本ぶっ続けで戦っても問題なく戦えるくらいなので本当に大丈夫なのだが……どうやらアルベルトは引くつもりはないらしい。
キリッとした表情で立ったまま動かない。
まぁ、騎士のプライドもあるよな……。
「分かった。ありがとう。」
俺は素直にその申し出を受け入れる事にして、そのまま休憩場所まで戻ろうとしたのだが……突然アルベルトが「────あの!」と待ったをかけてきた為、ピタリと止まってアルベルトの方へ顔を向けた。
すると思った以上に真剣な眼差しを向けられていて……驚きながら、アルベルトの言葉を静かに待つ。
「大樹さんのいた世界は……平和な世界ではないのですか?」
真剣に尋ねてきた質問に、俺はあっさりと頷く。
「あぁ。モンスターの様な化け物が支配している世界だよ。
嘘が真か大昔に真っ赤な雨が降ってほとんどの生き物を化け物に変えちまったらしいが……それが本当かどうかは分からないんだ。」
その答えを聞いて、アルベルトは一瞬視線を下げたが、その後すぐに深々と頭を下げた。
「こちらの勝手な都合で召喚してしまい、誠に申し訳ありません。
更には無礼な発言や行動まで……本来は決して許される事ではない。
それにも関わらずこうして協力してくださって、お陰様で大事な仲間達を失わずここまでこれました。
多大なる感謝を申し上げます。」
「おいおい、辞めてくれよ。本当に大した事はしてないからさ。
騎士様達の実力は十分だから、あとは……上の問題かもな。」
パチンっとウィンクして戯けて見せると、頭を下げたままのアルベルトはそれにフッと軽く笑った様だが、まだ頭をあげようとぜずそのまま話し続ける。
「……それと主人の数々のご無礼をどうかお許しください。
勿論謝って許される事ではないと従順に承知の上で申し上げてます。
レオンハルト様はどうしても王になりたい……その想いに、もうずっと囚われて周りが見えなくなっているのです。」
最後は絞り出すかの様な声調に、俺はフッとこの国の情勢の事を考えた。
確かこの国の王は随分前から病に伏せていると書いてあったな……。
ふ〜む……とそんな事を思い出しながら、昨日読んだ資料の中からレオンハルトに関する情報を頭の中から引き出していった。
レオンハルトは第一王子だが正妃の子供ではない。
正妃に中々子供ができない中で、かなり末端の側妃が一番に身籠り、その彼女から産まれた子供がレオンハルト。
この国は基本長子が国を継ぐのが習わしであるため、第一王子の誕生は喜ばれるはずだったが、恐らく国の一部の重鎮達と正妃がそれを許さなかったのだろう。




