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聖女召喚!……って俺、男〜しかも兵士なんだけど……??  作者: バナナ男さん
本編

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15 言ったくせに

◇◇◇◇


『ば〜か。明日は大きな戦いだからって震えてんのかい?

相変わらずの弱虫だね〜大樹は!』



黒髪のベリーショート、目尻の方がツンッと吊り上がっている目は、イタズラをしようとしている猫の様。


そしてそんな外見を裏切らず、内面も結構な『イタズラ好き』なこの女性の名前は<杏花>。


クリーチャーと前線で戦う一個部隊の隊長で、俺が新人の頃からやたらお世話を焼いてくれていた上司であった。


杏花はニヤニヤと笑いながら、緊張に震える俺のおでこを軽く突いてきたので、それにムッ!とした俺は、突いてくる手を軽く振り払う。



『そりゃー緊張もするだろ?

何てったって集団化したクリーチャーの一斉討伐だ。今の人口の半分くらいの人間は……死ぬかもな。』



新たな土地の奪還作戦。


それには奪還予定の場所で集団化しているクリーチャーをまずは叩く必要があって、その部隊の総リーダーは杏花。


機を見て行われる土地の奪還作戦は、非常に危険なもので毎回沢山の者達が死ぬ。


まずは一定以下の功績しかない旧型人類を使った人間爆弾、その後は新型人類の一斉攻撃。

人類は順番に死んでいく選択肢しか持つことができない。



『……そうだろうね。でも仕方ない。順番だから。

人類が増えるには土地が必要だからね。今年も沢山の新型人類が誕生したから口減らしの意味もある。資源は有限だ。』


『……随分と酷い世界だな。』



二人で困った様に笑いながら、結構な長い時間無言でいた。


いつもの単体で襲ってくるクリーチャー相手ではなく、団体を相手にする場合は非常に死亡率が高く、特に指揮官の実力によっては部隊が全滅する事だって少なくはない。


そのためまだ下っ端の俺よりも隊長である杏花のプレッシャーは相当であるはず……。


一瞬チラッと杏花の方を見ると、その気遣う様な視線に気づいたらしい杏花はツンッ!と顔を逸らして平静を装う。



『楽勝楽勝!

力を持つ奴だけしか幸せになれない、こんなくそっタレな世界なんてとっととぶっ壊しちゃおう!

────あ、言っとくけど、大樹がピンチになっても助けないからね!せいぜい頑張って生き延びなさいよ。

お互い生き残って明日を生きよう。』



杏花は震える手を無理やり押さえて、俺の方へ手を差し出してきたので、俺も震えながらその手を強く握った。



俺はずっと彼女が好きだった。

こうして不安や恐怖をひたすら隠して頑張り続ける彼女が。



しかし、俺がその気持ちに気づいた時には、既に杏花には結婚を約束していた同期の男がいて、いつもその婚約者から貰った指輪を見て幸せそうに微笑む彼女を見れば……俺の出る幕は一ミリもないとイヤでも理解させられた。



この想いは一生心に秘めておこう。

悲しかったが『杏花が幸せなら嬉しい』そう思っていたのに……その婚約者の男は何度目かの土地奪還作戦の際にあっさり死んでしまい、杏花は一人になった。


その時も杏花は悲しみを決して外には出さずに一人で堪え、必死に平静を装い今も戦い続けている。


そして────……その日に出た戦いで彼女は死んだ。

動きが遅れた俺を庇って。



「……助けないって言ったくせにな。」



その日の事を思い出し、俺は無意識に首から掛けている歪んだ指輪を服の上から触る。



クリーチャーに腹を食い破られ致命傷を負ってしまった杏花は、俺の腕の中でそのまま死んでしまった。

最後に自分の愛おしい唯一の人を名を呼んで、幸せそうに笑いながら。


レオンハルトは外見は似てないし、しかも男なのに何故か彼女を思い出す。


何だかそれがヘンテコで面白くなってしまいプッと笑うと、レオンハルトは何故か目を僅かに見開き、俺をジッと見つめてきた。


そしてそのままひたすらジー……と見つめてくるので、俺が目の前で手を振ってやると、突然今まで見守っていたアルベルトが話しかけてきた。



「大樹様は、何故我々の為に戦ってくださるんですか?

その強さがあれば逃げる事も、我々に無理やり言う事を聞かせる事も可能でしょうに……。 」



本当に不思議そうにそう尋ねてくるアルベルトに、俺は困った様に頭を掻く。



「『力で蹂躙される悲惨さ』を知っているから〜。────な〜んちゃって!」



クサイことを言ってしまった恥ずかしさから、誤魔化す様にハハハッ〜!と笑って見せたが、若者二人の目はピクリとも動かず真剣そのもの。

何とも微妙な雰囲気になってしまった。



ソワソワ……ウロウロ……。


とりあえずその気まずさを誤魔化す為に体を動かして見たが、無言のままピッタリついてくるレオンハルトの視線がなんだか凄く恥ずかしい!



「……お、俺見張り行ってきま〜す♬ 」


その空気に耐えられなくなった俺は、慌ててその場からピュ〜と一目散に逃げだした。



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