第1章：侵略前夜
20**年、近未来の日本は、表面上は平和と繁栄の象徴のように見えた。東京の高層ビルが夜空に輝き、道路を行き交う自動車は静かで洗練されていた。しかし、その輝きの裏で、日本は見えない侵略の危機に瀕していた。
近隣国ネオヴァリアは、日本とは異なる道を歩んでいた。政治的に野心的で、地理的にも日本に近いこの国は、次第にその影響力を拡大していた。しかし、日本の政府と国民は、ネオヴァリアの動きに鈍感で、国際情勢に対して無関心であった。
日本の政治家たちは、私欲を満たすために外国人を優遇する政策を推し進め、ネオヴァリア人を含む外国人の不法移民さえも積極的に受け入れていた。特に、自衛隊基地の近くに外国人が土地を買うことに対して、何の規制も行われなかった。その結果、仮に軍事的侵略を受けた場合の反撃にも支障が出ることが懸念された。日本国内にネオヴァリア人の比率は増え続け、彼らの影響力も徐々に大きくなっていった。
この時、日本の国民たちは日常生活に追われ、政治的な変化に無関心であった。若者たちはファッションやエンターテイメントに熱中し、サラリーマンは仕事と家庭に忙殺されていた。政府の政策に対する批判的な意見はほとんど聞かれず、メディアもその流れを追うばかりであった。
しかし、日本の政治と社会の深層では、ネオヴァリアの影響が静かに広がっていた。日本の主要都市におけるネオヴァリア人コミュニティは、彼らの文化や言語、価値観を強く反映するようになり、日本人との間には微妙な距離感が生まれていた。
ネオヴァリアの人々は、日本の経済や文化に大きな影響を与え始め、政治的にも彼らの意見が重視されるようになっていた。日本の政治家たちは、ネオヴァリアとの関係を良好に保とうとして、しばしば彼らの要求に屈することが多くなった。このようにして、日本は名実ともにネオヴァリアの影に隠れる形でその独立性を失っていった。
一方、日本のマスコミは、政治の見張り期間としての役割を放棄していた。新聞、テレビ、インターネットのニュースでは、政治家の不倫スキャンダルやセレブリティのゴシップが大々的に取り上げられていたが、政策の本質部分の分析や批判的な報道はほとんど見られなかった。政府の移民政策や安全保障に関する重要な議論は、表面的なレベルを超えることはなく、深く掘り下げられることは滅多になかった。
この時期、マスコミはポリティカルコレクトネスの風潮に乗り、日本の安全保障を確保するための報道よりも、移民政策の推進を助長する方向に傾いていた。テレビ番組や新聞の特集では、日本に住む個々の外国人の感動的な人間ドラマがクローズアップされ、その多様性と共生の美徳が強調されていた。これらのストーリーは、視聴者に感動を与える一方で、移民政策の潜在的なリスクや日本の安全保障に関する重要な議論を遮断していた。
マスコミは、国民に対して政策の背後にある事実や可能性を伝え、公正な情報を提供する責任があった。しかし、彼らはこの重要な役割を疎かにし、感情的で表層的な報道に終始していた。政治家たちの私生活のスキャンダルやエンターテインメントの話題は、視聴率を稼ぐための手段として頻繁に用いられた。その結果、政治的な議論は浅く、一般国民は重要な国政の問題について十分に理解する機会を失っていた。
国の将来に関わる重要な政策が、マスコミによる十分な検証や批判を受けずに進められる状況は、日本の民主主義にとって大きなリスクとなっていた。マスコミの不甲斐なさは、日本が直面していた静かな侵略を見過ごす一因となり、国民の間での深刻な議論の欠如を生み出していた。この状況は、日本が自らの主権を守るための意識の醸成を妨げ、国民の目を現実から遠ざけていたのである。
20**年の春、日本は歴史的な変革を迎えた。外国人移民への参政権推進法が法律によって実現されたのだ。この決定は、日本社会に大きな波紋を広げた。国会議事堂の前では賛成派と反対派が交錯し、熱い議論が交わされた。賛成派は「多様性の時代」と訴え、反対派は「伝統と安全の危機」と主張した。
法律が施行されると、日本国内に住むネオヴァリア人たちは新たな力を得た。彼らは自らのコミュニティを結束させ、政治的な影響力を増大させていった。特に目立ったのが、カリスマ的な政治家アレクサンダー・ノヴァキであった。彼は日本国籍を取得しており、流暢な日本語と卓越した政治的才能で、多くの人々を惹きつけた。
アレクサンダーは、ネオヴァリア人コミュニティだけでなく、日本人の間にも広く支持者を増やしていった。彼の政治的なメッセージは、新しい時代の到来を象徴していた。そして、ついにわずか3年後の総選挙で、彼は驚くべき快挙を成し遂げる。日本史上初のネオヴァリア出身首相として選出されたのだ。
彼の就任は、日本の政治史に新たなページを刻んだ。就任式の日、アレクサンダーは堂々と演説を行い、日本とネオヴァリアの友好と協力を訴えた。しかし、彼の首相就任は、日本のアイデンティティと主権に関する深刻な問題を浮き彫りにした。多くの日本人は、自国の文化や政治が外国人によって支配されることへの不安と抵抗感を強めていた。
アレクサンダー・ノヴァキの時代は、日本に新たな風をもたらした。しかし同時に、国の根幹に関わる問題を突きつけ、日本人に自らのアイデンティティと未来について深く考える機会を与えたのであった。彼の政治的な軌跡は、日本の将来において重要な意味を持ち続けることとなる。
