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DNA①  作者: まこと
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夫婦喧嘩

「夏期講習に30万!?」と明の素っ頓狂な叫び声が上がる。

「毎月の授業料だって6万近いし、それに個別が1コマ8000円で月8コマだろ。えげつない金額だな。どこ目指してんだよ。」


それは私も思う。ここまで投資して、子どもに難しすぎる課題を頑張らせて、遊びの時間すらなく何やってるんだろう?これは本当に正しい事なのか?といつも考えてしまう。


雪絵ちゃんと舞は時々連絡を取るようになり、舞のやる気の源になっている。

舞も頑張り始めたので、春から個別を追加しているが成績はあまり変わらない。

流石に女子御三家は難しいので志望校は再検討中だ。


「夏の頑張りが秋以降の成績になってくるのよ。舞もやる気になっているし、塾の先生も成績はすぐに結果となる事はないって。我慢の時期なの。」

自分と夫に言い聞かせる呪文のようだと少し自嘲する。住宅ローンもあり我が家の夫婦2人分の月給では正直つらい。貯金なんてほぼできない状態だ。

夏の旅行なんて受験勉強の時間がとれなくなるし予算的にも論外。

ため息が出そうに夏のをグッと堪える。


「それよりも志望校をどうするかよ。流石に御三家は厳しいわ。現実的にどこがいいか学校見学にいろいろ行っているんだけど、なかなか決まらないの。」


加奈子は学校見学の印象・校長先生の話・校風・舞の反応などをまとめた資料を明に見せた。


「えー、てかここまでやってもマーチ付属すら無理なの?この受験意味あるの?マーチなら公立でよくね?俺もそうだよ。」


流石にこの一言に加奈子は何かが憑依する感覚を覚えた。

今までほぼノータッチで舞がやる気になったこのタイミングでその一言?なんだこいつ。無責任な赤の他人か?


「大学受験改革もあって今はマーチは狭き門よ!女子の付属の定員の少なさと受験志望者の多さはまさに激戦!女子のマーチはたかがマーチじゃない!男と一緒にするな!!

大体あなたの受験はもう古いのよ!子どもの人数は減っても主要大学の定員枠は減って受験生は増えているの。中高一貫生と公立高校の進学実績は圧倒的に違う。大体偏差値50だって小学生の優秀層が集った偏差値50よ!舞のことバカにしないで!!!」


加奈子は一気に泣きながら叫んだ。明が舞のことをバカにしたわけじゃない事はわかっている。悪気はない。ただ純粋に疑問に感じたことを口に出しただけだ。


「バカになんてしてないよ。舞が頑張っているのもわかる。ただ、高いなって思っただけだって。ごめんって。」

興奮気味の加奈子にヤバさを感じた明はすぐに謝る。「なんでここまで興奮するんだよ。疲れてるのか?マックでもいくか?」

なんでマックなんだ?どんだけ安い女よってツッコミを入れながら、現実的にはマックも勿体無い。


「1人にさせて。」

明に言い残して部屋に閉じ籠る。

ついに夏期講習。天王山。

期待のできない夫のことは諦め私が舞を支えようと決意した。

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