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DNA①  作者: まこと
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お祝い会

姑が用意したお祝い会。

夫の実家で姑自慢の料理が並ぶ。


「雪絵ちゃんさすがね〜!桜蔭合格もピアノをしながらだったでしょ?今度は現役で国医だなんでおばあちゃん鼻が高いわ!今度は舞ちゃんの番ね!血は繋がっているんだから、きっとまいちゃんも素晴らしい結果になるわ!」終始浮かれた様子の姑。

励ましているつまりなのだろうが、ちっともありがたくない。夫の鈍感さはきっと母親譲りだ。


本当は舞を連れてきたくなかった。

しかし、夫がバカ丁寧に舞の欠席を姑に知らせ、「舞ちゃんも今年受験でしょ!雪絵ちゃんに色々教えてもらわなきゃダメよ!」と謎の理論で出席となった。

当日突然の体調不良にして早めに帰る計画だったのに!このバカ!と心の中で口汚く罵る。

欠席を伝えた後の仮病なんてあからさますぎて使えない。


「舞ちゃんは今年中学受験?」

長男嫁の女医、綾子が口を開く。

ええ、そうですよ。おたくみたく優秀ではありませんけどねと心の中で悪態をつきながら

「そうなんです。まだ志望校も決まっていない状態なんです。舞に合う学校がなかなか見つからなくて…。」笑顔を作る。


「あれ?舞の志望校ってふたばだろ?」と酔っ払い明が勝手に暴露する。

姑の「まぁ素敵!」という高い声が勘に触る。

家に帰ったら覚えてなさいよ。何でここで披露するのよと沸々と怒りが沸いてきた。

舞が「私はそんなんじゃない。夢物語だよ。」とポツリとつぶやいた。


すると綾子が「舞ちゃんにあった学校と未来が見つかるといいね。雪絵はただ負けん気が強くて医学部に行ったみたいで不安なの。私は反対だったんだけどね」と優雅に舞に微笑む。

すかさず綾子の夫、和明が「雪絵はママに憧れたんだよ。素敵じゃないか。」と励ます。

綾子は「ただの週2で働くパート医よ。」と苦笑いで返す。

それを聞いていた夫は「兄貴んところは一家で優秀だよな。華麗なる一族ってやつだな。」とヘラヘラしている。


私はなんとも言えない気持ちになった。

週2のパートといっても、それだけで私のフルタイム月給を超えるだろうし、旦那も商社で働くエリートだ。明も有名企業ではあるが兄の給料には届かない。

何もかもが眩しい。眩しすぎて同じ親族なのだと思うと惨めになる。優しいが終始ヘラヘラしている明に対してイラつく。


「御三家は難しいから私の母校でもいいかなと思って…。」と思わずつぶやいた。私だってお嬢様大学なのよ。国立でも医学部でもマーチでもないけど、いまだにブランド力は健在よ。


姑が「加奈子さんはカトレア卒だものね!そこも素敵ね!お嬢様学校ね。」の声にややプライドが回復した。

すると綾子の夫和明が「綾子もそこの学校だよ!小学校から高校まで行ってたんだよな!」と満面の笑みで返す。

綾子が慌てたように「お願いだから黙って頂戴。」と顔を引き攣らせた。

加奈子は絶句して目を見開く。まさかの小学校からの純正培養。

カトレア高校は有名なお嬢様大学附属ではあるが、ほぼ外部の難関大学に進学する。その学校に大学からいった私のプライドは一気に恥ずかしく惨めなものになる。

田舎から上京した女がお嬢様大学よって誇っていただけだなんだ。

もうどんな顔をすればいいのよ。


加奈子たちの結婚が後だったため知らなかった。元々明とお兄さんはそこまで交流がある方ではない。年に1回顔を合わせるか合わせないかだ。いや、明は知っていたのだろうか?皆もしかして優しさで黙っていた?

私が聞き逃していたの?恥ずかしくていたたまれない。


それまで黙っていた舞が「皆すごいよ!私にはみんなの言う学校は無理。バカなんで〜。」とおどけたように笑った。その笑顔が痛々しいくて申し訳ない気持ちになる。優しい子。本当にごめんと俯いた。


すると雪絵ちゃんが「大丈夫よ。今から本気でやれば届くよ。これ以上できないってくらい頑張ってみよう。手伝うよ。」と舞の目を見つめながら手を握った。

「なんの教科が苦手?教材持ってきてる?」と言いながらさりげなく舞のカバンを持って別室に連れて行った。

彼女も受験生だったのだ。この場所が舞にとって辛い場所だと悟ったのだろう。

なんて優しいいい子なのだろう。


その後は大人だけでお互いにものすごく気を遣いながら会は終了した。

舞は「雪絵ちゃんの授業とてもわかりやすかった!雪絵ちゃんも偏差値がずっと届かなかったけど、すきま時間も使って必死でやったんだって。私、頑張るね。」としっかりとした目つき私に言った。


その様子を見て明が「なぁ、連れてきて良かっただろう〜。」と呑気にいったので無視した。

結果論じゃない。私はかなり痛い目を見たわよと腹立たしく思う。


まぁ、でもそうね。やる気になってくれてよかった。

あとで雪絵ちゃんにお礼をしよう。せっかくのお祝い会だったのに申し訳なかったな。

加奈子は微妙な気持ちになりながらも、舞の表情に明るい未来を夢見て弾む気持ちで帰途に着いた。

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