ラクシャ公爵のウチの朝食事情(過去編)
よろしくお願いいたします。
幼い妻が、ガチャガチャと台所で何かやっている。
君はキュウリに愛され、愛する素晴らしいレディだ。
「いける」
妻が自信満々に玉ねぎを切ろうと包丁を持ち、上から振り下ろすのを扉の隙間から見ながら、
(先生の振り下ろす時の型に似ている…。親子だなぁ)
とも思い、
(危ないよ、リア)
心配でハラハラしてしまう。
助けてあげたい。
食べたいものを作ってあげたい。
だって公爵だからね。
「玉ねぎの薄皮…皮っ何処まで皮?」
…………マジか。妻よ、君はどこまでが実だと思っているんだい?
君の発言に驚きだよ。
「旦那さま」
後ろから声をかけてくるセバスチャン。
「奥さま、また無駄なことを始めましあね。何を作る気なんでしょうね?」
「セバスチャン、私は机に並べられたイチゴジャムとフレークの活躍が心配だよ」
ヒソヒソと会話を交わす。
「生クリームもありますよ?」
「彼女は独創性に飛んだ、豊かな感性の持ち主だからね。平凡にシチューにして欲しい…」
火が通っていれば食べられると、妻に慈悲をと願わずにはいられない。
この間、水にさらしてない玉ねぎを鰹節をかけたものを朝食に出された時は泣き出しそうだった。
そして、朝食のおかずはそれだけだった。
アレはお腹が空いた。
最近はキュウリを山盛りに皿に乗っけてくれて、味変のバリエーションがイチゴジャム、ピーナッツバター、マーマレードジャムと変化に富んだ素敵な朝食だけど。
あぁ、心配だ。
あのキュウリを超える美味しいものになるといいのだが。