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22.新たな一歩

遅れましたm(__)m



「──お久しぶりです。お父さん、お母さん」


「っ、咲空……!」

「──!」


部屋に入ってくる(人物)のために身体をこちらに向けていたけど、座卓に向かい合って座り、話をしていたらしい両親。

お母さんは目に涙を浮かべて立ち上がり、同じく目元を潤ませているお父さんは瞬きすることなく私を見ている。


……本当に、2人のこんな顔は初めて見る。

その様子は子を心配し、再会を喜ぶ親そのもの。

……複雑な気持ちになってしまうけど、これが黒邪に侵されていない本来の両親の姿なのだと思う。


「……お父さんとお母さんが目を覚ましたって聴いたから、様子の確認をと思って……」


「そう……ありがとう」


「うん……」


「……咲空、お母さんね、あなたと話したいことがたくさんあるの」


「……」


「その……今、時間があるのなら、少し話をしない?」


不安そうに、やっぱり見たことがない態度で私の様子を窺い、私の意見を求めるお母さん。

……大丈夫、向き合える。


「うん。……私も話したいことがたくさんあるの」


「! ありがとう」


上手く笑えているのかわからない。

困ったように眉が下がった笑みになってしまっているかもしれないけど、お母さんはそれでも嬉しそうに溜まっていた涙を落とした。







* * *






「咲空、あなた今どうしているの?」


「……普通に学校に通って、前と変わらない生活をしてる」


「そう、なの……」


「うん」


「それは良かったが、家はどうしているんだ? ……咲空が帰ってこなくなってもう1年になる。普通なら父さん達がお前を探してやらなきゃならなかったのに……本当に、どうかしていた……」


項垂れたお父さんにつられて、私の隣に座っているお母さんも悲しそうに俯いてしまう。


……こういう時に、気の利いた言葉をかけてあげられれば良いんだろうけど、2人を慰める言葉が見つからない。

私たち家族の問題には妖、それも妖の王と呼ばれる存在に起因しているし、朋夜というもう一人の人外の存在がいた。それに私自身、過去の出来事を消化しきれていないんだと思う。


お父さんとお母さんが望んで私に対してあんな振る舞いをしていたわけではないとわかっていても、それを簡単に受け入れることは出来ないし、『大丈夫』ということも出来ない。


……本当に辛くて、でも、最終的には辛いとさえ感じられないようになっていた。

すべてを諦めて、受け入れがたい現実を自分が悪いのだと受容して……いつまでも続くと思われた救いのない世界に限界を感じて、私を必要としない世界から自分を追い出そうとした。


“──麗叶さんが地上に訪れていなかったら、私が麗叶さんの半身じゃなかったら、私の人生はあそこで終わっていた──”


どうしても、そう考えてしまう。

……きっと、あの出来事を消化するのには長い時間が必要になる。



「……今は助けてくれた人にお世話になってる」


「よかった……助けてくれた方がいたのね」


「今日はその方は来ていないのか?」


「……うん」


「そうか……近いうちに、ご挨拶したいから先方の都合のいい日時を確認してくれないか? さしあたって、俺たちが心から感謝していたと伝えてほしい」


「わかった」


本当は来ているし、今もすぐ近くで私を勇気づけてくれている。

……このこともいつか正直に話せたらいいな。

いま言ってもいいかもしれないけど絶対に混乱させてしまうし、私が両親を心から信じて何もかも話せるようになるのには、もう少し時間がかかりそう。


「……顔の火傷も綺麗に治ったのね」


「そう。助けてくれた人が治療とかも全部してくれて……」


「本当に、良かったわ。……朋夜様の神術での火傷だったうえに時間が経ってしまっていたのに、こんなに綺麗に治るなんて……感謝してもしきれないわ」


「あぁ。……さっき母さんと話していたんだ。『咲空の火傷を何とか治せないか』って。……申し訳ないことに父さんは咲空の顔をちゃんと見ていなかったから今どんな状態なのかわかっていなかったけど、あの場面(・・・・)は見ていた」


「お母さんも見てた。……見ているだけだった。許されるなんて思っていないけど、本当にごめんなさい」


「……それを思い返すと、今から治療しても綺麗に治すのは難しいんじゃないかって思っていたんだ。……本当に良かった」


「……」


「これからは朋夜様や美緒に対しても人として、親として正しい対応をできるようにする。美緒は雲上眩界に行っているらしいが、帰ってきたら母さんと考えたことを美緒にも話すつもりだ」


「えぇ。約束するわ」


「……」


「っ、信じられないかもしれないけど……」


「……うぅん。ありがとう」


お父さんとお母さんには美緒は雲上眩界に行っていると伝えてあるんだ。……話せないことも多いし、それが一番筋の通った話になるんだと思う。

……朋夜は今後十年、雲上眩界の孤島で隔離生活を送ることになるから、朋夜が関わることになるのはだいぶ先だし、美緒も本当の美緒(・・・・・)になるから、その2人の言動にお父さんとお母さんの対応が求められるということはないと思う。


でも、いつだって美緒や朋夜を優先していた両親の変化が──覚悟のようなものが見えたような気がする。

……私が今後の人生で積極的に両親に関わるのかは私自身まだわからないけど、もう一度、信じてみようかな?


“家族”というものを。



「……私たちは今日一日ここで様子を見て明日には家に帰る予定なの。……咲空、あなたはどうする?」


「……?」


「よかったら父さんたちと一緒に帰らないか?」


「っ、一緒に……?」


「あっ、嫌だったらいいの。1年も離れていたし、そうでなくても私たちが急にこんなことを言ったら戸惑うわよね」


言葉を詰まらせた私に慌てて『無理はしないで』と言葉を重ねる2人。


「……ごめんなさい」


「そう……わかったわ」


「っ、お父さんとお母さんが嫌なわけじゃないの!」


変わった家族と暮らしてみたいとは思う。

でもそれ以上に──


「今の生活が気に入っているの」


今の麗叶さんとの生活を続けていたい。



「──……私にこんなことを聞く資格なんてないかもしれないけど、咲空は今、幸せ?」


「……とても。お父さんとお母さんとこうして話せたし、友達もできた。……大切な人も」


「そう……そうなのね」


「うん」


「よかった……私たちが狂わせてしまったあなたの人生が明るいものになって」


「あぁ。父さんたちに出来ることがあったら何でも言ってくれ」


「でも、たまには帰ってきてね? ……いつでも待ってるから」


「うん。……ありがとう」


お父さんの目にもお母さんの目にも涙が浮かんでいる。

……きっと、私の目にも。


……話ができて本当に良かった……──

















読んでくださりありがとうございますm(__)m

話の流れにはあまり関係しませんが、3章18話を改稿いたしました。

颯斗が両親に対して“祓い師”として立ち会うことになっていたので……

当時の私に“祓い師”って怪しすぎるだろと言いたいorz

“陰陽師”が秘された存在なのに何を考えて“祓い師”にしたんだか……

そんなこんなで、今後のストーリーで颯斗は咲空の副担任である“教員”として両親に向き合います!(とりあえずは)

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