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19.明日へ

本日2話目の投稿になります!

前話を読まれていない方はぜひそちらからお読みくださいm(__)m



『咲空、これでいいんだよ』


……お兄ちゃんはかつての繋がりを取り戻すことを諦めてしまったんだと思う。


お兄ちゃんだって、本当は昔のように家族と笑いたいはずだ。……昔のように。

優しい両親を知り、暖かい家族のぬくもりを知るお兄ちゃんは私以上にその気持ちが強いはずなのに、普通の人なら発狂してしまうような経験をしてきたお兄ちゃんはそれを諦めてしまった。

私がお兄ちゃん─自分を覚えていたということで満足しようとしてしまっている。



何とかできないのかな……──




そこで、『もしかしたら』という考えが浮かんだ。


……私が、麗叶さんと契りの儀式をしたらどうだろう?


麗叶さんの口振りからすると、麗叶さんは呪いを解くこと自体はできるけど、神族としての制約がそれを許さないという感じだと思う。

つまり、私なら……契って神族と近しい存在になったとしても神族よりも受ける制約が少ないだろう私なら、どうだろう?


人間が、己の半身である神族と行う儀式。

それにより、人間は人間としての理から外れ、神族と近しい存在になるという。

……そして、半身の司るものに応じた神術を使えるようになる。


契りの儀式についての話を聴いたとき、麗叶さんは『我の半身であるそなたは並の神族と同等の術を使えるようになるはずだ』と言っていた。

龍神族の悠さんの半身である琴さんは、私が麗叶さんと契って与えられる力が天代宮特有の癒しの力だけなのか、麗叶さんが行使できる全て……つまりは他の神族の神術も含めた全ての力なのかはわからないと言っていたけど、癒しの力だけでも記憶の修復はできるのではないだろうか?


“癒し”が身体的なものだけなのか、精神的なものも含まれるのかは聞いてみないとだけど、麗叶さんの話や以前読んだ天代宮が残してきた記録から察するに、その癒しの力は“傷ついたり欠損したりしたものを元の状態に戻す”という感じのものだと思う。


ならば……欠損した記憶を“癒す”ことで両親やお兄ちゃんのかつての知り合いがお兄ちゃんのことを思い出すという可能性は十分にある。


「──ら」


麗叶さんほど強力な神術を使えないとは言っても、麗叶さんの力が強力なだけに私が使えるようになる力も癒しの力だけであったとしても強力なものであるはずだ。



「──咲空、どうかしたのか?」



一人の世界に意識を飛ばしてしまっていた私の耳に麗叶さんの声が届く。


「あっ、ごめんなさい。なんでもないです」


「ならよいが……」


「咲空、俺が長い話に付き合わせたから疲れただろう?」


「ううん、全然疲れてないよ。昨日はたくさん寝たから」


……もう少し、考えてみよう。

今考えたのは、私の『もしかしたら』という思い付きに過ぎない。

多くを諦めてしまっているお兄ちゃんをぬか喜びさせてさらなる絶望を与えないためにも。


まずはその理から外れた人間が神族の制約を受けるのかどうかの確認をしないと……もし私も制約を受けてしまうなら、癒しの力が使えたとことでお兄ちゃんの役に立つことは出来ないから。


後で麗叶さんに聞いて──いや、まずは自分で調べてみよう。

そんなことはないと思うけど、万が一麗叶さんにお兄ちゃんのためだけに契りの儀式をすると思われてしまうのは嫌だから。

もちろん、お兄ちゃんを助けたいという気持ちもあるし、麗叶さんに確認するのが一番早いとは思うんだけど……



「さて、颯斗も忙しいだろうしそろそろ帰るか」


そっか、今日は私が麗叶さんに頼んで急に来てしまったし、陰陽師であるお兄ちゃんは昨日の今日でかなり忙しいはずだ。今日はそのために教師としての仕事を休んでいるんだし。


「お兄ちゃん、今日は突然来ちゃってごめんね……でも、話せてよかった」


「……俺もだよ。来てくれてありがとう」


「ふふっ、月曜日には学校に来られるの?」


今週は濃密な一週間だったから曜日感覚がおかしくなってしまったけど、今日は金曜日だから私もお兄ちゃんも本当なら学校に行かなくちゃいけない。


「もちろん。明日も出勤してできなかった仕事をしてくるつもり。……もう2日も休んでしまったし、これ以上休むと生徒たちにも先生方にも迷惑になってしまうからね」


迷惑はすでにかけてしまっているんだけどねと苦笑するお兄ちゃんは賀茂先生(・・・・)の顔をしている。

……お兄ちゃんはすごいな。

陰陽師と高校教員という大変な仕事を兼業し、どちらの仕事でも周りの人達から信頼される存在になっている。



──かつて居場所を失った少年は、自分の力でその居場所を見つけたんだ。



……その居場所を見つけるまでにどれ程の苦労があっただろう?

そんなことを考えて、また涙が零れ落ちそうになってしまったのを誤魔化すように言葉を発する。


「昨日、みんな心配してたよ」


「なんだか申し訳ないな……月曜日は元気なところを見せないとね」


「うん!……学校で『お兄ちゃん』って言わないように注意しないとな」


「ははっ、そうだな。俺も気を付けないと」


「お兄ちゃんは大丈夫でしょう?」


「そうだといいな」


兄妹としての会話をする私たちと、それを微笑ましそうに見ている麗叶さん。

この幸せな光景から憂いが払拭されるように、お兄ちゃんの中にある陰が完全に消え去るように、自分の出来ることをしたい。


またね(・・・)、お兄ちゃん」


「!……あぁ。ありがとう、咲空」


私たちは先生と生徒。

でも、そこに新たな関係が加わった。──家族として、兄妹としての関係が。


先生と生徒ではできない別れの挨拶。

でも、また会おう、必ず再会しようという意味が込められた素敵な言葉。

これからはいつでも会えるけど、その当たり前を噛み締めたい。













書いていて気が付いたのですが、麗叶さんがしれっと合流してしまっていましたね( ̄▽ ̄;)

お兄ちゃんの回想に入るときに席を外していたはずなのに……


話の途中で気配を消して合流し、咲空にとっては傍にいるのが当然だから自然と受け入れ、お兄ちゃんは少し驚きつつも「さすがは天代宮」という感じで受け入れたと思っていただければ……orz

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