30.三章エピローグ
エピローグっぽくはありません(ぽくないどころか綺麗には終われていません)が、一応3章の最後になりますm(。_。)m
(颯斗視点)
「はぁ……」
当初の作戦とは違う形となってしっまたが、脅威を打ち払うことができた。
想定外の存在の登場により、思っていたよりもあっけなく終わってしまった今回の作戦。
──やっと、やっと終わったんだ……
神が降臨されるというのは本当に予想外だった。
しかし、神がどのような考えで黒邪を祓うのではなく封印するようにという指示を出したのかはわからない。きっと、只人にはわからない何かがあるのだろうが……
天代宮様に聞けば教えてもらえるだろうか?
3人が消えていったあたりをぼうっと眺める。
……咲空は行ってしまった。
俺の存在にも気が付いていたみたいだし、次に会った時にはいよいよ色々と説明しなければならないだろう。
……さて、どう説明するか……今まで秘密にしていたことも隠す理由がなくなったが……
そんなことを考えていると、後ろから静かな足音が近づいてきた。……誰なのかは分かっているから振り返らない。
「……颯斗、お前も皆と先に帰っていなさい」
「……」
「お前の気持ちは分かるが、儂らに出来ることは終わったのだ。ここで待っていても仕方がなかろうて」
「師匠……」
もう少しここにいたいと言おうと思い振り返ると、師匠は俺が抱えている少女に視線を移した。
「その娘も休ませる必要があろう?」
「そう、ですね……」
師匠は俺に陰陽道の何たるかを教えてくれた人で、十年以上の付き合いになる。
そんな師匠は当然、俺を動かすためにどうすればよいのかも熟知している。
咲空の妹である美緒の意識はいまだに戻っていない。
……当たり前か。生まれてからずっと憑りついていたものが突然消え去ったのだから。
神から支えるように言われて慌てて手を伸ばしたが、倒れる前のほんの一瞬だけ少女と目が合った。俺のことなど知るはずがないのに、その瞳からは安堵のようなものが感じられた。
……黒邪に支配されている長い年月、何を思ってきたのか察するに余りある。
「帰るか……」
師匠が言うように黒板との戦いで俺たちに出来ることは終わってしまった。
それでもすべきことは、出来ることはまだ残っている。
* * *
今回結界を張っていたのは俺の家……陰陽師の隠れ里からほど近い山中にある。
俺はその隠れ里の奥地にある師匠の家に居候させてもらっている身だが、師匠の家は武家屋敷のような外観で道場も兼ねているためかなり広い。初めて見た時にはその広さに驚いたものだ。
そう昔のことを思い出しながら屋敷の門に近づいて行くと、3人の人影が見えた。……兄ちゃん達……兄弟子と姉弟子が俺のことを外で待っていてくれたみたいだな。
「あっ、颯斗!」
「お帰り。……どうだった?」
「ただいま。……上手くいったよ。詳しいことは師匠や先輩に聞いて」
大体のことは先に帰った先輩達から聞いているだろうから、俺の事情を知っている兄弟弟子として俺の口から聞きたかったのだと思う。だけど、申し訳ないことに今の俺にはその余裕がない。
「そっか。上手くいったのなら良かった」
「本当にお疲れ様。それで……その子が?」
「あぁ。黒邪から解放された反動で気を失ってしまったんだけど、部屋の準備は?」
「もちろん。報告を受けてすぐに用意したわ。それと、その……」
姉弟子が言葉を詰まらせたからどうしたのかと思うと、兄弟子が引き継ぐようにして口を開いた。
「颯斗、少し前に天代宮様の式神だという方がご両親を連れていらした」
「……両親?」
……そうか。
この子だけじゃなくて、両親も十年以上の時を黒邪と一緒に暮らしていたんだ、影響を受けているのも当然か。
「……わかった」
「颯斗……」
「ごめん姉ちゃん。ちょっと疲れたから今日はもう休むよ」
「……そうね。ゆっくり休んで」
この子を客室に寝かせたら早く休もう。
……いや、疲れたなんていうのは言い訳だ。俺達人間は結界の陣を展開しただけで、その維持のほとんどは鬼神族が担っていた。もちろん疲労感はあるが、まだ昼にもならないこの時間に自室で横になる程ではない。……ただ、逃げているだけだ。
姉達に申し訳ないと考えながらも障子が開け放たれていた客室へ入り、整えられた布団に未だ意識の戻らない少女を寝かせる。
……廊下の障子は閉じられていたが、襖で仕切られた隣の客室にはこの少女の両親がいるのだろう。
……この子の意識はいつ戻るのか……数日の間は目を覚まさないかもしれない。
そっと部屋を出て自室に向かう。
することなんてないというのに……霊符の補充でもするか……
* * *
部屋で霊符を作り始めて2時間程経ち、昼食時かという時、部屋に強い気配が現れたのを感じた。
「……天代宮様」
「邪魔するぞ。疲れているところすまないな」
「いえ……することがなく困っていたところです」
「そうか」
天代宮様は俺が今後のことを考えあぐねていたことを承知していた様子だ。
「月読様の降臨は想定外であったが、万事上手くいった。黒邪については我ら神族に任せよ」
「ありがとうございます。……月読様はなぜ黒邪を祓うのではなく封じるように仰ったのですか?」
「……いずれ話そう。して、妹の様子は?」
神─月読様のお考えについて今は知るべきではないということか……天代宮様が『いずれ』と言うならば、その時を待つしかない。
「いつ目を覚ますかはわかりませんが、体調は安定しています。……咲空は?」
「今は大事をとって部屋で休ませているが、問題はなさそうだ。明日も問題なく学校に行けると言っておった。そうしていた方が気が紛れるということなのかもしれないが……」
一先ずは安心したが、あんなことがあったのだから心配だ。身体にけがを負っている様子はなかったとはいえ、黒邪からあんな感情を向けられていたのだから、精神面への影響が全くないということはないだろう。
「そうだ、お前には色々と聞きたいことがある様子だったぞ」
俺の顔色が曇ったのを見た天代宮様が気を遣ってか、少し悪戯っぽい調子で付け加えた。
教員であるはずの俺があそこにいたのだから、気にならないはずがない。
「そうでしょうね……」
「近い内に咲空の方からお前に訊ねに行くだろう。……それまでに覚悟を決めておけ」
「……」
「過去に囚われて、後ろばかりを見るな」
天代宮様の言葉が静かに響く。
「前を向け。邪なる存在によって分かたれていた道は今、再び交わったのだ」
……天代宮様の言う通りだ。俺もいい加減に前に進まなければ……──
朋夜君へのざまぁ(?)は4章に持ち越し(4章のプロローグの次のかな?)ということになってしまいましたm(。_。)m




