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18.誕生日③


「おかえり」


「はい、ただいま戻りました」


麗叶さんと並んで空を跨ぎ、学校から天代宮邸の一室へと一瞬で移動する時に交わされる言葉。

……天代宮邸(ここ)から学校に通うようになってから、毎日されるようになったやり取り。


最初の頃は、ただでさえ言われなれなかった『おかえり』という言葉を麗叶さんのような方が言ってくれるということが畏れ多くて、どんな返事をしていいのかわからなくなってしまっていた。あの頃は毎日のようにしどろもどろになってしまっていたけど、今では心が落ち着く言葉になっている。



「悩みは解決したか?」


「はい。みんな、私を驚かせようとサプライズを用意してくれてたみたいです」


「そうか……そなたの顔が晴れやかなものになってよかった」


優しい笑顔の麗叶さんにそう言われて、自分の顔を触ってしまう。

……そんなに表情に出てしまっていたかな……? 麗叶さんには表情に 出ていなくても私の感情がある程度伝わってしまうとは思うけど……


「今日は課題などしなければならないことはあるか?」


「今日解いた過去問で間違えてしまったところを確認するくらいです。それも数学だけなのですぐに終わります」


「ならば、今日はいつもより少し早く……十八時頃に夕餉としたいのだが、大丈夫か?」


「大丈夫だと思います」


あと1時間くらい……うん、間違えた問題の半分は授業時間内に確認できているから大丈夫だと思う。


「では、楽しみにしていてくれ」


「はい」






* * *





──よし。間違えた問題の確認は終わったし、やり直しもしたけど、大丈夫そう。次に似た問題が出てきたときには間違えないようにしないと。


時間的にもちょうどいいみたい。もうすぐ桃さんが呼びにきてくれると思う。


そんなことを思っていたら、ちょうど桃さんの声が聞こえた。



「──失礼致します。お夕食の準備が整いましたが、お勉強の方はいかがですか?」


「さっき終わりました。呼びにきてくださってありがとうございます」


「いえ、お疲れ様でございました。……それでは参りましょう」


「はい」









「──今日はみんながお祝いをしてくれて嬉しかったです。こんな風にお祝いしてもらったのは初めてでしたし、友達と同じものを食べるというのもあまり経験がなかったので」


「姫様が楽しい1日を過ごされたようで私も嬉しゅうございます。姫様の花が綻ぶような笑顔を見て、私も幸せな気持ちになりました」


桃さんとお座敷に移動しながら、今日学校であったことを話す。

桃さんと葵さんは一緒に学校に行っているから、何があったかは知っているけど、その事に対して私が“何を思ったのか”を気にしてくれているみたい。


桃さんはとても聞き上手で、天代宮邸(ここ)での生活に慣れていなかった頃から、ずっと私を支えてくれている。

それは葵さんも同じで、精力的に私を支えてくれる2人がいなかったら私は心を開くこと出来ないままだったと思う。麗叶さんはお忙しいからずっと一緒にいることは出来ないし、出会った頃は畏れ多いという気持ちが強かったから、半身であることを感じ取れなかった私が心を開くのは難しかっただろうし……


今では2人は私にとってお姉ちゃんみたいな存在。麗叶さんには相談できないことも桃さんと葵さんになら素直に相談できる気がするし、悩み事を溜め込んでしまう私の心の壁をいとも簡単に壊してくれる。優しく、心をほぐしながら。……これは麗叶さんもかな。


こんなことを言ったら困らせてしまうかもしれないけど、いつか“お姉ちゃん”って呼んでみたい。



「──私は今日のことを一生忘れないと思います」


「ふふっ、素敵な一日になったようで幸いですが、今日(・・)はまだ終わっておりませんよ? この後も楽しんでくださいませ」


桃さんはそう言いながら、ちょうど到着したお座敷の障子を開けてくれた。


「わぁ……!」


いつも使っているし、今朝も朝食を食べた部屋だけど、障子の向こう側の様子は普段から一変していた。

輪飾りや風船で飾りつけがされていて、いつもはお膳に食事が用意されるけど、今日はローテーブルに色々な料理が並べられていた。


小さな頃から諦めていた、それでもずっと心の奥底で望んでいた光景に、子どものようにテンションが上がってしまう。



「──どうだ?」


「すごいです……! お誕生日会の会場みたい」


障子の陰から現れた麗叶さんは傍目にもわかりやすく目を輝かせているであろう私に、どこか得意そうな顔を向ける。

障子の陰にいたのは、私に部屋の様子が見やすいように避けてくれていたのかな?


「そなたの生誕の祝いだ。厳かに執り行うのもよいが、このような趣の会の方が良いと思ってな。……和室には合わぬかもしれぬが、これもまた面白かろう?」


「ふふっ、楽しい雰囲気で知らない部屋みたいです。……こんなに準備をしてくださってありがとうございます。とても嬉しいです」


確かに和室に輪飾りや風船、キラキラした飾りがたくさんあるのは不思議な感じがするけど、どこかホッコリもする。……あっ、輪飾りは和柄の紙で作られているみたい。


「ならばよかった。……さぁ、こちらへ」

















読んでくださりありがとうございます(*^^*)


↓ちょっとした補足です。


【補足】

桃と葵は二人とも咲空のお世話係兼護衛ですが、桃の方が咲空と一緒にいる時間は長く、咲空専属な感じです。葵も咲空付きですが、事務的な役割(学校関係のこととか)も担っており、麗叶に咲空に関することの報告を行う連絡役も務めています。もちろん、咲空ファーストの精神を持っているため、咲空が知られたがらないこと、友人との約束のようなプライバシーを侵害するようなことは報告せず、その日咲空がどんな様子だったかなど簡単に報告する感じです。


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